第110話 スラは頑張りたい
地下四階層はビーフロア。
ビーは毒針をお尻に持つ俺の苦手な蜂型のモンスターだが俺に恐れをなしたか襲い掛かってはこなかった。
俺たちは悠々とフロア探索を進める。
その結果満腹草と攻撃力+1のひのきの棒をゲットした。
満腹草は食べると三日は腹持ちするという便利アイテムなので大事に袋にしまい、一方のひのきの棒は既に銅の剣を持っている俺には邪魔でしかなく売値も十円と安価なのでフロアに置いていくことにした。
「さて次はコボルトか」
「マツイさんを怖がってモンスターが襲ってこないのは楽ですけどスラさんのレベル上げが出来ませんね」
「まあそうだな」
スラのレベル上げなどしたところでどうせ戦力にはならないのだろうが。
『ピキー!』
ひとり気を張るスラをよそに俺は地下五階層への階段に足を下ろした。
◇ ◇ ◇
地下五階層。
幸か不幸かコボルトは俺を見ると一心不乱に逃げ出した。
「もうコボルトもマツイさんを怖がって襲ってきませんね」
「それならそれでいいさ」
『ピキー!』
だがどうやらスラは戦いたいらしくコボルトを追いかけようとする。
「こら待てスラ、お前ひとりじゃ返り討ちに合うのがオチだぞっ」
『ピキー!』
呼び止めるとスラは自分も戦えると言わんばかりに熱い視線で俺を見返してきた。
「駄目だ。もうちょっとレベルが上がって強くなったらな」
『ピキー』
納得したのかしてないのかスラは小さく返事をする。
「マツイさん。スラさんはマツイさんの役に立ちたいって思ってるんですよ」
ククリがそっと耳打ちしてきた。
「それはありがたいけどスラはまだ弱いだろ。コボルトに勝てるとは思えないぞ」
「それはそうですけど……」
ククリがスラを見る。
「スラさん、元気なくなっちゃいましたよ」
「うーん……わかったよ、どっかでスラのレベル上げをするよ」
「ふふ~ん、やっぱりマツイさんは優しいですね」
ククリはニヤニヤしながら俺から離れた。
地下五階層ではアイテムは二つしか手に入らなかったがにおい袋と防御力+6の青銅の鎧というそこそこいいアイテムをみつけることに成功する。
全裸だった俺は当然の如く青銅の鎧を着こむとにおい袋は使いやすいように一応首からぶら下げておいた。
アイテムを取りつくしもうこのフロアにも用はないので地下六階層へと向かう。
◇ ◇ ◇
地下六階層はバットが出てくるフロアだが多分にもれずバットも俺を恐れて俺から逃げるように部屋の中を飛び回る。
スラのレベル上げのために少しくらい相手をしてやろうと思っていたのだがバットは俺に近寄ってこようとはしなかった。
しばらく部屋の中を飛び回ってからバットは通路に去っていったのだが……、
『ピキー!』
俺の役に立ちたいのかスラはそんなバットを追いかけてひとり通路へと駆けていく。
「あっスラ、待てってばっ……」
今度は俺の言うことも聞かずにスラは通路に出るとバットが通り抜けていった石壁の小さく空いていた隙間に自分も入っていってしまった。
「やばっ、どうしよ」
スラを追いかけたいところだが石壁に開いた穴は小さすぎて俺にはとても通れそうにない。
「私が行きましょうか?」
とククリが申し出てくれる。
「ああ、悪い。スラを引き留めておいてくれ。俺もすぐ行くから」
バットは体も小さいし攻撃力も大したことはないがスラはそれ以上に弱いのだ。
もう既にバットに返り討ちに合っていてもおかしくはない。
最悪のシナリオを頭に浮かべつつ俺はスラたちに追いつこうと必死に通路を走った。
角を右に曲がること二回、
「マツイさん! こっちです!」
ククリが体から光を発し手を振っている。
その下ではスラがバットと戦っているが一方的にやられていた。
ふらふら状態のスラは今にも倒れそうだ。
俺はスラのもとまで駆けていくとスラに体当たりをかまそうとしていたバットを思いきり蹴り飛ばした。
壁にぶつかり、
『キー……!』
と小さく鳴くとバットはそのまま消滅していった。
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