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1.双子

 中山家に家族が増えた。赤ちゃんが生まれたのだ。それも二人。双子の女の子だった。


 姉を英美、妹と英里と名付けることにした両親。


 初めての子供なのに双子ということで二人だったこともあり、中山家の両親は大変子育てに苦労した。


 だがそれが子供をより可愛がるための接触が多いことになる。


 世話をする度に愛おしさが増してくるのだ。


 そうして愛されて育った双子の姉妹。


 一年ほど経って立ち上がることが出来る様になった頃、双子が綺麗に左右対称の、鏡のように行動していることを見つける。


 並んで歩くときはそれぞれの間の、内側、外側、と歩みが揃っていたり。


 くるくると回転すれば、時計回りと反時計回り、と言った具合に。


 それは鏡を理解するぐらいの年頃になっても双子自身が鏡を使わず、双子の姉妹を見ることで髪に寝癖が付いていることに気付いたりしていることからも明らかだった。寝癖も左右対称に付いていたのだ。


 そのことを重要視してはいなかった。双子の一方が右利きで、他方が左利きだということに。


 もともと両親の家族にも左利きの人物がいたために左利きにも寛容な家庭だったのだ。



 しかし成長するにつれ、片方が失敗することがあるという程度の認識から、明らかに妹の方が鈍臭い動きをしているように傍目には映った。


 学校に行く歳になると文字を読み書きし、左右の非対称の状況が多く現れる。


 ドア、はさみ、財布や筆箱でさえも。そんな他愛のないものですら右利きを基本として作られている。


 本来同じ能力であれば、その極僅かな違いでさえも、狂いが生じるものとなる。


 比べるべき存在がいるために、遺伝的にはほぼ同じ存在という一卵性双生児だからこそ、その違いが目立つようになっていく。


 最初は気付かないほど小さな躓き。一つ一つは小さくとも、それが明瞭になるほど積み重なっていく。


 周囲の認識がそのようになると、当の本人たちも出来る姉と、不出来な妹、というように役割を与えられてしまう。



 姉は妹を助けようと頑張る。二人は元々一人だから、と補おうとした。


 妹は出来る姉を尊敬し、自身の不出来を諦観した。双子でも姉妹でも、もう別々の人間なのだから、と。



 これが普通の学年が違う姉妹であったなら、問題も小さかったかもしれない。


 利き手が同じ双子であったなら、比べられることもなかっただろう。



 だが、利き手の違う双子だった。


 昔のように矯正によって双子がそれぞれ利き手の逆の手を鍛えていたら変わっただろうか。





明日次回2.姉の英美

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