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3 小野寺麻里奈は異世界でもやっぱり残念な人だった ①

「まりんさん、そろそろ戻る時間です」

「ふ~。やっぱりコンビニというのはこういうものだよね。コーラもコンビニおにぎりもいっぱい買い込んだ満足したよ」

「それはよかったです」

「それにしても、異世界で時間制限付きの転移魔法をかけるとは考えたよね。これなら魔法が使えなくても自動的に戻れるよね。ヒロリンは最強だよ」




 あれから三日。


 どちらかといえば、あれからまだ三日しか経っていないのかと言った方がいいのかもしれない。


 多くの誤解と勘違いと噂に基づいて魔王軍幹部一行とされた麻里奈たちの来訪によって多くの悲喜劇が混じり合った大騒動に巻き込まれた城塞都市ダハシュールだったが、翌日には以前と変わらず、いや、なぜかより活気に満ちた場所となっていた。


 まず春香のハリセンによって破壊された城壁だが、博子の魔法により戦闘終了直後に修復された。


 その際彼女の指導より、この世界ではお目にかからなかった「コンビニ」なる店が現れた。


 もちろん、これは麻里奈に要求に応えたものだったのだが、「コンビニ」と名乗り、その店構えも「コンビニ」と言えなくもないものであったのだが、品ぞろえその他中身まではさすがに日本人が見慣れているものとは同じというわけにはいかず、かなり趣が異なるものになってしまったのだが、電気もなく文明レベルも違う、日本のコンビニで並ぶ定番商品が手に入らないなど様々な要因があり、これは致し方ないことと言えるだろう。


 だが、当然これに満足するはずのない麻里奈は不平たらたらでブツブツと文句を言っていたのだが、博子がなにやら耳打ちすると、突如上機嫌となり「また俺にだけによからぬことが起きるではないか」と恭平を震え上がらせた。


 さて、自分が行きたかったというそれだけのために、異世界に場違いな「コンビニ」を出現させた麻里奈だったが、現在宿舎としている逃げ出した貴族の邸宅の一室で不機嫌さ丸出しの表情で、元エセ文学少女ヒロリンこと立花博子相手にグチをこぼしている最中である。


「一体私のどこが悪かったというのよ。反省しろというならいくらでも反省するわよ」


 おそらく、この世界に来て一番困っている麻里奈をおもしろそうに眺めながら、元エセ文学少女は微妙な表現で宥めていた。


「まあどこが悪いといえば全部なのでしょうけど、とりあえず嫌われているわけではないのですから、よしとしたらどうですか」


「それはそうかもしれないけれども……」


 いつもとは違う歯切れの悪い麻里奈の返事の原因は、二階の窓からも見える館を取り囲む「彼女たち」の存在だった。


「私がこっちに来て一番よかったと思ったことがなにかわかる?ヒロリン」


「もちろんわかります。麻里奈教徒がいないことです」


「そうよ。まみたんを除けば私の追っかけはこっちにいないということよ。三日前まではたしかにいなかった。それがどうよ。どっから沸いて出てきたのよ。あの子たち」


「沸いて出たわけではなく、元から住んでいた人たちですよ。彼女たちは。それにしても、こっちの子の方が元の世界の子より情熱的ですよね」


「ヒロリン、もしかして楽しんでいない?私がこんなに悩んでいるというのに。ヒロリンの魔法でなんとかしてよ。そのための魔法じゃないの?」


「できなくはないですけれど、やっぱり人の好みまで弄るというのは、私の主義に反しますから遠慮したいです」


「まったく友達がいのないヒロリンだね。とにかく私は立派な女の子で、当然女の子は私の恋愛対象ではないことを、彼女たちにもう一度親切丁寧に説明してきてよ」


「それは今日だけでもう三回やりました。まりんさんがどうしてもと言うならもう一度行ってきますけれども、たぶん状況は変わらないと思います。私が思うに、彼女たちはきっと目覚めたのですよ。この世界に存在しなかった新しい愛の形に」


「うぎゃー」


「それにしても、この町の少女の大部分を集めてしまうというのはすごいですね。まりんさんの女子に対する吸引力は」


「そんな吸引力はいらないよ。恭平が女の子に好かれていれば、こんなことになっていなかったものを。あのバカはこういうことにも役に立たないの?」


「恭平君は、この前の戦闘での失態が尾を引いているみたいで、町に出た時に小さな子供にまでバカにされて石を投げられたと落ち込んでいました。現在布団をかぶって泣いています」


「まったく。こんなのが毎晩続いたら病気になるわよ。ヒロリン、今晩、彼女たちが襲ってくる前に魔王軍が攻めてくるようにしてよ」


「そういうことは言わない方がいいですよ。また面倒なことになりますから」


「いいのよ。どうせ私の思い通りになんかならないのだから。私の思い通りになるなら、彼女たちが私に迫るなんてことが起こるはずがないでしょう。まったく、これはもうバレンタインデーの悪夢の再来だよ」


「そうですか?あれは本当にいいイベントです。毎回チョコがいっぱい食べられますし」


「私がもらった大量のチョコを食べているだけのヒロリンはいいかもしれないけれども、私はちっとも楽しくないわよ。それよりも今晩どうやって彼女たちを追い返すか、ヒロリンもちゃんと考えてよ」


「わかりました。無駄だとは思いますけど、とりあえず話をしてきますから、散かしたゴミは片づけてください。それはこっちにあってはいけないもので、まみたんやハルピに見つかったら大変ですから」


「わかっているよ。だいじょうぶ。完璧な証拠隠滅をするから」


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