第45話 バトルアイスでかき氷
俺は食器棚の奥にしまいこんでいたかき氷機を取り出すとそれとうつわを持って自室に向かった。
ドアを閉め、
「バトルアイス!」
と唱える。
右手から出た氷の塊を左の手で受け止めるとそれをかき氷機にセットする。
「何をしているんですか?」
「かき氷を作っているんだよ」
不思議そうにみつめるククリの前で俺はかき氷機を動かした。
しゃかしゃかしゃか……。
うつわにかき氷がたまっていく。
「バトルアイスも少しは役に立ったな」
かき氷が出来上がっていくのを前に俺はつぶやいた。
バトルアイスの消費魔力は15。
おかげで残り少なかった魔力は0になってしまったがかき氷が作れた。
俺はかき氷を持って一階に下りると冷蔵庫からコンデンスミルクと数種類のジャムと蜂蜜を取ってそれらをテーブルの上に置いた。
「さあ、かき氷だ。好きな味にして食べるといい」
「わーい! やったー! かきごおりだー!」
紘介は跳び上がり無邪気に喜びを体で表現する。
「ひーくんおじちゃん、ありがとー!」
「スプーンはそこにあるからな」
「いただきまーす!」
紘介はコンデンスミルクをこれでもかというくらいかき氷にかけると頭が痛くなるのもお構いなしでスプーンいっぱいにかき氷をすくって口に入れた。
「甘くておいしいっ!」
大声を出し椅子から跳び上がる紘介。
いちいちリアクションが大きいがそこまで喜んでくれるなら作ってやった甲斐があるというものだ。
「ひーくん、かき氷なんてあったんだ?」
「まあね。早紀姉ちゃんの分もあるからみんなで食べようか」
「うん」
俺は蜂蜜を持って自分の部屋に戻ると魔力草を飲み込んだ。
魔力草の効果で魔力を回復させるとバトルアイスで氷の塊を出しかき氷機にセットする。
しゃかしゃかしゃか……。
「魔力草も持ち帰っておいてよかったな。まさかこんなことで役に立つとは思わなかったけど……」
「かき氷って美味しいんですか?」
「食べてみればわかるさ……はいこれククリの分」
俺は今出来上がったばかりのかき氷をククリの前に差し出した。
「私ももらっていいんですか?」
「ああ」
蜂蜜をたっぷりかけてから、
「ほら食べてみなよ」
「……はい。ではいただきます」
おそるおそる口をつけるククリ。
「冷たっ! マツイさん、これすごく冷たいですよっ」
「まあ、氷だからな。蜂蜜がかかっているところを食べてみろよ」
言いながら俺は魔力草を口に運ぶ。
あと二人分のかき氷を作るためだ。
「わあっ。すごく甘くて美味しいですっ」
「それはよかった」
俺はこの後バトルアイスを二度唱えて早紀姉ちゃんの分と自分の分のかき氷を作ると一階に戻った。
「これ早紀姉ちゃんの分ね」
「ありがとう、ひーくん」
「つめてー! あったまいてー!」
紘介はさっきの勢いはどこへやら食べるペースが落ちていた。
「ははっ、急いで食べるからだよ」
言いながら俺はスプーンに手を伸ばして握ると――
くにゃり。
スプーンが折れ曲がってしまった。
っ!?
とっさにスプーンをテーブルの下に隠して手で元の形に戻す。
幸いにも二人には見られていなかったようだ。
なんだ……?
レベルアップで攻撃力が上がったせいか……?
そんなに強く握ったつもりはないのだが……うーん。
「俺やっぱり自分の部屋で食べるよ、見たいテレビがあるからっ」
適当な言い訳で二人のもとから離れると俺は自分の部屋に駆け上がった。
もちろんククリに今起こったことを相談するためだ。
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