第31話 写し鏡の門とのやりとり
全裸で写し鏡の門の前に立つ。
手をかざすと、
『地下何階層からスタートしますか?』
鏡から機械音のような声が出た。
「え? 何……?」
『地下何階層からスタートしますか?』
「え、えっと……何階層からスタートできるんですか?」
戸惑いながらも敬語で訊いてみた。
『地下何階層からスタートしますか?』
機械的な音声が同じ言葉を繰り返す。
「なんだこれ、まいったなぁ……」
『地下何階層からスタートしますか?』
……駄目だ、こいつ。
会話が出来ない。
その時ふとダンジョンのすすめに書かれていたことを思い出した。
そういえば行ったことのある階層ならその階層から始められるんだったっけ。
「ってことは俺は地下二階層までは行ったことがあるから――」
『地下二階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
「いやいや、今のは違うから。俺は慎重に進めたいんだよ」
『地下二階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
「いや、だから、地下二階層じゃないって、キャンセルっ」
『地下二階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
「なんだこいつっ」
こっちの言うことを全然聞いてくれない。
「だから地下二階層じゃなくて地下一階層から始めたいんだよ!」
『地下一階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
「おっ、変わった。なんだ言い直せばよかったのか……不親切なんだよな、まったく」
俺は機械音との押し問答の末一週間ぶりにトウキョウダンジョン地下一階層へと足を踏み入れたのだった。
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