表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

Ep7

この高校の図書館に行くのは初めてで、正直中に入った時は驚きで思わず歩みを止めてしまっていた。

何しろ広いのだ。

何万冊もあるんじゃないかというぐらいの本が棚に並んでおり、読書のための机もかなりの数用意されている。


俺はとりあえず蔵書検索のできるパソコンに向かい、アウェイク・コアについて書かれている本を探すことにした。

検索の結果、アウェイク・コアに関する、歴史、汎用性、オリジナリティなど、様々な事柄に対する本があることが分かったが、俺はその中から「不適合者」について書かれた本を探し当て、その本があるという場所へと向かった。


「H7……H7は……この辺か」

図書館が広すぎて探すのに時間がかかったが、俺はようやく目当ての本を見つけることに成功した。

できるだけ他の生徒に見られないように端っこの席に座ると、本を開く。

 

――『アウェイク・コアに不適合者が現れる可能性……8%』

俺は本の最初のページから大打撃を受ける。

『おいおい、8%ってなんだよ……低すぎね? ってか一卵性双生児の片方はめちゃくちゃ使いこなせてるのに、もう片方は不適合って何? あり得るの?』と心の中で叫び、その運のなさが他のところで活かされているようにと願う。

 

――『アウェイク・コア適合者が能力を発現できない事例について』

「おぉ? このページは結構興味深いな……」

そう思い、続きを読んでみる。


――『アウェイク・コアはその人自身の脳波や感情を読み取るため、他者に過度な依存をしている場合は、正常に使えないことがある……』


その一節を読んで、少し考える。

確かに俺は昔から何でもできる光司のことを追いかけてきたような面もあるが、それほど過剰なものだったのだろうか。

色々思考を巡らせるが、自分ではよく分からない。

その後、その本を一通り読んだが、分かったことはそれぐらいだった。


「はぁ、どうすりゃいんだか……。ん?」

そこで、パソコンの並びから少し離れたところにある、不自然なドアに気が付く。

何かの入り口に見えるが、図書館から繋がっている場所など想像もできない。

近くに行ってよく見てみると、なんと『ランキング上位者専用ルーム』という趣旨の警告板が置いてあった。

中には兄貴の名前が書かれている部屋もある。

 

そこで、無意識にコンマ五秒シンキングが始まる。

自分でも分からないが、このモードになると、思考がいつもの数倍のペースで動く。

 

図書館から通じている場所、それはおそらく書庫か何かであろう。

そして、ランキング上位者しか入れないという専用の個室。

重要な情報が隠されていることは確かだ。

それにもう一つ、兄貴がもともと学年一位だったという事実。

ここから推理するに、学年一位の特権を得た兄貴はこの専用ルームをゲットし、そこに何か秘密を……。


っ! 

もしかして昨日のあのカード! 

この部屋に入るためのカードなんじゃないか!?

だとしたらどうする? 

今入るのか? 

でも、今の俺って学年一位じゃないんだよな。

部屋はまだ残っているようだが、このカードが使えたとして、今更上位者の部屋に入るのは不自然に思えるかもしれない。


そこで得意のシンキングタイムが終わり、意識が現実のものへと戻る。

今分かったのは兄貴の殺された理由に繋がる何かがこの部屋の中にあるかもしれないということだ。

そしてこの部屋に入るには学年一位になるか、侵入するかしかない。


「これは大変だぜ」

図書館を出て、帰路にあった俺は一人天を見上げて、空を仰いだ。



「なあ柚香、俺って誰かに依存してるように見えるか?」

「誰かに依存……ですか? 別にそんなことないと思いますけど。でも昔から積極的なほうではなかったですよねー」

柚香が大雑把に答える。

まあ、最初から納得のいく答えが返ってくるとは期待してないけど。

この間の一件もあって、今俺と柚香との間には若干の壁があるような感じがして気まずいのだ。


早く機嫌を直してもらわないとな……。


ちなみに只今の時刻は午後十時を過ぎたところ。

俺が図書館から帰って来ると、昨日に引き続き柚香が俺の部屋のベッドでゴロゴロしていた。


――てか本当にコイツはどこから侵入してくるんだろうか、今度防犯カメラでも買ってこようかな……。


それは置いといて、客人が来てるのに何もしないのはどうかと思ったので、俺は得意料理のチャーハンを二人前作って、『一緒に食おうぜ、そんな変な味はしないはずだから』と控えめに言う。

「ありがとうございます、では早速」

と柚香は軽く会釈してからものの五分でチャーハンを完食した、それも二人前……。

俺は仕方ないのでコンビニで安めの弁当を買って寂しい食事をとり、この状況に至っているというわけだ。


今日図書館で調べた『アウェイク・コアの不適合者』についての意見を柚香に聞きたかったけど、あんまり本人は機嫌が良くないようなのでそれ以上は何も言わなかった。

 

『他者に過度な依存』――――この言葉がどうにも俺の中で引っかかっていた。

俺がアウェイク・コアを発動できない理由がもしそれなら、今までの俺の人生は何だったのだろう。

自慢になる話でもないけれど、昔から周りの空気を尊重して行動するタイプだったと自分でも思う。

他者から見たら他人任せのように見えるかも知れないが、それは俺が望んでした事であって紛れも無い自分の意志がそこにあるのだと思っていた。

でも知らず知らずのうちに、横にいた完璧な兄貴の存在を頼ってしまっていたのかも知れないな……。


「あのさ柚香、俺たち…………ってあれ?」

ふと思いついたことを質問しようと思って柚香のほうを見ると、既に微かな寝息が聞こえるだけだった。

大人しくしてるとやっぱり可愛いよなー本当に、こんな美人が日本刀で戦ってる姿なんて想像すらつかないな。


「じゃ、ゆっくり休めよ」

そう言って俺は布団をかけてやり、電気を消してなごり惜しむようにドアを閉めた。



――翌日。

少し遅めに起きると柚香の姿はもう無かった。

直接学校に出かけたのだろうか、俺も早く支度しないとな。

キッチンに行って朝の弁当を作る準備をしていると、台の隅っこにメモを見つけた。

なになに……


『昨日のチャーハン美味しかったです。ごちそうさまでした』

なんだあいつ、一丁前に気なんか使っちゃって。

おかげでちょっと嬉しい気分になったじゃんかよ、照れるなー。

『でも正直具材とお米のバランスをもっと考えたほうがいいです』

メモの裏にはちゃんとクレームが書かれていた。

このくらいがアイツらしいってことなのかな、トホホ……。


さてそろそろ急がないと遅刻してしまう時間だ。

俺は弁当、洗濯物をそこそこにして家を飛び出た。



「おはよう、こうじくん!」

「ああ雪乃か、おはよ」

学校につくと、校門のところで雪乃に出会った。

朝から学年一? の美少女に挨拶されるなんて、兄貴も贅沢なものだ。

少し話をしていきたいところだが、今日は明確な目標があったので誠に遺憾ながらその場を通り過ぎることにした。

昨日から一晩考えてなんとなく見えてきた答えがあったのだ。

そう、アウェイク・コアの発動以前にポイントを貯めなければ兄貴の死の謎にも近づけない。


実践を積んで、その中でアウェイク・コア発動のヒントを探していこう。

そのためにはまず対戦相手を見つけないとな……。

この日は朝から対戦相手を探すことにしていた。

近いうちにポイントを稼ぎたいと思っている奴に声をかけまくったり、柚香の紹介やらなにやらで、結局二人の一年男子が戦ってくれることになった。


コロッセオも空いてたしちょうど良かったな。

と言っても、相変わらずアウェイク・コアには頼らずにお得意の武術で戦うスタイルなので不安もあるけど。

 

放課後――対戦に意識が集中していて授業を全く聞いていなかったが、あとで柚香に教えてもらえばなんとかなるだろう。

やっぱり持つべきものは(優秀な)幼馴染(かのじょ)だよな! 

ちなみに今日は用事があるらしく、授業が終わった後すぐに帰ってしまった。

 

気がつくと一戦目開始まであと五分を切っていた。

急に決まったせいかギャラリーもまばらだし、これくらいが丁度いいのかも知れない。

柚香もいないしあんま緊張しなくてもよさそうだな。


さて問題はどうやってアウェイク・コアを発動せずに勝つか、発動出来ないのを隠すかにかかっている。


そうこう考えているうちに一戦目の開始の合図がコロッセオに響いた。

 

――コロシアム。レディーファイト。

 

……だから、このアナウンサーの棒読みどうにかならないの?

 

一戦目の相手は一年A組の平塚(ひらつか)(まなぶ)、かなり細身の高身長メガネで見た目はザ・草食系男子といったところか。

バトルフィールドは『密林』に設定されたので、俺は試合開始直後に鬱蒼と生い茂る木々に身を隠し、相手の様子を伺った。

平塚はこちらの姿を見失い、辺りをキョロキョロ見回しているが中々見つからない。

それもそのはず、俺はツタを登って木の上で待ち構えているからだ。


そして平塚が背後を見せた瞬間、木からの空中飛び蹴りを背中に食らわせ、バランスを崩して倒れたところを一気にパンチの連打でたたみかける……。

相手はアウェイク・コアも発動できずに十発目のパンチで降参した。

これにて一戦目は無事終了。


続いて二戦目は同じく一年A組の相葉(あいば)皆人(みなと)と『砂漠』での対戦だった。

さっきの平塚よりもランキングでは上らしいので少し警戒して立ち回りすることにしたが、それがかえって逆効果になってしまった。


試合開始直後はこちらから動かなかったので、相手はその隙を見逃さなかったのだ。


「アウェイク・コア 展開!」

次の瞬間、相葉はものすごいスピードで俺との距離を縮めてきた。

「く……ッ!?」

気付いた時には、既に綺麗な形の右ボディーを食らっている瞬間だった。

俺は痛みでバランスを崩すも、バックステップでなんとか追撃を躱す。

地面が柔らかく、踏み込みの推進力が減少していたのが助かった。

 

相葉が服についた砂を払う。

こいつの能力は一定時間加速ってとこか。

確かに体育の時間でやたら足が速いやつが居た気がしたけど……、アウェイク・コアの能力って武器の具現化の他にも身体能力的特徴のブーストにもなるんだよな……。


「感心してる場合じゃないぜ! さあどんどんいこう、はぁぁぁぁああっっ!」

立て続けに加速攻撃を仕掛ける相葉に防戦一方になってしまう。

単純にスピードの差がある上に、『砂漠』ステージ特有の砂によって足を取られてバランスを崩しやすい。

どうやら相葉はさっきの反省を生かしたのか砂が沈み込む前に次の足を踏み出しているようで、中々スピードも落ちない。

加えてこの暑さが体力を徐々に消耗させてくる。

このペースじゃアウェイク・コアを使ってない俺が先にバテそうだし、持久戦にも持ち込めやしない……、くそ、どうする?


「次で決めさせてもらうぜ!うぉぉおお!」

相葉が高らかに勝利宣言をして超速度で突っ込んでくる。

これをまともに食らえばもう持たないか……、どうすりゃいいんだ!


その時、俺の脳内情報処理速度が急上昇した。

ピンチの時に発動する俺のコンマ五秒シンキング! 

そしてその刹那、俺の体は最後の力を振り絞って相葉が向かってくる方向へ疾走した。

 

カウンターだ。

今やつの体力を削りきるには重い一撃、つまりやつの加速さえも利用する必要がある。

そしてこっちは最初からカウンター狙いで一直線に突っ込む!

今までスピードに圧倒されて防御にまわっていた分、相葉にとって俺の加速は想定外なはず……!


「なっっ!?」

やはり一瞬怯んで反応が遅れた。

後はこの奇策にハメた奴とハメられた奴の拳の届く速さの違いで……。

 

しばらく息切れしていて前すら見えなかったが、顔を上げると『winner』の文字が浮かんでいて、俺は思わず喜びの叫びをあげた。


「ふぅ……っ!」

二戦が終わり、俺は家に帰ろうとしていた……が、歩く帰り道の少し先に金髪の少女が歩いている。


「よう……水無月も帰るのか?」

「あら? 学年元一位様じゃない?」

水無月の皮肉めいた返答。

「あ、ええと、じゃあな」

会話が続かなくて気まずくなるよりは良いだろうと、そう言って俺は帰ろうとするが……、後ろには水無月がピッタリ着いてくる。


「なになに! 俺になんか用事でもあんのかよ!」

「別にないわよ! ただアンタとは帰り道が駅の所まで一緒でしょ! たまに一緒になるじゃない!」

……おおっと、そうだったのか……兄貴じゃない綻びが出そうになったぜ……。

「ああ、じゃ一緒に帰ろうぜ?」

「ん、なっ……!」

水無月は驚いている。

いや、別にそんな驚くことでもないだろ……。

「……別にいいけどっ……ただ、彼女さん放置して他の女と帰るのね……?」

……いや、その言い方やめろよ……別に浮気してる訳じゃないだろ!

ってか本当は付き合ってないしね!


「どういう言い方だよ……別に放置してる訳じゃなくてさ……」

「……まあいいわよ、特別に一緒に帰ってあげるわ!」


……って事で一緒に帰る事になった。

「そういえば、さっきコロシアムに出てたわね」

「! ああ、見てたのか」

「ええ、無様に追い詰められながらもギリギリ勝った様をね」

うん、すげえ罵倒されてる。

「そういえば、ランクはどうなったの?」

「え、ああ、そうだった」

俺は自分のアウェイク・コアを見る。

昇格のメッセージは通信デバイスとしての機能を備えたアウェイク・コアから伝えられるようだ。


「あ、色は変わってないけど数字が上がってるわ」

俺のアウェイク・コアには銅色で『3』という数字が表示されていた。

たしか三つの階級『ゴールド』『シルバー』『ブロンズ』はtop100が『ゴールド』、top101~400が『シルバー』、top401~900が『ブロンズ』となっている。

そして、数字で五等分されているのだから、おそらく俺は学校内で601~700位のところまで上がってきたわけだ。


「へぇー……割と順調じゃない」

水無月は俺のアウェイク・コアを覗く。

確かに順調だが、これじゃまだダメだ。

俺は早く学年topに入って兄貴の死の謎に近づかなければ……。


「……聞いてる?」

「! ああ、ごめん! 何?」

「……いや、だから割と順調じゃないって、がんばってるわね」

なんて、少し笑顔を見せながら俺の事を褒める。

珍しく褒められたことに驚きつつも、笑顔の水無月に少しドキッとしたりなんて……いや、言えないけど。


「ありがとう、水無月 でも珍しいな、俺の事を素直に褒めてくれるなんて」

「んなっ! べ、別に褒めてなんかないわよ!」

そういって、水無月はすたすたと歩いていく。


そんなことを話ながら歩いていると、水無月がふと思い出したかのように言った。

「あっ! 別館に行く道の途中でバッグのストラップ落としちゃったみたい。あれ、結構気に入ってたのに……」

「ッ! 大変じゃん! 今から戻って取りに行こうか」

俺はそう言ってきた道を引き返す。

「えっ、いや、でも……悪いわよ……」

「? あーいいよ気にしなくて。いいから行こうぜ」


俺は水無月の手を取って、学校へと戻る。

「ちょ、ちょっと! アンタ……」

水無月が顔を真っ赤にしている。

俺は今の状況を冷静に考え、慌てて手を放す。

そりゃ、こんな風にリードしてたらカップルと間違われてもおかしくないよな。

ま確かに水無月からすれば彼女持ちの俺にそんなことをされたら怒るな。


「ご、ごめん。つい……」

「い、いや……その、ありがと……」

どうやらあまり怒っていなかったみたいだ。

 

別館近くの道を歩き回ること十分。

しかし、未だに水無月のストラップが見つからない。

いったいどこに落としてしまったのだろうか。


「うーん、あたしが通った道はもう全部見たんだけど……」

その時、別館の裏の方から声が聞こえた。


――やめてください! お願いですから……。


俺と水無月は目を見合わせ、別館の裏へと急行する。

そこには、意地の悪そうな三人の男子生徒と、気弱そうな茶髪の男子生徒がいた。

不良にからまれてんのか……。


不良……。

またあの烈陶学園の三人組を思い出す。


なんて俺が懐かしい? 思い出に浸っている間にも、水無月はアクションを起こす。


「ちょっと、アンタたち! いったい何をしてるの!」

「何って、ちょっとこいつと遊んでただけだぜ?」

男たちが嫌な笑みを浮かべる。

「っ! そんなの絶対嘘に決まってるじゃない!」

水無月がかなりキレている。

真面目な水無月としては見逃せないのだろう。

「じゃあどうするっていうんだい? ここで俺らとやりあうってのか?」

ヒャハハと男たちが水無月のことを嘲笑する。

この場でアウェイク・コアを使用するのは校則違反だからだ。

学校には校内管理委員会という生徒会の自主機関が設置されていて、そこに報告されると厄介だ。

最悪の場合、コロシアムの出場停止や、ポイントの削減を命じられてしまう。

しかし、水無月は今にもとびかかってしまいそうだ。

水無月は学年でもランキング上位に入っているため、戦闘面での心配は不要だと思うが、ここで水無月に問題を起こさせるわけにはいかない。

 

水無月が男たちに跳びかかる。

水無月がその時計を体の前にかざした瞬間、俺は水無月と男たちの間に割って入り、男たちに一発ずつ突きを入れる。


「ぐはっ!」

「て、てめぇ……」

「覚えてやがれよ! 小野(おの)さんに言いつけてやる!」

三人組は、その場から逃げるように立ち去った。


小野……? 

よく分からんけど三人のボスみたいな感じの奴だろうか。 

ウチのクラスに小野っていう苗字の奴がいたが、そいつなのかな……?


「アンタ、なんで止めたの!」

「なんでって、それでお前になにかあったらどうすんだよ……」

「……っ!」

水無月は下を向いて黙ってしまう。

水無月の顔が真っ赤に染まる。


「あ、あの、いい雰囲気のところ悪いですが、その……ありがとうございました」

そう言い残すと、細身の生徒は俺たちの表情をキョロキョロと確認して、その場から去っていった。

 

このままじゃこれからもいじめが続いてくんだろうな……。


「何で、いじめられてたんだろうな?」

「優先権っていうものを誤解してるやつらがいるのよ」

「それってどういう?」

「優先権があると、学食や講演会の時とかで席がいいところに座りやすくなるのは知ってるわよね?」

そう、俺もちゃんとは知らないが細かいところでその優先権っていうのは使えるらしい。

「そういったところから、優先権に関係ないところまでその考え方をもってっちゃう奴が出てきたのよ」

「それがさっきの奴らってわけか」

「そう。アイツら調子に乗ってるのよ。全体で見れば順位は高くないっていうのに、自分より下位の人には強く打って出るの。さっきみたいに何かを強要する場合もあるみたい」

この学校にもいじめみたいな問題があったんだな。

だが、知ってしまった以上見過ごすわけにはいかない。

せめて、あいつだけでもどうにかしないとな……

 

その後、俺らは結局ストラップを見つけることができず、それぞれ家に帰宅することにした。

 

一緒に帰らなかったのには理由がある。

「水無月にストラップ買ってあげなきゃな」

俺は、バイトでためたお金を使って、ウサギのストラップを買う。


翌日、教室で水無月にそれを渡すと水無月はとても驚いたような顔をする。

しかし、少しして表情を戻すと、『ありがとう。とりあえずいただいておくわ』といって、どこかへ行ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ