人柱
昔々、ある村のこと・・・
一人の旅の稲荷が、その村の近くを通りかかった。
「おや。
この村は、不作や日照り・・・
疫病が続いておるか・・・
どれ?」
稲荷は、原因を調べてみる。
「くくく!
これは、したり!
それを改善しようとしての「人柱」が、土地神の怒りを買って、祟りを受けたか!
おろかなものよ!」
稲荷は、土地神を訪ねた。
「どうであろう?
民を許してやっては?」
「ふん!
ここの者どもは、ワシがいくら恵んでやっても、生贄だの人柱だのをやめん!」
「負の連鎖だのう・・・」
見かねた稲荷は、村に直接足を運んだ。
「おお・・・
よくぞ来られた!」
村長が、稲荷を迎えた。
「突然で悪いが・・・
この村は・・・
生贄や人柱をやめるべきだ。」
「な・・・
何を申されます!?」
「ここに来るまでに、土地神に会った。
怒り狂っておったぞ・・・
これだけ、そなたらに尽くしておっているのに、悪習をやめぬとな。」
稲荷は、説明する。
「そもそも、そういう儀式は・・・
それ専門の巫女がなるか、さもなくば、対象の人間の「怨念」や「生きるための力」を捻じ曲げ・・・
「正しい目的」に向けるもの。
やがて、手抜きになり・・・
「人柱にされた怨念」が、吹き出し・・・
村に向くのも当然よ。
土地神も、あきれ返り・・・
怒り狂う。
わからぬどおりでは、あるまい?」
「し・・・
しかし・・・」
はあ・・・
と、稲荷はため息をついた。
「土地神に義理はないが・・・
忠告はしたぞ。」
言うと、稲荷はまた旅に出た。
「さて・・・
今度は、京まで行ってみるか。」
彼の名は、「秋」。
やがて、とある村を救い、未来には一大地方都市となる、稲荷神の一族の祖となる男である。
秋は、風のうわさで聞いた。
旅の途中で立ち寄った村は・・・
生贄や人柱の風習で廃れ・・・
事態を重く見た朝廷の軍によって、根絶やしにされたという・・・