第211話 ファイヤーゴーレム
『まだあたしの魔力3残ってるからここのフロアボスはあたしがやっちゃうからねっ』
スラが息巻いて言うと、
「スラさんそれは無理だと思いますよ」
ククリが口を開いた。
『えーなんでククリちゃん?』
「このフロアのボスはファイヤーゴーレムといって炎耐性のあるモンスターなんです。だから灼熱の炎やバトルマッチ、バトルフレアといった魔法は効きません」
はなからバトルマッチにはこれっぽっちも期待してないがな。
『そうなんだー、残念。じゃあ魔力は温存しといて次の地下二十階層でまた頑張るよっ』
「あ、スラさん度々申し訳ないですけどそれも無理だと思います」
と手を上げククリが言う。
『どうして?』
「地下二十階層はドラゴンが出ることは言いましたよね。そのドラゴンもまた炎耐性があるんです」
『えーマジで?』
「はい。もっと言うとドラゴンもスラさんと同じく灼熱の炎を吐けます」
「なに、そうなのか?」
「はい。だから寒熱耐性はすごく役に立つと思いますよ」
スキルの種ケチらずに食べておいて正解だったな。
『なーんだ。じゃああたしの出番は地下二十一階層からだね』
「ああ、それまではゆっくりしててくれ」
『オッケー』
話がつくと俺たちはファイヤーゴーレムの待つフロアボスの部屋へと歩を進めた。
◇ ◇ ◇
「あれがファイヤーゴーレムか……強そうだな」
「マツイさん、それ毎回言ってません?」
ククリが俺の顔の横を飛びながら言ってくる。
「しょうがないだろ。本当にそう思うんだから」
ファイヤーゴーレムは五メートルほどの巨体を縮こませて体育座りのような恰好で部屋の中央にたたずんでいた。
赤い体からは湯気のようなものが出ている。
俺は右手にソードイーター、左手には黒極の剣を持って部屋の前に立つ。
「よし……いくぞっ」
俺は覚悟を決めて部屋に足を一歩踏み入れた。
ゴゴゴゴゴ……と後ろの通路が塞がりファイヤーゴーレムがゆっくり立ち上がる。
俺は先手必勝とばかりに駆け出すとまだ攻撃態勢をとれていないファイヤーゴーレムの核を狙って心臓部分にソードイーターを突き立てた。
ガンッ。
ソードイーターがファイヤーゴーレムの胸に浅く刺さる。
『……』
ファイヤーゴーレムはその様子を見下ろし右手でソードイーターを掴むと力任せに引っ張った。
ガキン!
その衝撃でソードイーターが割れてしまう。
「あっ、このっ……バトルウインド!」
空いた右手ですぐさまバトルウインドを放つも風の刃はファイヤーゴーレムの体に当たって消え去った。
「な!? ダメージなしか――ぐえっ」
バトルウインドがまるで効いていないことに驚愕しているとファイヤーゴーレムの大きな手に掴まれた。
「ぐぐぐ、あっちぃ……」
圧死させようとしているのかそれとも熱死させようとしているのかとにかくこのままだとヤバい。
「マツイさんっ」
『マツイさんっ』
ふたりの心配そうな声が後方から飛んでくる。
「うぬぬっ……」
ファイヤーゴーレムの力が予想以上に強く手の中から抜け出せない。
「マツイさんっ、ファイヤーゴーレムの弱点は氷です、バトルアイスを使ってくださいっ」
熱さでぼんやりとする俺にククリの声がうっすらと聞こえた。
バトルアイスなんて攻撃にならないだろうと思いつつも他に手がないので、
「バトルアイス!」
と口にする。
俺の手から氷の塊が出た。
その時、
『……!』
ファイヤーゴーレムの手が一瞬緩んだような気がした。
俺は「バトルアイス!」とさらに唱える。
氷の塊がファイヤーゴーレムの手のひらに当たるとじゅう~っという音とともに蒸発してしまったが、
『……!』
ファイヤーゴーレムはどうやら嫌がっているようだ。
俺はこの後さらに二回ファイヤーゴーレムの手の中でバトルアイスを発動した。
すると、
『……!?』
ファイヤーゴーレムがたまらず手を開いた。
やった!
ここぞとばかりにファイヤーゴーレムから離れた俺は異次元袋からゴールドソードを取り出した。
俺は両手に黒極の剣とゴールドソードを逆手に持って跳び上がり氷のダメージでひるんでいるファイヤーゴーレムの胸を、
「うおおぉぉ!」
二本の剣で突き刺した。
ガシンッ!
二本の剣がさっきよりも深く突き刺さる。
どうだ?
効いたか?
動きを止めたファイヤーゴーレム。
しゅう~。とさっきまで出ていた湯気が消えていき赤い体も色を失っていく。
俺は剣を引き抜き見上げる。
「やった……のか?」
俺がほっと一息つこうとしたその刹那ファイヤーゴーレムの目だけが赤く光った。
「マツイさん、まだですっ。核がまだ完全に破壊されていませんっ」
『ガァァァー……』
ファイヤーゴーレムは声を上げ再度動き出し俺に向かって手を伸ばしてくる。
だがもうさっきまでのような迫力はなかった。
俺はその手をかいくぐるとゴールドソードをファイヤーゴーレムの核めがけて思いきり突き上げた。
『……ァ、ァ、ァ……』
ファイヤーゴーレムは今度こそ動きを完全に停止させると次の瞬間ぼろぼろと崩れ去っていった。
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