第125話 スラの物質変換能力
スラが吐き出したたわしをみつめていると、
『ピキー』
スラがもう一度口を大きく開いた。
「あと二回できるよって言ってます」
「よ、よし。じゃあこのたわしを飲み込んでみてくれ」
スラにたわしを与えると俺はガチャでいいものが出るのを願うような気持ちで顔の前で両手を合わせる。
ぼえっ。
スラが次に吐き出したのは魔力草だった。
「おお、今度は魔力草になった」
たわしじゃなくてよかったが金塊には程遠い。
『ピキー』
スラは自分の口から魔力草が出たことを喜んでいるようだ。
スラからしたら魔力草も金塊も大差ないのだろう。
物質が別のものに変わるという現象がスラにとっては楽しいだけなのかもしれない。
「マツイさん、まだチャンスはありますよ」
「そうだな。じゃあこの魔力草を――」
「あ、待ってくださいっ」
スラに魔力草を与えようとしたところでククリが俺を止めた。
「なんだよ、ククリ」
「今魔力草をあげるのはもったいないですよ」
「ん? なんで?」
ククリは何を言っているのだろう。
魔力草をあげたところでどうせ飲み込んで別のものに変えてしまうから魔力は回復しないのに。
「なんでって……マツイさん本気で言ってます?」
少しだけ呆れた様子で俺を見るククリ。
「いいですか。魔力が10を下回ればスラさんは特技を発動できませんから普通に魔力草を食べられるようになるんですよ。マツイさんが言ったんじゃないですか」
「……あーそっか。うん、そういえばそうだったな」
どうやら俺はニート生活が長すぎて頭を使うことが苦手になってきているようだ、完全に失念していた。
「だからスラさんには別のアイテムをあげましょう。その次に魔力草を食べてもらえば魔力が回復しますから」
「よし、そうしよう」
俺は自分の間の抜けた言動をなかったことのように振る舞うと今の持ち物を再確認してみた。
今の装備品は妖刀ししおどし、くさりかたびら、皮のズボン、運動靴。
所持品はにおい袋、腹減らずのお守り、影縫いのお守り、布の袋、皮の袋、青銅の鎧、黒曜の玉、魔力草、それと現金。
装備品はもちろんのことお守りや袋も大事なものだからスラに飲み込ませるわけにはいかない。
となると……。
「……これかなぁ」
俺は青銅の鎧を手にとった。
「えっ、マツイさんそれはいくらなんでも大きすぎるんじゃないですか」
「やっぱりそうか?」
自分でも一瞬思ったがやはり青銅の鎧は大きすぎて飲み込めないか。
だがスラは、
『ピキー』
自信満々な顔を見せた。
「スラさん、青銅の鎧ですよ。本当にいけるんですか?」
『ピキー』
「なんか問題ないみたいです」
ククリが俺の方を向いてスラの言葉を通訳してくれる。
「無理しなくていいんだぞ……本当に大丈夫なんだな?」
今一度念押ししてから俺はスラの前に青銅の鎧を置いた。
するとスラはにやりとニヒルな笑みを浮かべたかと思うとカバのように口を大きく広げ、ばくんと一口で青銅の鎧を口に含んだ。
「うおっ、すげぇ……」
「わあ~」
思わず声がもれる俺とククリ。
青銅の鎧の形そのものに体が変形してしまったスラだったがごくんとそれを一回飲み込むと青銅の鎧は小さな体のどこに消えたのかスラはいつも通りの体型に戻った。
そして次の瞬間、
ぼえっ。
スラが吐き出したのは薬草だった。
「……あ、薬草」
俺は正直期待外れだったので肩を落としていたのだが、
『ピキー、ピキー』
自分で吐き出した薬草を見ながら相変わらずスラは楽しそうに体を揺らしている。
俺たちはこの後魔力草を使ってスラの魔力を回復させてからスラの物質変換能力を三回試した。
だが金塊はおろか武器や防具すらも吐き出すことはなく結果として麻痺を治す効果のあるムカデ草が最後に残った。
どうやら一番初めにスラが金塊を吐き出したのは偶然に偶然が重なっただけの奇跡的なことだったようだ。
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