第112話 ボアの肉
地下七階層に下りると少しだけ獣臭がした。ボアがいる証拠だ。
俺はスラに気を配りながら通路を進んでいく。
いつボアが出てきてもいいように銅の剣を構えつつ曲がり角は魔眼の透視能力を使って慎重にフロアを探索した。
早々に地下八階層への階段はみつけたがアイテムをまだとっていないのでフロアを回る。
と通路の前方にボアが姿を見せた。
俺を見るなり体長二メートルはあろうかという巨体で突っ込んでくる。
「スラ、下がってろっ」
俺はスラに声をかけるとボアの突進を剣と体を使って受け止めた。
立派な牙を生やしたボアは『ブフー! ブフー!』と鼻息荒く俺を押し込もうとしてくる。
俺は左手でボアの牙を掴むと右手に持った剣でボアの首元を狙って下から突き刺した。
『ブフー……!』
二度、三度突き刺すごとにボアの巨体から力が抜けていくのがわかる。
そして四度目を刺そうとした時、ボアは泡状になって消えていった。
「やりましたね、マツイさんっ」
ククリがすーっと近付いてくる。
「ああ、今さらボアなんかにやられたりはしないさ」
前回は妖刀ふたつなぎという攻撃に特化した武器を持っていたからボア相手でも余裕だったが、今装備している銅の剣でも充分勝てることがわかった。
俺は確実に強くなっている。
「あ、マツイさん。スラさんのレベルがまた上がりましたよ」
『ピキー!』
レベルがまだまだ低いせいかボアを一体倒しただけでスラのレベルは6から8へと上がった。
だがスラのステータスは依然として低いまま。とても戦闘に参加できるレベルではない。
それでも俺はスラの頭を優しく撫でて「よーし、いいぞスラ。俺と一緒に戦える日も近いぞ」と励ます。
『ピキー!』
スラは嬉しそうに体を揺らした。
その後も出遭ったボアを倒しつつアイテムを探す。
途中みつけた防御力+1の皮のズボンを履くとすーすーしていた股間も少しは落ち着いた。
「また出ましたよっ」
「オッケー」
ククリの指差す先にいたボアに対して今度は突進される前に先制攻撃を仕掛ける。
スキル、ボアコレクターの効果で俺の与えるダメージは三倍になっているのでボアに向かって剣を振り下ろすと面白いようによく斬れた。
一撃で致命傷を与えると返す刀でボアにとどめを刺す。
しゅう~っとボアが消滅していくとあとに宝箱が出現した。
「やった、ドロップアイテムですっ」
ククリは言うが中身は見なくても大体わかる。
ボアが落とすアイテムは一種類のはずだからだ。
俺は罠だった場合に備え一応宝箱の中を透視して、
「やっぱりな……」
と口を開いた。
『ピキー?』
「何が入ってるの? って言ってますよ」
スラが興味深そうにみつめる中俺は宝箱を開け中にあったものを取り出してみせた。
『ピキー!』
俺が手に持ったものを見て興奮するスラ。
口からよだれを垂らしている。
「なんだスラ、ボアの肉がそんな嬉しいのか?」
そう。俺が宝箱から取り出したのはボアの肉。
焼いて食べたらかなり美味しいのだが別にレアアイテムというわけではない。
それこそボアを狩っていれば結構な確率で落としてくれる。
『ピキー!』
「スラさんが食べたいって言ってますけど」
「え、今? まだ朝ご飯食べてから一時間くらいしか経ってないのにか?」
『ピキー!』
スラはこくこくと首を縦に振る。
……どこが首かはよくわからないけど。
「まあいいか。じゃあちょっとそこら辺に座って休憩するか」
「はーい」
『ピキー』
通路の端に腰を下ろした俺たちはバトルマッチでボアの肉をあぶってからそれを口に運ぶ。
『ピキー!!』
スラは初めてのボアの肉に顔をとろけさせていた。
「ほっぺたが落ちそうだって言ってます」
「そりゃよかった」
すると、肉のにおいにつられたのか二体のボアが通路から顔を出す。
「マツイさんっ」
「いいよ、お前たちはそこで食べてな。二体くらいわけないさ」
俺は立ち上がると二体のボアを通路で迎え撃った。
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