表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/233

第72話 秘密の話

リビングにて。


パジャマ姿の珠理奈ちゃんが俺を見ながら口を開いた。

「……つまりあの階段の先には写し鏡の門という大きな鏡があってそれを通り抜けることが出来るんですね」

「そう」

「……通り抜けた場所がトウキョウダンジョンという地下迷宮なんですね」

「そうそう」

「……そのトウキョウダンジョンというところにはモンスターとか不思議なアイテムが出てくるんですね」


「その通り。いやあ、わかってくれたみたいでよかったよ。だからね、このことは黙っていてほしいんだ。こんなこと世間に知られたら――」

「……わたしのこと子どもだと思ってバカにしているんですか?」

「え、いや、バカになんてしてないってば」

「……わたしのこと信用できませんか?」

「いやいやいや、信用してるからこうやって話してるんだって」


珠理奈ちゃんは口を真一文字に結び俺をにらみつけている。

と思ったらお尻のポケットからスマホを取り出した。


「……秀喜おじさんが庭で何かしているってお母さんに報告します」

「わー、駄目駄目っ、初子姉ちゃんは絶対駄目っ!」

「……だったら本当のことを話してください」

「だから話してるんだってばっ」

やはり予想通りすんなりとは信じてもらえないようだ。


「ちょっと待ってて、証拠を持ってくるから」


そう言い置くと俺は自分の部屋から天使の靴を持って戻る。



「ほらこれ、ダンジョンで拾ってきたアイテムだよ。天使の靴っていうんだ」

「……翼がついているだけですよね」

「履いてみればわかるから」

「……」

「いいから履いてみなよ」


珠理奈ちゃんに天使の靴を履くように促すと珠理奈ちゃんはしぶしぶそれを履いてみせた。


ふわっ。

「……えっ、えっ、きゃっ」

うまくバランスが取れず俺の腕にもたれかかる珠理奈ちゃん。


「その靴宙に浮いてるでしょ。そんな靴今の科学技術で作れると思う? 子どもじゃないならわかるだろ?」

「……ぅ~」

返す言葉がないのか「ぅ~」とうなり声を上げる。

よかった。

これが早紀姉ちゃんみたいなネジが抜けてるタイプの人間だったら話が通じないところだった。


「……わ、わかりました。信じられないですけど一応信じます」

「そっか。ありがとう」


俺から手を放し靴を脱ぐ珠理奈ちゃん。


パジャマの袖を整えながら、

「……モンスターが出るんですよね。危険じゃないんですか?」

俺を見上げてきた。


「ああ、問題ないよ」

危ない場面は何度かあったが心配させないようにそう答えておく。


「中で上がったレベルはそのままだし、ダンジョンには案内人もいるから」

「……案内人? その人って女性ですか?」

「うん、まあそうかな」

ククリは精霊だけど一応性別は女だよな。


「……ふーん。お母さんに黙っていてほしいですか?」

「そりゃもちろん。というか初子姉ちゃんだけじゃなくてみんなに秘密にしておいてほしいんだけど」

今の時代どこから話が広がり出すかわからない。

そうなったらダンジョン探索どころではなくなってしまう。


すると珠理奈ちゃんは俺が下手に出たのをいいことに、

「……じゃあ今度ダンジョンに行った時わたしに何かお土産持って帰ってきてください」

妙なことを言い出した。


「え、お土産?」

「……はい。そうすれば秀喜おじさんとわたし二人だけの秘密にしておきます」

「お土産かぁ……」

俺は珠理奈ちゃんを盗み見る。

この子は初子姉ちゃんに似て賢い子だからダンジョン内のアイテムを誰かに見せびらかしたりするようなことはしないとは思うが……。


「うーん……」

「……嫌ならお母さんに電話します」

「あー、わかったよ。なんか持って帰ってくるよっ」

「……秀喜おじさん、ありがとうございます」


俺が返すと珠理奈ちゃんは満足そうに頭を下げた。

丁寧な言葉とは裏腹にその顔には初子姉ちゃんそっくりの意地悪そうな笑みを浮かべていた。

☆☆☆☆☆マークとブクマを押してもらえるととても嬉しいです!

よろしくお願いいたしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ