第160話 腹減り?
地下六階層。
コウモリ型のモンスターであるバットが出るフロアだが俺に恐れをなして襲ってはこない。
襲ってきたところでバットの超音波攻撃は俺には効かないのでまったく問題はない。
十五分ほどフロアを探索してようやく宝箱を一つだけみつけた。
俺は魔眼の透視能力で罠ではないことを確認してからそれを開ける。
中に入っていたのはまっ黒い仮面だった。
「前にみつけた白い仮面と似てるな」
「防御力+15の黒い仮面です。売値は一万五千円ですが白い仮面とセットでベアさんに売ると通常の値段の倍で買い取ってもらえますよ」
とククリ。
試しに装着してみるも目の部分に穴が開いていないので前がまったく見えない。
「これ顔につけると前が見えなくなるからいらないなぁ」
売値一万五千円はそこそこ魅力的だが……。
「スラ、これ飲み込んでくれるか?」
『いいよー』
未だ全裸で装備品が何もない俺は黒い仮面を物質変換してもらうことにした。
武器か防具、武器か防具……。
俺が心の中で繰り返しているとスラが黒い仮面をばくんと口に含みそれを飲み込んだ。
そしてぼえっと吐き出したものはひのきの棒だった。
からんからんと石畳の上を転がる。
「売値十円のひのきの棒になっちゃいましたね」
「うっ……ス、スラもう一回だっ」
スラの魔力は時間経過とともにほんのちょびっとだけ回復して残り13ある。
スラの特技はあと一回使える計算だ。
『オッケー、任せてー』
俺の頼みにこころよく応じるスラ。
ひのきの棒を飲み込んでから今度はぼえっと赤い布地を吐き出した。
「ん? これは……」
俺はそれを手に取り広げてみる。
「ヒーローマントだ」
「ですね」
スラが最後に吐き出したものは防御力+3の空を自由に飛ぶことの出来るマントだった。
売値は確か三万円だったから一応得したことになるのかな。
俺はヒーローマントを装着すると自分の姿を確認する。
「うーん……さすがに全裸にマントは見栄えがよくないなぁ」
「そんなことないですよマツイさん。とっても似合ってますよ」
ククリがまじまじとみつめてほめてくれるが全然ほめ言葉に感じない。
その時、
『マツイさん、あたしちょっと小腹がすいたし。何か食べる物ちょうだーい』
まだダンジョンに入って一時間ちょっとなのにスラが空腹を訴えだした。
「え、もう? あんだけカレー食べて来たのにもう腹減ったの?」
『もしかしてだけどこの特技使うとお腹減りやすいのかもしんない』
とスラが緊張感のない顔で言う。
「そういうもんなのか。わかった、じゃあとりあえずこの毒消し草やるから食べてな」
『はーい、あんがと』
俺は布の袋から取り出した毒消し草をスラに与えた。
スラはむしゃむしゃと毒消し草を美味しそうに食べる。
「そろそろ本当に武器が欲しいな」
「そうですね。モンスターも次の階層あたりから襲ってきそうですからね」
「次はボアフロアか……」
次こそいいアイテムが出ることを願って俺は地下七階層への階段に足をのばした。
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