第100話 スライムを仲間に
まだポチが寝ている中俺は早めの朝ご飯を済ますと庭に出た。朝日が目に入ってくる。
伸びをしながら石階段を下り写し鏡の門の前に立つと服を脱ぎ全裸になる。
「うーん、ふふっ……我ながらすごい体だなぁ」
ついこの間見た時とは別人のようなたくましい体つきに自然と笑みがこぼれる。
おそらく今の俺なら競技次第だがオリンピックを充分目指せるだろう。
今回のダンジョンに潜る目的はスライムを仲間にするだけだからすぐ戻ってこれる。
ポチのエサは帰ってきてからやればいいな、そう決めて俺は鏡に手をかざした。
『地下何階層からスタートしますか?』
「地下一階層」
『地下一階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
「よし、行くか」
◇ ◇ ◇
写し鏡の門を通り抜けると狭い空間に出る。
「ククリは……いないか」
俺は小さい通路をはいはいで進んで大きな通路に出た。
「おーい! ククリー!」
立ち上がり膝についた小石をはたき落としつつ通路中に響くように声を上げると、
「マツイさーん!」
まばゆい光を放つ光球がまっすぐ俺のもとへ飛んできた。
そして俺の目の前で止まった光の球。
「まぶしっ」
「あ、すいません。まぶしかったですか」
そう言うと光が消えククリの姿があらわになる。
「これで平気ですね」
「ああ。ククリ昨日はありがとうな、キマイラロードから逃がしてくれて。おかげで助かったよ」
「いえいえ、マツイさんが無事ならよかったです」
あの場面ではククリに帰還石を預けておいて正解だった。
俺はキマイラロードに眠らされてしまったからな。
「それにしてもマツイさん、今日いつもより早くないですか?」
「それなんだけど、快眠枕を使ったせいか目が冴えちゃって全然眠れなかったんだよ」
「あ~、快眠枕は普段の生活では使わないほうがいいですよ。生活リズムが狂っちゃいますから」
「うん、そうするつもりだ」
快眠枕も押し入れ行き決定だな。
「それでククリ、今回はお金とかが目的じゃなくてスライムを捕まえに来たんだけど」
「スライムですか? でも前にスライムは弱いから仲間にはしたくないって言ってませんでした?」
どうでもいいところで物覚えのいいククリ。
「ほら、姪っ子にお土産頼まれてるって言ったろ。あれ、訊いたらスライムがいいんだってさ」
「へ~、変わった子ですね~」
「そうなんだよ」
まったくその通りだ。最近の女子中学生は何を考えているのかわからない。
「じゃあスライムを捕まえたら帰るんですか?」
「そうだなぁ、ポチも待ってるしそうするかな」
「わかりました。じゃあ姪っ子さんのためにもポチさんのためにも早くスライムを仲間にしちゃいましょう」
「ああ、ありがとう」
もしかしたらスライムを外に持ち出すなんてと注意されるかもと思っていたがそんなことは全然なくククリはこころよく俺に協力してくれるようだった。
「ちょうどこの先の部屋でスライムが大量発生していたのでそこに行きましょうか」
「わかった」
ククリの案内で通路を先へ先へと進んでいくと何やら下敷きを手で持って鳴らした時のような音と鳥のさえずりに似た鳴き声が聞こえてきた。
ぽよんぽよんぽよん……。
『ピキー』
『ピキー』
突き当たりを右に曲がり――
「ほら、見てください。スライムが大量にいますよっ」
「おおっ! 本当だっ」
ククリの言う通り部屋の中にスライムがぎゅうぎゅう詰めになっている。
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