第99話 赤字
「あ、ここでいいよ」
高木さんはとあるアパートの前で俺にそう言った。
俺が車を止めると、
「送ってくれてありがとうね。じゃあねゴジラくん」
そそくさとアパートに小走りで向かっていく。
高木さんは一度だけ振り向き俺に小さく手を振るとアパートの一室に入っていった。
俺は部屋の明かりがついたのを確認するとアパートの駐車場を使いUターンをする。
……別に期待していたわけじゃない。
期待していたわけじゃないが「ちょっと寄ってく?」と言われたらどうしようとか考えていたのがバカらしい。
「ふぅっ……帰るか」
俺は夜道をいつも以上に安全運転で帰っていった。
◇ ◇ ◇
家に着くとポチが玄関で出迎えてくれた。
「ただいま、ポチ」
ポチの頭にぽんと手を置いてから俺は廊下を進む。
今回の稼ぎは二万八千八百七十円だったから高木さんに三万円を払って結局赤字か……。
ダンジョンに潜って赤字では本末転倒だが何もすべてが無駄だったわけじゃない。
快眠枕という十分で八時間分の睡眠効果を得られるという便利なアイテムを持って帰ってこれたんだ。
今回はそれでよしとしよう。
リビングのドアを開け、
「ポチ、久しぶりの我が家はどうだ?」
ポチをリビングに通す。
「俺、明日は珠理奈ちゃんのためにダンジョンの地下一階層に行ってくるけど」
「わん」
スライムを連れて帰るなんて変な約束をしてしまったからな。
「本格的にダンジョンに潜るようになったらまた高木さんのとこに預けることになるけどポチはそれでもいいか?」
「わんっ」
ポチは元気よく吠えた。高木さんとポチは相性がよさそうで何よりだ。
「あ、そうだ。夕ご飯はもう食べたのか? それとも高木さんにもう食べさせてもらったか?」
「わん」
「わんじゃわかんないなぁ」
俺は念のためドッグフードを少し手に取り差し出してみた。
ポチはくんくんとにおいを嗅いでからゆっくりと食べ始めた。
「うーん……いつもならもっとがっつくはずだよな」
するとポチは途中で食べるのをやめる。
「なんだ、やっぱり高木さん家でもう食べたんじゃないか」
「わんっ」
「そっかそっか、それならいいんだ。ところで高木さん家ってどんな感じなんだ?」
「くぅん?」
ポチは首をひねるとソファにとことこと歩いていきひょいと跳び乗ると寝そべってしまった。
「まあいいや……おやすみ、ポチ」
リビングの明かりを消した俺はこの後風呂に入ってから録りためておいたアニメをスナック菓子片手に見て深夜二時頃ベッドに横になった。
……。
……。
……。
「……ね、眠れない」
だが快眠枕で既に十分寝ていたせいか俺の目は冴えまくっていてこの夜俺は一睡も出来なかった。
第一章完結です。
☆☆☆☆☆……面白い
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☆☆……読んでやってもいい
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といった具合でマークでここまでの総評を是非お願いいたしますm(__)m




