第151話 休日
一夜明けて――
「うん。順調順調」
俺は自分の部屋の机の引き出しを見下ろしていた。
引き出しの中には三百七十万円以上の現金が入っている。
すべて俺がトウキョウダンジョンで稼いだお金だ。
『マツイさん、何ニヤニヤしてんの? 気持ち悪いんだけど』
足元に近寄ってきたスラが俺を見上げ言う。
「なんでもないよ。それより朝ご飯にするか」
『オッケー』
スラは開いていたドアの隙間からぴょんと部屋を飛び出ると先に一階に下りていった。
服を着替えて俺も階下に向かう。
「久しぶりに洗濯でもするか」
たまっていた服やタオルを洗濯機に放り込むとスイッチを押す。
その足でついでに久しく捨てていなかったゴミも一か所にまとめた。
「ゴミの分別って面倒くさいんだよなぁ」
『マツイさーん。朝ご飯まだー?』
とご飯を催促するスラの声。
「今、行くよっ」
とりあえずあとは食事が済んでからでいいか。
分別はあとにして俺はキッチンへと急いだ。
スラはドッグフードを俺はご飯と即席の味噌汁を食べながら、
「ポチを一旦引き取りに行って三日くらいはダンジョンに潜るのはやめとくかな」
『ダンジョンいかないの?』
「ああ、ちょっと休憩。お金の方もたまってきてるしそれにバトルメテオが三日経たないと使えないらしいから」
『ふーんそうなんだ。あたしはマツイさんと一緒なら別にどうでもいいけどさ』
これからの予定を話し合う。
「一応言っておくけどポチを迎えに行く時はお前は連れていけないからな。留守番しててくれ」
『ん、なんで?』
ドッグフードをばりぼり食べながらスラが返す。
「ここだとスライムは目立つんだよ」
『何それ、よくわかんない』
「わかんなくはないだろ、お前のためなんだぞ。変な研究施設とかに閉じ込められたくないだろ」
『うーん、閉じ込められるのは嫌かも』
「だろ。だからおとなしくしてろ……それと話は変わるけど、お前一晩寝て魔力回復したんだよな。なのにドッグフードは普通に食べられるんだな」
ものを口に入れているのに物質変換能力は発動していない。
『みたいだね。ダンジョンのアイテムじゃないからじゃない』
「そっか」
慣れというのは怖いもので俺はスラが人間の言葉を話すのをもう当たり前のように受け入れていた。
朝ご飯を済ませると俺はスラを一階に置いたまま自分の部屋に入った。
机の上のスマホを手に取り液晶画面に高木さんの番号を表示させる。
高木さんの電話番号はもう頭の中に入っているが念のためだ。
発信ボタンに指をのばし、
「……はあ~」
緊張で高鳴る胸を押さえながら高木さんに電話をかけた。
向こう側で呼び出し音が鳴っている。
ピリリリリ……。ピリリリリ……。ピリリリリ……。
今は朝の八時半、もしかしたら仕事中で電話に出られないのかもしれないな。
少しだけほっとした気持ちになって俺は一旦電話を切ろうと耳からスマホを離しかけた。
とその時、
『……はい、もしもしっ』
高木さんの声がスマホからかすかに聞こえてきた。
俺は急いでスマホを耳に近付ける。
「もしもし俺、松井だけど」
『うん、ゴジラくんおはよう。ごめんね、わたし今起きたとこなんだ』
「あ、悪い。起こしちゃった?」
『ううん、平気。せっかくの休日を寝て過ごすのはもったいないから早く起きようと思ってたから』
と高木さんは寝起きとは思えないほどはきはきとした受け答えをする。
話を聞く限り今日は仕事は休みのようだ。
すると、
『わんわんっ』
電話口からポチの鳴き声が耳に届いた。
『あ、ポチも今起きたみたい。ゴジラくんの声がスマホから聞こえたのかも』
「ポチ元気にしてるみたいだね。迷惑かけてない?」
『大丈夫だよ。ポチおりこうさんだから夜は静かにしてるし大家さんも犬四匹飼ってるくらい犬大好きだから』
「それはよかった。それで今日なんだけどポチ引き取りに行っても大丈夫?」
『うん。わたし起きたばかりだから一時間後でもいい?』
「ああ、それでいいよ」
『じゃあ待ってるね、ばいばい』
プツッ。プー、プー、プー。
「一時間か……スーパー行ってこれるかな」
心臓の鼓動のはやさとは裏腹に俺は平静を装いつつ、食料品の買いだめでもしておこうかと外出用の服に着替えたのだった。
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