第168話 値切りのお守り
地下十一階層でグリュプスを倒しながらアイテム探しを進めていると前方に毒の沼地に囲まれた宝箱を発見した。
俺は毒の沼地ギリギリまで行くと宝箱を透視する。
「……あっ、多分中身はお守りだなぁ」
宝箱の中に入っているものはおそらく赤い色の布地のお守りだと見抜くもなんのお守りかはここからではよく見えない。
「罠じゃないとわかればそれでいいや」
ふわっ。
「ヒーローマントが役に立ったな」
俺はヒーローマントを装備していたので悠々と毒の沼地に囲まれた宝箱に飛んで近付くとこれを開けた。
『マツイさん、ククリちゃん、何が入ってたー?』
空を飛ぶことが出来ないスラが訊いてくる。
俺はククリに見守られながら中にあったお守りを手に取った。
「えっとなになに……値切り?」
お守りの布地には値切りという文字が刺繍されている。
「うわっ、マツイさん。それ値切りのお守りですよ」
「なんだそれ? まさか呪われてるとか?」
ククリの反応からするにもしかしたら呪われたアイテムかもしれない。
「いえ、呪われてはいませんけど悪いことは言いませんからそれは使わない方がいいですよ」
ちょっと青ざめた顔のククリが意味の分からないことを言う。
「値切りのお守りってなんなの?」
『ねえ、あたしの話聞いてるー? とりあえずっこっち戻ってきてくんない、声聞こえないからさー!』
とスラが叫ぶので俺とククリは一旦スラのもとまで戻った。
俺は地面に下り立つ。
『で、何入ってたん?』
「値切りのお守りだってさ」
『へー、何それ?』
スラが俺を見上げる。
「いや、俺に訊かれても……ククリに訊いてくれ」
俺はあごをしゃくってみせた。
『ククリちゃん、値切りのお守りってなんなん?』
「マツイさんが絶対使わないって約束するなら教えてあげます」
ククリは俺の目をにらみつけるようにしてじっとみつめてくる。
『だってさマツイさん。早く約束しなよー、あたしどんなアイテムか気になるしー』
そんな約束したくはないがククリに訊かないことにはこのアイテムの使い道がわからないからなぁ……。
「わかったよ。使わないから教えてくれ」
「ほんとですか? マツイさんたまに嘘つくんですよね~」
「そんな顔で見るなよ。ククリにはもう嘘つかないよ」
外の連中にはこれからも嘘をつき続けることになるだろうがククリとスラは運命共同体みたいなものだ。ふたりに対してはなるべく正直に生きよう。
「そうですか。じゃあ教えてあげますがくれぐれも使わないでくださいね」
そう前置きするとククリは話し始めた。
「その値切りのお守りはベアさんのお店で使うとベアさんのお店の商品がなんでも半額で買えるようになるんです」
「半額っ、すごいいいじゃないかっ」
「マツイさんの前の探索者さんもそう言ってましたよ」
「え……?」
前の探索者? ってどういうことだ……?
「その方は結局ベアさんを怒らせてしまって帰らぬ人となってしまいましたけど……というわけで教えたんですからベアさん相手には絶対に使わないでくださいねっ」
「どういうわけだよっ。っていうか前の探索者って何っ? 帰らぬ人って何っ?」
知りたいことだらけだ。
「マツイさん、そんなことよりアイテム探し続けましょう」
ククリが優しく微笑みかけるが、
「いやいやいや、もっと詳しく教えてくれって。何っ? 何がどうなったの? ベアさんが俺の前任者をやっちゃったの? ねぇっ?」
疑問は何も解決していない。
ククリはそんな俺を無視してすいーっと飛んでいってしまう。
「おい、ククリってば……」
『マツイさん、しつこいとマジククリちゃんにも嫌われるよ』
「にもってなんだっ。俺既に誰かに嫌われてるのかっ」
『ごめんごめん、言い間違えたわー。待ってククリちゃん、あたしも行くしー』
このあと俺はククリたちと合流するもククリは俺の質問にはその後一切答えることはなかった。
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