第64話 姪を残して
俺は初子姉ちゃんの一人娘の珠理奈ちゃんを成り行き上三日間預かることになった。
といっても俺は明日からダンジョンに潜るので一緒にいてやれるのは今晩だけだが。
夕ご飯を食べ終え自室でくつろいでいると、
トントン。
廊下からノックをする音が。
「はーい」
俺はベッドから下りるとドアを開ける。
そこにはもちろん珠理奈ちゃんが立っていた。
「……お風呂どうすればいいですか?」
「どうすればって順番ってこと?」
「……はい」
珠理奈ちゃんはうなずく。
「先入っていいよ。俺はあとで入るから」
「……そ、そうですか。じゃあそうします……あのう秀喜おじさん何か始めました?」
唐突な問いかけをしてくる珠理奈ちゃん。
「何かって?」
「……いえ、秀喜おじさん何か前会った時と雰囲気がちょっと違うので」
「そ、そう? あーちょっと筋トレ始めたからかな」
ダンジョンのことは言えない。
「……そうだったんですね。じゃあそのせいかもしれませんね、すみません変なこと訊いて。じゃあ失礼します」
「あ!」
「……はい?」
俺が声を上げたことで珠理奈ちゃんが振り返った。
「……いやごめん、やっぱなんでもない」
「……は、はぁ」
三日分の着替えは持ってきてるのか? それとも洗濯でもするのか?
疑問に思ったが訊くのはやめた。
いくら姪っ子とはいえ女子中学生にその質問はセクハラとか思われかねない。
俺は不思議そうな表情を浮かべる珠理奈ちゃんを黙って見送った。
一時間ほどして珠理奈ちゃんが湯上り姿で「……お風呂先入りました」と報告してきたので俺はさっとお風呂を済ますと深い眠りについたのだった。
◇ ◇ ◇
翌朝――
「じゃあ俺出かけてくるけど本当に一人で大丈夫?」
「……はい」
「戸締りとか火の元とか気をつけてね」
「……はい。秀喜おじさんも気をつけてください」
玄関先で会話を交わすと俺は一旦家の前の道まで出た。
少し歩いてから珠理奈ちゃんが見ていないのを確認して庭に戻る。
そして木の陰で服を脱ぎ全裸になると穴の中に入っていった。
石階段を下り写し鏡の門まで行くと手を鏡にかざす。
『地下何階層からスタートしますか?』
という鏡からの問いかけに俺は、
「地下一階層で」
と答えた。
『地下一階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
「よし、行くぞっ」
顔をはたき気合いを入れてから俺は写し鏡の門を通過した。
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