オラが貴様にハイファンタジーを書かせてやるでよヒャッハー!!
ここまで書くのに1年かかったよ。読み専なめんな(笑)
ハイファンタジーを書きたい、でも書けない。
これを読んでくださる方はそういった方だと思います。
貴様………じゃなくて、あなたは具体的に、どう書けないのでしょうか?
まず私の質問に答えてください。
1、
あなたは、それなりに小説っぽい文章を書けていますか?
→《いいえ》の方は書けるようになってから出直してこい。
2、短編でも長編でもかまいません。あなたは自分の書いた物語を完結まで書ききった事はありますか?
→《いいえ》そもそも書けてねーんだよ。その根性の無さが問題なんだろうが。カエレ。
両方と答えられた“あなた”には教える事ができると思います。
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ハイファンタジーとは、現在と一切リンクしない物語、もしくは英雄譚となります。
今、日本で一番有名なハイファンタジーは『指輪物語』だと思います。ちなみにローファンタジーは『ハリー・ポッター』
……………指輪物語、小説で読んだ人はいますか?
読んだ方なら分かるでしょう。すなわち
【ハイファンタジーまじ意味わかんない!!!】
という真実に。
……………………………………
指輪物語は序章からいきなり
『これで万☆全☆ファンタジー世界“中つ国”のアバウト紹介〜』みたいな説明文が延々始まります。
……中つ国のゴドウィン川はホビット達(ハーフット族)にはブランディ・ワイン川と呼ばれ下流に人間の国ゴドウィンがあり王様の名前はエドウィンでゴドウィンって名前はスメアゴルンが名付けたの。スメアゴルンはアラウェン物語に出てくるアラゴルンの祖先で〜ピピンの手記によると……
みたいな文章がねちねちねちねちねちねちねちねち続きます。
しかも地名は同じ場所でも『人間語』『エルフ語』『ホビット語』で呼び方が違っちゃう。何代前の王様の名前にあやかって○○ゴルン、××ウェンみたいなやつが何匹もいる。ルパン、ルパンニ世、ルパン三世みたいなやつもいる(基本的に全員ルパンとしか表記されていないから、時系列が分からなくなる)
私は映画鑑賞前に読んだ時は序章でぶん投げました。
二回目、映画鑑賞後はキャラクターのイメージや名前が映画内補完できたので、カタカナ速見表ノートを作り、調べ調べ読みました。
Q、何がいいたいのか?
A、ここまでしないと、ハイファンタジーは、読めない!!!
なぜか?“地球”に暮らす私達には非日常であるのに対しハイファンタジー世界“中つ国”では常識だからです。
……………………………………
ファンタジーの世界感や常識は作者の数だけ存在します。
例えば………その世界では、騎馬にするのは馬ではなく、虫や鹿やウサギやヨッシーやチョコボかもしれません。
ワオ、ふぁんしーだね☆
でも、それが“当たり前”な世界だとしたら、それの異常性を現在世界の読者にどう説明すればいい?
ロー・ファンタジーなら
……………………………………
俺は馬車っぽい物を牽いている生物に絶句した。
「………あれ、なに?」
「なにって……“馬”でしょ?」
俺の知っている馬には、足は六本もない。
甲殻もないし、テカる羽根も長い触覚もない。やたらテラテラと黒光りする、ワゴン車サイズの巨大なそれは、地球でもお馴染みな生物に激似だった
「どう見ても巨大ゴキ■リじゃねーかぁぁぁぁ!!」
「ちょ、アキラ?!大きな声で叫ばないでよ馬が驚いちゃうでしょ!」
「こんなん“馬”じゃねぇぇぇぇ!!」
もうこの世界、嫌ぁぁ!!
』
……………………………………
みたいなノリで
【この異世界では、騎馬に■キブリじみた昆虫を使っています】
を挿入できます。
Q、では、ハイ・ファンタジーでは?
A-1、名前でファンタジー感を出す。
【異世界ラウムでは騎馬にユルジャ・カラという甲虫を使う】
視覚的にイメージがないが、甲虫っていうくらいだから、ナウ◎カの王蟲みたいなヴィジュアルかなー??でも良いでしょう(作者的にはゴキ■リだけど)
難点は、名前のゲシュタルト崩壊。
指輪物語がまさにこれで、ゴドウィンがガンダルフでサルマンがウィンウィン
アラウェンがアラゴルンとスメアゴルンがゴドウィンで〜……になります。
A-1対策、カッコ付き漢字ネームをつかう
【異世界の騎虫】
名前の意味を忘れても、漢字のニュアンスで意味は伝わり続けるからゲシュタルト崩壊予防になります。
ただ、やっぱりこれでもゴキ■リっぽさが具体的には伝わっていない。
さらにカッコ乱発になると、読者の読むペースが崩れダレてしまう可能性もあるので微調整が必要です。
イメージ投げっぱなしジャーマン&
片仮名ゲシュタルト崩壊&
カッコ乱発による惰性化。
に注意
A-2、文体を三人称いわゆる“神様視点”にして地の文章で説明を挿入する。
………………………………………
「アキラ、“馬”がみつかったわ」
「本当!?」
アキラは少女が捕まえてきた“馬”を歓声と共に迎えた。
異世界、ラウムにおける馬とは騎乗可能な甲虫、こちらの世界で言うゴキブリに似た生き物だ。
少女が今回捕まえてきた“馬”は甲虫の中でも特に上等とされる茶羽根種。
茶羽根種は名前の通り茶色い羽根をもつ甲虫で、その気になれば飛んでの移動も可能になる便利な“馬”だ。
「すごいよ、茶羽根種なんて」
「ふふ、ラッキーだったわ」
……………………………………
………みたいな感じでしょうか?
【こちらの世界でいう○○に似た】というやり口を使って説明を簡略しましたが、これを乱発するとWikipediaの切り貼りを読まされている感覚になり、ファンタジー台無し。
下手すると小説でなく『オラの異世界設定ガイド』になります。
さらに地の文を描くセンスが必要で、アクション要素や登場人物に感情移入して欲しい方にはは難易度が高めです。
A-3、学校の歴史の授業シーンなどを冒頭に書き、授業内容として世界感を説明する。
【キノの旅】の作者が書いた別作品【アリソン】でやっていた手法です。
前提として、学校が開かれるくらいには平和な時代であること。
地理や歴史などの情報が正しく伝わる時代設定、技術力や文化レベルがある社会設定でないと難しいことです。
実際、キリスト教が幅を効かせていた時代なんかを例にすると、
・半ば判明してきていた世界地図が異端認定→宗教的に都合がいいトンデモ地図に書き換えられる。
・地動説や進化論を言う学者達を片っ端から弾圧→破門→処刑。
・神様アゲー神官アゲーのためにサゲー対象……魔女や悪魔、串刺し大公など【わるもの】を捏造、悪い事が起きたらこいつが原因でつ。
・地の果ては地獄、異教徒は悪魔崇拝者だから殺せ。ガキなら改宗させて家畜か奴隷にでもしろよ。
・魔女を拷問して口を割らせた薬草知識で薬草リキュール作ったった。
……みたいなノリで、情報を遣いたい放題に改変、捏造、禁止、漏洩&秘匿しまくったようです。
そもそも学校という施設自体が近代社会の象徴でもありますから、ロー・ファンタジー臭い。
しかも、ぶっそうな時代設定だと、地形情報=軍事侵略の計画表になりがち。インターネットみたいに高速暴露装置がない世界なら、まず機密になるかと。
ついでに魔物が出る設定の世界とかだと、地図=人間が侵入可能圏のみ表記とかザラです。
【アリソン】の世界では飛行機がある軍事学校、主人公は飛行機乗りに選ばれたエリートという立場。地理情報は飛行機から丸見えという設定でした。
ハイ・ファンタジーらしい野蛮な時代設定において、あまりに細かすぎ、正格すぎる地図情報や歴史を提示できると怪しい(翼竜とかががいる設定なら可能)。
あまりに正確な情報は、トリップ主人公を洗脳するべく、トンデモ知識ばかり与えてくる【ゆうしゃさま、どうかお助けください姫】みたいなノリになっちゃう危険性があります。
……………………………………
異世界住民で異世界の常識を知る人物が主人公のハイ・ファンタジー。
対してロー・ファンタジーの主人公は現在世界の日本人である場合が多い。『角の生えた狂暴なウサギ』
『狼もどき』
『化学の法則をガン無視した現象』
『スチーム・パンク』
日本人である彼らは現実世界と異世界の違い―――モンスター、魔族、魔法、エルフ等、――を日本や地球の生物や化学現象、歴史や“常識”と比較したり参考にしたりしながら、分かりやすく丁寧に説明できる。
異世界トリッパーとは、チートやテンプレートの押し付けだけではなく、異世界と現世界のギャップを埋めてくれる【説明役】でもあるのです。
しかもローファンタジーの場合、無責任で雑な主人公の主観や発言が“伏線”として生きる場合があります。
…………
騎虫“馬”はゴキ■リに激似
↓
・異世界トリッパーには猛烈に巨大なゴキブ■にしか見えない
・“馬”は■キブリに似た特性を持っていても、おかしくない
・“馬”は異世界人(現地人)にとって大切な移動手段だから、嫌悪感なんて皆無。むしろ信頼や愛着を抱いて飼育している可能性が高い
↓
・敵にまわった別の異世界人に馬(巨大ゴキ■リ)をけしかけ、隙をつくる
・“馬”に平気で触るやつは異世界人
(ただし、転移前ペットとしてゴ■ブリを飼っていた趣味人や、長年たった転生者は慣れている可能性がある)
・“馬”は空を飛んだり、頭もがれても一ヶ月くらい生きていたり、雑食で金属や毒だって食って生き延びられたりする可能性がある(ゴ■ブリの特性をそなえている可能性がある)
……………………………………
おかしくない、可能性が高いなど、比較に使った物の知識や常識を逆手に取ったフラグを作れます。
これがハイファンタジーなら、登場人物達は全員ゴキの特性も知っている可能性が高く、嫌悪感もないはずだから伏線には使えません。
ハイファンタジーは世界感の“設定”を具体的に説明しにくい。
だから“設定”を利用した意外性のある展開もうまく仕込みにくいのです。≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
とりあえず強引に話を戻し、指輪物語のネタバレを書かせていただきます。
ここはファンタジー世界【中津国】
この世界に暮らす平凡な青年フロド君は、今は亡き父の遺品から一つの指輪を見つけて装備してしまいます。
実は、その指輪は呪われしチート・アイテム【邪神の指輪】だったのです!!
指輪の効果によりフロド君はチート能力を授かります。
しかし、オプションの呪われ効果
【チート能力への誘惑】
【悪人ホイホイ】
【悪への目覚め】
【ヘイトの集中】
で、チート能力が欲しい悪人や権力者、邪悪なモンスター、本来の持ち主である【邪神】の手下までが、フロド君の暮らす村にずんどこ集まって来てしまいます。
しかも友人達もつぎつぎ悪に目覚め、フロド君の指輪を『ころしても奪い取りたい』という欲望を抱くようになってしまいます。こんな指輪いらない!!
【この装備は呪われているから外せません】
かくしてフロド君は指輪を外す手段を探すため、旅に出るのでした〜。
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………一応、間違ってないでしょう?
こう書かれると、わりとありがちなラノベに聞こえません?
ラノベ展開なら、旅の途中で、指輪が精霊モードで人型に変化。
銀髪、赤目、ゴスロリで○○なのじゃ!!口調の魔性の指輪ちゃんとフロド君は
「呪い解除して」
「仕様なので無理じゃ」
「仕様って何だよおおお!!」
とか言い合いながらイチャイチャ旅を続け、
向かってくる悪人をチートでバッタバッタとなぎ倒し、ツンデレやエロフ、くっ殺女騎士やハーフ魔族の美女とフラグを建てては指輪ちゃんが嫉妬する。
最後は指輪ちゃんの作りの親でもある邪神様のまえで【娘さんを僕にくださいっ!!】をやって
指輪ちゃんはチート・アイテムからチート神に進化。呪いは浄化されチートだけ残ったよ。
フロド君は指輪ちゃんと共にハーレム新世界の神になったよ。
とかで終わりそう。
元の指輪物語どこいった?
ああ、あいつなら田舎で畑でも耕しているだろうぜ。
ひどいパロディですが、分類上は現実世界に無関係なのでハイ・ファンタジーになるかと。
……こんなんでもハイファンタジーなんだぜ!!!
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ハイファンタジーを難しくするのは世界感と設定の練り込み具合によります。
例えば、フロド君は人間ではなく小人目ホビット種という亜人。
ホビットは善良で、争いが嫌いで、欲望らしい欲望がまるで無いのが特徴。
『権力?それよりワイン飲みながらタバコ吸ってソファーでゴロゴロしたいでござる』って民族。
そんな究極どノンキ平和主義者だからフロドは指輪のオーナーでありながら邪悪に侵されなかった。
ホビット特有の無欲さや素直さ、底抜けの善性と、身体的な脆弱さがあったから訳ありな仲間達――英雄の末裔アラゴルン、準賢者ガンダルフ、現王に嫌われている王兄ボロミア、浮き世離れしまくったエルフのレゴラス、故郷の復興を願うドワーフのギムリ等々、指輪に執着するゴラム――を受け入れた。
ホビットの説明や同行者のエピソードなけりゃ、あんな分厚くならないよ。
………………………………
ハイファンタジーを気軽に書くためには、ズバリ【重要な登場人物を少なくする(登場はしても良い)】のが一手です。
どう減らせと?
これが私の提案になります。
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提案1、ハイファンタジーではなく恋愛ものを目指そう!!
ハイファンタジーというと世界感からの作り込みーとか、人間関係をーとか、やたら重要人物がたくさん必要だったり複雑にしないといけない気がします。
恋愛ならボーイ・ミーツ・ガール。二人でいいよ!!
身分の高すぎる人を好きになった主人公が成り上がるべく頑張る。
婚約者に振られた主人公が失恋ブラリ旅に出て真実の愛に出会う。
愛し合う恋人達が悪いやつによって引き裂かれ、連れさられたから助けに行く。
平凡な主人公が悪い奴らに追われるヒロインを助けたら、ヒロインのトラブルに巻き込まれる。
など、恋愛という名の二人のトラブルを芯に、ファンタジーで肉付けする感じで挑戦するのをオススメします。
…………
例
○舞踏会で恋におちた二人
↓
●互いの実家は対立している(トラブル)。
↓
○それでもラブラブな二人
↓
●対立は殺しあいに発展、ジュリエットの兄とロミオの親友が殺される。(トラブル巨大化)
↓
○二人は愛と家族の板挟み〜(トラブルに巻き込まれる)
みたいな感じ。
●をもっとファンタジーな理由………勇者と魔王の血脈にして当主の座が巡って来てしまった展開にしてもいい。
●男→勇者に選ばれて、お姫様と結婚しなくちゃいけなくなってもいい。
●女が獣人で差別対象
などなど恋愛主体にしちゃえば、恋人たちからみた戦争、二人を引き裂く差別………みたいなエピソードを挟みつつ、ファンタジー要素である●トラブルの解決を投げ出したまま二人の関係を決着つけてエンド。
いわゆる『恋愛にシフトするエンド』で誤魔化せます。
――――――――――――
先ほどパロディ指輪物語だと
・平凡にいきるフロド君はある日、悪のヒロイン指輪たんに目をつけられ、呪いで強制的に恋人状態にされる。
・キュートな指輪たんは小悪魔パワーで権力者やイケメンをどんどん誘惑し、逆ハーレム作成。フロド君は逆ハー共に嫉妬の嵐で殺されかける。
・「別れよう」「嫌じゃ」
フロド君は困った逆ハー・ヤンデレな指輪たんと別れる手段を探す旅に出る。
【困った逆ハー婚約者に粘着される主人公が、別れるために頑張る話】
というライトな恋愛コメディ筋書きになる感じ。
………………………………
そもそも、ハイ・ファンタジーを手っ取り早く盛り上げるには、戦いか愛をピックアップするしかありません。
ロー・ファンタジーは【旅】の楽しさ、異文化コミュニケーション、コミカルさ、奇抜さやギャップ、軽い謎解きなどでも可能ですが、ハイではちょっと難しい。
さらにもう一つのハイ要素――英雄譚や戦争をテーマにすると、物語の始め時や終着点が分からなくなりがちです。これらを愛を主題にする事で、手軽にエピソードを切り取れる形にできます。
要は男女が出会えばいいのです。
………………
例文
私の前に現れたのは、全裸の大男だった。
「その、………ここは何処なのか教えてくれないか?あと、すまんが服を一着ゆずって欲しい」
絶句。
もう絶句。私も私のお付きのメイド達も絶句。
だって全裸だもん。
股間も、鍛えぬかれた大胸筋に乗る意外なほど小さな乳首もモロリだもん。幸い胸毛やらギャランドゥであんまり見えないけど、全裸なのは丸分かりだ。なんかブラブラしてる。
ちなみに全裸男は手を使ってデリケートゾーンを隠そうとしていない。なにせ男の手には重そうな剣でふさがっている。
武装した筋肉全裸な男。
変質者だ
マジもんの変質者だ。
女の子だけでピクニックになんて来るんじゃあなかった。
せめてメイドたちだけでも助けてあげなきゃ。
「………し、失礼ですが、あなた様はどなた?」絞り出した声はかすれていた。
何で敬語つかってんの私〜!!
こいつがガチ変態だったら喜んじゃうやん!!私が高貴な身分だってわかっちゃうじゃん!!下手に出ちゃったら護衛を連れていないのがバレちゃうじゃん!!嫌あああ!!
その全てに気づいたらしい。
変態は、剣を足元に置くと、世にも優美なお辞儀をしてみせた。
「おお、こちらこそ高貴な方に無礼な振る舞いをしたことをお許しください」
え?この全裸男、マジ何者?
「私はオデュッセイアと言うものです」
「へぁ!?」
これが私、ナウシカ姫と英雄と吟われる男、オデュッセイアの出会いだった。
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だいぶギャグに改変していますが、私が幼少期に呼んだ『オデュッセイア』はこんな始まり方で物語を切り取っていました。
『ヘラクレス』もまた、英雄譚を長々描くのではなく、全裸で水遊びをしていた精霊(乙女型)の前に、完全武装したヘラクレスが現れパニックに。
和解後
『え!?あなたヘラクレスなの!?』
『今、私たち精霊の間でも話題になってるのよぉ〜』
『私ファンなのっ!!』
「フフ、そうかい?なら、驚かしたお詫びに………」
と彼女たちに自分の身の上話をし始める形で切り取っていました。
最初から英雄譚を描かなくとも、男女の出会いやハプニングをきっかけに、恋愛話っぽいのを始め、スパイスのようにハイ・ファンタジー説明や戦争状況を聞かせる作品から書き始めるのはいかがでしょうか?
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提案2、ヒロインを記憶喪失キャラにする。
やっぱりファンタジーらしい、複雑な設定をガッツリ入れたい
そんな方は、思いきってヒロイン(の一人)を記憶喪失にしちゃいましょう。
読者と視点を共有しがちな主人公ではなくヒロインを記憶喪失にする事がコツ。
何もわからないヒロインは、異世界の疑問点や常識を質問する権利が与えられます。…………………
『それ、なに?』
『……ググリだよ、食い物』
ググリは指の第一間接くらいの大きさの小さな果実で、森ではザラに採れる。こんなサイズでも栄養は豊富だから、貧乏な村ではググリで冬を乗り越える事だって少なくなかった。
『へぇ〜……』
記憶が無いらしい少女は、ググリの煮える匂いを不思議そうに嗅いでいる。あまりいい匂いでは無いが、ググリを食べ慣れた貧乏人なら反射的に唾がわく匂いだ。
――多分、この少女はググリなんか食べなくてもいい身分の人間だ。
俺はそう考えながら、そっと唾をのみ飲んだ。
『なんかドングリっぽいね』
『……なんだそれ?』
『私にも、よくわかんない』
この女、まじ何者だよ。
…………………
みたいな感じ。
記憶喪失ヒロインは現在知識なメタ発言しても、あまりファンタジー感を壊さない特性があります。
というのも一人称視点のファンタジーとかでは、主人公の生い立ちや性格なんかも完璧にネタバレがちなのに対し、出会うヒロインちゃんの描写なんかは、雑だったり謎だったりするからです。
目の前に現れたヒロインがどんな人生を送ってきた、どんな性格の人か、分からない。
ある意味、《他人》って存在は、究極の理解不能なファンタジー存在でもあります。
そんな他人とファンタジーの体現者であるヒロインちゃんがメタ発言をしても、『なぜその知識を知っているの?』とツッコミ入れる理由がないのです。
ヒロインは謎の存在で、読者にだけ理解できて、主人公は混乱して、
【自分でも分からないの】発言で追及を流してしまう。
もしかしたらヒロインは“預言者”や“神がかり状態の巫女”みたいな職業かもしれない。
そんな職業なら、知らないのに知っている事はメタ要素ではなく、ファンタジー要素です。ステータスです。
さすがに記憶が戻ったら不思議キャラ設定や『分からない』のごり押しは無理かもですが…………ヒロインの正体が異世界の精霊、超古代文明に作られたホムンクルス、新たな女神、次元の魔女、破滅の預言者、みたいな物語や世界の根幹にかかわるSF存在、という逃げ方もいいでしょう。
ヒロインは何者なのか?
竜王や魔王を倒す手段を探すドラゴン・クエストならぬ少女の正体を探す、なんちゃってヒロイン・クエストです。
SFが嫌なら、あえてヒロインの正体がわかったものの、記憶は戻らないまま物語をいったん終えたりするのも一手。
…………………
ヒロインの正体は亡国の姫っぽいけど、彼女の記憶はいまだに戻っていないようだ。
でも、それでもいい。
「何だかんだで、お前の事は気に入ってるんだよ………俺はさ」
「にゅ?なんか言った?」
「何でもねぇよ」
俺たちの歩く道は明るく照らされていた。
……………………
とか言ってはぐらかせば完了だよ!!!
やったねタエちゃん!!
ついでに言うと片方を記憶喪失だったり世間知らずにしたら
【知らないヒロイン】
【熟知している主人公】
の対比による世界感のすり合わせもできます。
ローファンタジー
【何も知らないトリッパー】
【地元民なヒロイン】
の言わば逆バージョンです。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
提案3、連作短編にする。
ローファンタジー、ハイファンタジーをちゃんぽんにしちゃいましょう。
まず異世界トリッパーの作品を一つ書く。
↓
異世界に【ラウム】みたいな名前をつける
↓
【地球】あるいは【日本】とラウムを対比しまくり、世界観を説明する
↓
【ラウム・サーガ】みたいなシリーズ名をつけて、現地人が主人公の作品を書く
同じ世界観なら、説明を雑にしてもいい。
何なら短編をまとめて長編に焼き直し、ハイファンタジーに投稿してもいいでしょう。
……………………
これはローだ!!ハイ・ファンタジーじゃない!!と突っ込む読者も出るかもしれませんが、
主人公は現地人で、旅の仲間が推定トリッパー。
あるいは100年前に世界を救った伝説の賢者がたぶん異世界トリッパーでした、くらいの設定で騒ぐ人は読者ではなく単なる変態です。
真面目に対応すると喜ぶだけなので注意しましょう。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
おまけ☆
読者に媚びよう、ファンタジーを読みやすくするコツ。
最後に、長編ファンタジーを書きたい方に読者のハートを掴みやすくなるポイントを書きます。ずばり
…………
・登場人物には、分かりやすい名前をつけましょう。
・それなりに長編なら、できるだけ一章ごとに登場人物一覧表と登場ページを書いた設定コーナーを投稿しましょう。
・章や話には見分けがつく表記をしよう
…………
です。
なろう読者の場合、複数小説を100冊同時進行で読んでいたりします。
そんなチャンポン読みすると登場人物のキャラクターが別作家の似た人物や似た名前のキャラクターとごっちゃ混ぜになっている場合が多い。
「え?このキャラ誰だっけ?」
と、一から読み返したり、読み返しに疲れて読むのを止めたりします(実体験)
なので、他作品のキャラクターに混ざらないような印象的な名前をつけてあげましょう。別に覚えにくい妙ちきりんな名前であれ、とは言いません。
例えば『アーサー』君
だけだと忘れそうですが
『弱虫アーサー』君、
『小児性愛者のアーサー』君
など、キャラ設定した上で名前を表記したりエピソードに由来した“二つ名”をつけると印象に残りやすくなります。
あとは重要人物に馴染みのある名前をつけちゃうのもオススメ。
『騎士オニギリ』
『魔法使いチロル』
『剣士プリッツ』
モブキャラにまで使うと混ざってしまいますが、ファンタジー感が壊れない程度に現実世界にある物の名前をつけると記憶に残りやすいです。
この際、オススメしないのは
著作権にひっかかる名前
そして色や水地火風にちなんだ二つ名。
【赤熱のアーサー】
マンガならパッと見で区別がつきますが、文字ではちょっと無理があります。 更に、みんな考える事は同じなので、虹色キャラ・ハーレム作品って多いし、キャラクターの性格も似てきて、まぎらわしい。
類似キャラを利用した説明省略とかはありですが、それなりに長編作品だったりキャラに愛着を持って欲しいストーリーには止めときましょう。
あと、陰謀や推理要素があり、登場人物がずんどこ出てくる作品……8人以上なら思いきってモブでも登場人物一覧を作ってあげると喜ばれるかもしれません。
……………………………………
例題クエスト×
謎の石化を解き明かせ
主人公が訪れた街には、人々が一夜にして体が石化してしまう現象が発生していた。
一般的な石化は呪いによるものだが、依頼人“呪術師ババロア”によると、この街の石化は呪いによるものではないらしい。
「もしかしたら新種の病かもしれぬ……そうなると街は封鎖され、中にいる人々は冒険者含め全員殺されるじゃろうて」
街に入ってしまった主人公は、もう戻れないのだ。
主人公は石化と死の恐怖に脅かされながらも、石化被害者の情報を聞き込み、その原因を探すのだった………
というエピソードがあるとして、今回の答えは
……………………
【一般的な石化は魔物であるコカトリスやバシリスクによる“付与呪い”。
だがこの街の石化は珍種のコカトリス“ひよコカトリス”通称“ひよトリス”が原因だった!!】ことにします。
ひよトリスは10年ほど前、とある離れ小島で見つかったバシリスクの一種で、コカトリスやバシリスクの解呪と違い、その“付与呪い”は独特。
死ぬまでの時間は長いが石化速度はかなり早いため、気づいたときには全身が石化してしまい、治療が間に合わない事が多く、しかも解呪するには、ひよトリスから採った血が必要不可欠という危険な魔物だ。
だが、一番危険だとされている点は、ひよトリス自体はどうしようもないレベルで弱い魔物だという点だ。
ひよトリスは飛べない。
動きはどんくさく、成長してもひよこサイズしかないため、実は捕獲もたやすい。
小さくて弱くてフワモコ、よちよち歩きのひよトリスは貴族の愛玩魔物として、
そして愛玩魔物に見せかけた暗殺用魔物として悪名を馳せており、ひよトリスを国内に持ち込むことは国内の要人の暗殺を意味していた。
……………
石化の原因は珍種のモンスター
↓
珍種のモンスターは暗殺用のもので、誰かがモンスターを街中に持ち込んだようだ。
↓
誰が持ち込んだ?
誰を狙っている?
(もしかしたら、今回の登場人物に容疑者と狙われている人物が………)
いざ容疑者を追及する時に
読者『え?犯人こいつ?こんなキャラいたっけ?』
読み返し初めてしまう展開になります。
……………………
こんな時に大切なのは【章の区切りを明確にすること】
作者によっては『エピソード1』『12話』『147』『火よトリスの戦い』など、具体的なタイトルや通し番号を振ったりしますが、『・』という記号で統一してしまう人もすくなくありません。
読者からすれば『・』表記されちゃうと読み返すのが検討がつけにくく、もう良いや!!と読む事自体を諦めがちです。
完結作品ならともかく、連載作品で更新に手間取ってしまうと、読者がエピソードの内容を忘れてしまいますから。
とりあえず、沢山の作品の中でも記憶に残る努力をする事。
忘れてもすぐ思い出せる用意をする事がオススメです。
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ハイファンタジーは今、人気ジャンルでありながらいまいち盛り上がらないジャンルと化して見えます。俺ツエエエもしにくいし、世界説明がなんか似た感じじ。内容も、なんかだらしなく続く長編ばっかで読む気になりにくい、
ハイファンタジー作品を書いてランキングに風穴をあける方が出るのを期待しています。