第91話 帰還石と魔石
「ふぅ……やったか」
いつもならここでモンスターの体が泡状になって消えていくのだが……。
オークキングは消滅しなかった。
むくっと起き上がる。
「なっ!?」
今のオークキングへの一撃は確実に仕留めた手ごたえがあったのにっ……。
「マツイさん、オークキングは強くなった分だけ防御力も上がっているんですよっ」
ククリの言葉にハッとなる。
俺の体感では倒せていたはずの一撃だったが防御力が上がっていたことでオークキングは死を免れたのか……。
オークキングは立ち上がると不気味に笑った。
また自分にヒールをかけたようだ、けろっとしている。
すると何を思ったのかオークキングは槍の持ち手を変え穂先を自分の体に向けた。
勝利を確信したような顔で俺を見据える。
「……まさか」
そのまさかだった。
にやりと口角を上げたかと思うと次の瞬間オークキングは自分の胸に槍を突き刺した。
『フー……!』
その槍を引き抜くと血が溢れ出てくる。
「マツイさんっ、回復される前に倒してくださいっ! じゃないと――」
「わかってるっ」
俺はククリが叫ぶより早く行動を起こしていた。
勘の鈍い俺にもオークキングのしたいことはわかった。
腹や胸では生ぬるい。
初めから首をはねるべきだったのだ。
俺はオークキングに駆け寄ると首を横に一閃刀ではね飛ばし――
ガキンッ!
しかし、首をはね飛ばすことは出来なかった。
それどころか妖刀ふたつなぎが折れてしまった。
「っ!?」
『フー……!』
ショックでたじろぐ俺の顔面にオークキングの拳が炸裂する。
「ぶはっ……!」
ずざざっと床を転がる俺。
「マツイさんっ!」
「うぐ……だ、大丈夫だ」
なんとか体を起こすが目の前にはオークキングが迫っていた。
オークキングは俺の顔を片手で掴むと持ち上げる。
そして持っていた槍で俺の体を突き刺した。
「ぐああぁっ!」
槍が体を貫通する。
俺は吐血しながらも「バトルウインド……!」オークキングに手を向け唱えた。
近距離からの風の刃がオークキングの首にぶち当たる。
これで駄目なら結構やばいぞ……。
そう思いつつかすれる目でオークキングを見やるとオークキングの首には少しだけえぐれたような傷が出来ただけだった。
「……っ」
いや、それだけではなく俺の攻撃はオークキングを怒らせただけだったのかもしれない。
オークキングは俺の体に刺さっていた槍を力任せに引き抜くと今度はそれを俺の顔めがけて振り上げた。
「マツイさんっ、帰還石を使ってください! 早くっ!」
ククリの声が耳に届く。
帰還石は割ることでダンジョンの外に出られるアイテムだ。
俺は背中の皮の袋から手触りで帰還石を探り当てるとそれを下に向かって素早く投げた。たまたまそれがオークキングにぶつかる。
ガシャン!
『フー……!?』
すると俺は帰還石の効果でダンジョン外に脱出――と思ったがそうはならずにオークキングの方が姿を消したのだった。
どすん。
「え……?」
オークキングが消え床に尻もちをついた俺が何が起こったのか呆気にとられていると、
「マツイさん、今投げたのは帰還石じゃなくて魔石ですよっ」
ククリが言う。
オークキングがいた辺りの石畳の上をよく見ると青い石のかけらが散らばっていた。
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