第220話 ククリの言葉
翌朝。
「……さん。マツイさん起きてください。マツイさんっ」
俺が目を覚ますと目の前にはククリがいた。
「……ククリ? どうしてここに……?」
「……」
ククリは神妙な顔で俺の胸の上に正座している。
「……なんかほっぺたが痛いけどククリ叩いた?」
「た、叩いてません」
ぷいっと顔をそむけるククリ。
俺はベッドから起き上がると、
「……何しに来たんだよククリ」
あえてちょっと冷たい態度で接した。
ダンジョンとはもう関わり合いを持つ気はないからククリに勝手に家に来られたら困るのだ。
ククリはぱたぱたと背中の羽を動かしながら宙を飛ぶ。
「マツイさん、四日もダンジョンに来ないで何してたんですか?」
「言ったろ、ダンジョンにはもう行かないって」
「……スラさんが消滅しちゃったからですか?」
「……」
その問いには答えなかった。
スラのことは吹っ切ったつもりでいたが口にするとスラが死んだことを再認識してしまう気がしたからだ。
「スラさんがもし今のマツイさんを見たらどう思うでしょうか? 自分のせいでマツイさんがダンジョンに潜るのをやめたと知ったらスラさんは悲しむんじゃ――」
「俺は今真面目に働いてるんだよ、生活も充実してる」
「マツイさん……」
「あいつだってきっと……喜んでくれるさ」
スラという名前は口に出来なかった。したくなかった。
「精霊には地上はきついんじゃなかったのか」
地上には魔素という物質が空気中にないらしく精霊は長時間は活動できないようなことを前にククリから聞いた記憶がある。
「それはそうですけど……」
「だったらもう帰れよ、ククリ」
俺はククリに背を向ける。
「マツイさんはダンジョンにはもう二度と来ないつもりですか?」
「ああ、そうだよ。そう言ってるだろ」
「ダンジョンに――」
「いいから帰れよっ!」
俺は冷たい態度をとろうとしている内に本当に気持ちが入ってしまいついククリに対して大声を上げてしまった。
……。
ククリの反応がない。
でも振り向く勇気もない。
誰かに大声で怒鳴るなんて人生で初めてのことだったので自分のことながら動揺していた。
どれだけの時間そうしていただろう。
体感では十分にも二十分にも感じられたがひょっとすると十秒くらいだったかもしれない。
もうククリは俺に愛想をつかしてダンジョンに帰ってしまったんじゃないか、そう思いゆっくり振り返った。
「っ!? ククリ……」
ククリはただ黙って俺を見ていた。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
ククリは俺の目をじっとみつめて言葉を紡ぐ。
「マツイさん。ダンジョンに……ダンジョンにスラさんを生き返す方法があると言ったら、どうしますか?」
「え……?」
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