2 ヘタレ勇者は異世界でもやっぱりヘタレだった ⑧
「それはそれとして、そろそろ私も春香のパンツも見飽きた。私としては先生の水着が派手に燃えるところも見たかったけど、この世界のエロ騎士どもも、やはりおばさんのスクール水着には興味ないらしい」
「そうですね。ということで、そろそろ反撃を始めましょうか。サービスタイムもここで終了です」
「春香、ショータイムの時間だよ。ただし死なない程度に」
「死なない程度にね。了解した」
「防御魔法全展開」
博子がそう宣言した瞬間、騎士たちの魔術は突如春香にもまみにも届かなくなり、大混乱に陥る。
「どういうことか」
「風系魔法に対する防御魔法か。では、炎魔法を」
「炎魔法に切り替える。一斉詠唱準備」
「遅いよ」
その声とともに騎士たちの目の前に、大きなハリセンを持ったセーラー服姿のショートカートがよく似合うかわいい男の子と表現したほうがよさそうな少女が突如現れた。
もちろん、先ほどまで自分たちの魔法によってスカートがまくり上げられパンツを披露していたひとりである。
「魔法詠唱が間に合わない」
「くそ。剣で応戦しろ」
騎士たちは近接戦に切り替え刀に手を掛けたものの、このときにはすでに決着ついていたといってもよいだろう。
「だから遅いよ。セクハラおじさん。これがスカート捲りのお礼だよ。全然足りないけど、とりあえず乙女の怒りを受け取ってもらおうかな」
その言葉が終わらぬうちに、なにが起こったのかもわからぬまま騎士たちはハリセンによって全員がまとめて吹き飛ばされてしまっていた。
「はい。戦闘終了」
「はやっ」
「ところで今、春香は『乙女の怒り』って言わなかった?」
「乙女の怒りと聞こえました。それでいくとハルピが乙女になってしまいます」
「私たちの中では一番乙女に遠いのにね。ハハハ」
「ん?ヒロリンと先生も一緒に吹き飛ばされたい?」
「遠慮しておきます」
「右に同じです」
「とにかくこの程度ではスカート捲りの代償を支払わせるには全然足りない。残りは橘をお仕置きしてうさ晴らしをするか」
「さて、ハルピの八つ当たり要員も必要ですし、戦闘も終わったので意気地なしの恭平君も生きかえらせましょうか。恭平君は、まみたんのパンツを見られなくて死ぬほど悔しがるかもしれませんけど」
そう言って博子が指を鳴らすと、今までただ寝ていたかのように恭平は起き上がった。
もちろん、それまで何本も刺さっていた弓矢も抜け落ちている。
さすがに恥ずかしいパンツ一丁のままではあるが。
「くそっ。またひどい目に遭った」
その様子を見た市民たちは、目の前にいる敵が、どのような手段を使っても自分たちでは勝てるような相手ではないことを改めて理解した。
彼らにとっての悲報は続く。
それはまず小さな噂として流れ始め、やがて大きく広がっていった。
「城主をはじめ貴族たちが戦闘中にこっそり逃げ出したらしい」
「終わりだ。魔法騎士も倒され、城主も逃げた。皆殺しにされる」
よりどころをすべて失い、皆殺しも覚悟し震え上がる市民たちの前に進み出た、あか抜けないセーラー服という現世の住人にとっては恐ろしさのかけらもない魔王軍幹部が笑顔で宣言した。
「さて皆さん。これから皆さんは……」