第136話 毒に侵され
結局空を飛ぶアイテムは手に入れられないまま俺たちは取り残していた宝箱のもとへと戻ってきた。
目の前には二つの宝箱。
しかも中身は俺の透視で確認したところおそらく一つは魔石。
しかし残念ながら周囲半径五メートルを毒の沼地で囲まれている。
「諦めますか?」
ククリが訊いてくるが、
「嫌だ。もったいない」
俺はかたくなに拒否する。
魔石は売値は十万円だし投げ当てればフロアボスだろうが一撃で倒せるレアアイテムだ。
せっかく目と鼻の先にあるのに見逃す手はない。
「よし、こうなったら毒に侵されるのを覚悟で取りにいくっ」
「え……本気ですか?」
「ああ。毒の沼地に入ってもすぐ死ぬわけじゃないんだろ?」
「それはそうですけど毒ですからね、すごく苦しいと思いますよ」
「大丈夫、毒なら一度キラービーにくらってるから。あれくらいならなんとか耐えられる」
さっと取りにいってさっと戻ってくれば数秒で済むはず。
「でもでもキラービーの毒とはまた違った――ってマツイさんっ」
ククリがまだ何か言っていたが善は急げだ、俺は駆け出し毒の沼地に足を踏み入れた。
と、
ズボッ。
「うわっ、なんだこれっ。深っ!?」
「あ~、言い忘れてましたけど毒の沼地は深さが一メートル近くありますからね」
「先言えよっ……あ、やばい、なんか苦しくなってきた……」
「マツイさ~ん、大丈夫ですか~?」
「だ、大丈夫……じゃない……キ、キュア……!」
俺は肺と心臓がぎゅっと締め付けられるような苦しさの中なんとか解毒魔法を唱える。
そのおかげで一瞬だけ楽になるもまたすぐに息苦しくなってくる。
どろどろの沼地をかきわけながら宝箱までたどり着くと二つの宝箱を持ち上げてもと来たルートを戻る。
「……はぁっ、キ、キュア!」
俺はどうにかこうにか宝箱を持って生還した。
石畳の上に大の字になって寝ころぶ。
「はぁっ……く、苦しかった……」
「だから言ったじゃないですか、苦しいですよって」
ククリが宙から見下ろしてくる。
「もう……二度としないぞ……」
「それよりマツイさん、宝箱開けないんですか?」
「開けるよ……ちょっと待ってろ……」
俺の状態を察してくれ。
ついさっきまで毒に侵されて死にかけていたんだぞ。
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