第9話 ヒューマノイドスライム
ボーナススキル魔眼の効果である暗視と透視。
暗視は使おうと意識しなくても常時発動しているらしく暗いダンジョン内ではかなり便利だった。
一方の透視だが目を凝らすことで能力が発動するようなのだがこれが非常に疲れる。
まばたきをせずに一点をにらみ続けた時のような目の痛みと疲労感が襲ってくるので透視の連続使用は控えた方がよさそうだ。
十万円で魔石を買い取ってくれるという店を探すため俺はダンジョンの案内人ククリと愛犬のポチと一緒にダンジョン内を歩き回った。
幸いなことにスライムと出遭って以降モンスターとの接触はない。
それというのもポチの嗅覚と魔眼の透視能力のおかげだ。
上手くモンスターのいない道を選んで進んでいた。
そしてある部屋の前に来た時俺はモンスターがいないかどうかを確認するために通路から部屋の中を透視した。
すると部屋の中央に人間が立っているのが見えた。
「おっ……」
ダンジョン内に俺以外の人間?
だったら店の店主に違いない。
「……みつけたぞっ」
俺は短絡的にそう考え部屋の中へと駆けだした。
「あっ、ちょっと待ってくださいっ……違います!」
ククリが声を上げたが時すでに遅く俺たちが部屋に足を踏み入れた直後部屋の出入口が突如として出現した石の壁で塞がった。
「な、なんだっ?」
辺りを見回すが部屋から通路へとつながる出入口はすべて石の壁で閉ざされてしまっている。
「……もしかして、俺たち閉じ込められた?」
「はい、もしかしなくてもその通りです」
とククリが少し呆れたように言った。
「ここはフロアボスのいる部屋ですよ」
「でもあそこに人が……」
俺は部屋の中央付近でうつむいている女性を指差した。
「あれは人ではありません。あれがこの地下一階層フロアのボス、ヒューマノイドスライムです」
ククリがそう言った瞬間うつむいていた女性がこっちを向いた。
「っ!?」
驚くことに女性には顔がなかった。
俺がその姿にひるんでいると女性はぐにゃ~っと意志を持った粘土のごとく体を変形させた。
服だと思っていた表面がどろどろと溶け青色の体があらわになる。
そしてみるみるうちに人間大のボウリングのピンのような形に変わった。
「あれを倒さないとこの部屋からは出られませんよ」
とククリ。
「あいつスライムの仲間みたいなもんなんだろ、弱いんだよなっ」
「地下一階層とはいえボスですからね、ヒューマノイドスライムのレベルは10です」
ククリは落ち着いた口調で話す。
「レベル!? そんなのあるのかよ、聞いてないぞ! 俺のレベルはいくつなんだよっ」
「まだスライム一匹しか倒していませんからマツイさんのレベルは1です」
「勝てるかっ!」
俺が叫ぶとヒューマノイドスライムは体からビュンとトゲのようなものを伸ばして攻撃してきた。
「うわっ!?」
俺は自分でもびっくりするほどの反射神経で間一髪これを避けた。
「あっぶねー」
当たっていたら体に穴が開いていたかもしれない。いや、マジで。
「わあ! すごいじゃないですかマツイさん」
ぱちぱちと拍手をするククリ。
いつの間にかククリとポチは俺から離れたところで見物していた。
「まぐれだっ」
もう一度やれと言われても出来る気がしない。
「それよりあいつを倒す方法を教えてくれっ!」
「簡単ですよ。その右手に持っている魔石をぶつければいいんですよ」
ククリは俺の右手を指差した。
「えっ、これ?」
俺は右手でずっと握りしめていた魔石に視線を落とす。
そういえばククリが言っていた。モンスターに当てれば即死効果があると。
でも……。
この石は一個十万円。
……もったいない。
『キュイー!』
ヒューマノイドスライムが不気味な声を上げながら頭部分をぐるぐると振り回し始めた。
よくわからないが何かする気なのはわかる。
もうもったいないとか言ってる場合じゃないな。
「えーい、くそっ!」
俺は一個十万円の魔石をヒューマノイドスライムめがけて投げつけた。
ガシャン!
魔石は見事ヒューマノイドスライムの下腹部辺りに命中すると粉々に砕け散った。
『キュイィィ……!』
ヒューマノイドスライムは動きが止まり次の瞬間泡状になって消滅した。
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