第189話 口笛
『ピューィ!』
石化した俺がメドゥーサクイーンに破壊されようとしていたまさにその時、口笛の音が部屋中に響き渡った。
口笛の音を聞いたメドゥーサクイーンは俺へのパンチを当たる寸前で止めて俺の後方へと向き直る。
『ククリちゃん、あたしがメドゥーサクイーンをひきつけとくからその間にマツイさんを元に戻してやってっ』
後ろからスラの声が聞こえた。
と同時に左の方にちらっとスラの姿が見えた。
『シャー!』
メドゥーサクイーンはスラを追って俺から離れていく。
そうか。スラの口笛の効果でメドゥーサクイーンの攻撃対象がスラに移ったのか。
『きゃっ!』
スラの悲鳴が上がる。
顔を動かせないのでよく見えないがこのままだと今度はスラが危ない。
早く、ククリっ。
俺を治してくれっ。
「待ってくださいねマツイさん、今カエルの涙をかけますから」
ひゅーんと俺に近付いてくるとククリがカエルの涙を俺にふりかけた。
「ぶはっ……! た、助かった」
俺の石化が解けた。
「マツイさん、早くスラさんを助けてあげてくださいっ」
「任せろっ」
スラはメドゥーサクイーンに滅多打ちにされていた。
それでも目は合わせないようにと目をつぶりながら必死に耐えていた。
「スラから離れろっ!」
俺はメドゥーサクイーンの後ろから斬りかかる。
ザンッ!
と首の根本から脇の下にかけてメドゥーサクイーンの体を切断した。
地面に落ちたメドゥーサクイーンの半身は不気味に笑いながら泡となって消えていった。
ゴゴゴゴゴ……石の壁がなくなり階段が現れる。
「スラっ!」
急いでスラのもとに駆けつけると、
『……い、痛かったけどなんとか耐えたよあたし……偉いっしょ』
スラは目を半開きにしながら傷だらけの体で俺を見上げた。
「喋るな、今回復してやるから。ハイヒール!」
オレンジ色の光がスラを包み込み傷を治していく。
『……あ、あったかーい』
しばらくしてスラの傷は完治した。
「まったく、むちゃするんだからなスラは」
『でもマツイさんがピンチだったし、やるしかなくね』
「そうですよ、もとはといえばマツイさんが石にされちゃうから悪いんですよ」
「だってまさかあんなところにいるなんて思わなかったし……ま、まあみんな無事だったんだからよかったじゃないか、それより宝箱宝箱っ」
一対二と立場が危うくなったので話題をそらす。
宝箱に近付き、
「さーて、中身は何かなぁ?」
白々しく声を上げながら宝箱に手をかけた。
ガチャ。ギイィィ…。
「おっ、お守りだ」
中に入っていたのは腹減らずのお守りだった。
「やった、役に立つアイテムだぞ」
「そうですね」
『よかったじゃん』
なんか反応が薄いがまあいいだろう。
俺は腹減らずのお守りを首にぶら下げると地下十五階層への階段の前まで進む。
「ククリ、次のモンスターはどんな奴なんだ?」
「次は地下十五階層ですよね。え~っとイエティというモンスターです」
「イエティ? ってあの雪男みたいな奴のことか?」
未確認生物だったかな。なんか聞いたことがあるぞ。
「すいません、マツイさんの言っていることがよくわからないんですけどそのモンスターは白い毛むくじゃらの体毛を全身に生やした人間とゴリラの中間のような見た目をしています」
「だからそれがイエティだろ」
もしかして未確認生物としてのイエティってこのダンジョンから抜け出した奴が発見されてるのかなぁ。などと考えてみるが答えが出るはずもなく……。
「倒しちゃっていいんだよな、イエティ」
「当然です。モンスターですから」
ククリが言うのでこの際気にせず倒してしまおう。
俺は黒極の剣を持つ手に力を込め地下十五階層への階段を一歩一歩下り始めた。
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