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2話

         *


 ようやく旅に出たイサキ達は、初めて魔物に遭遇した。

 巨大化かつ凶暴化したハムスターが二匹、草むらから飛び出してきたのだ。

 普通のハムスターと違うのは、その頭上から二本の長い触角が飛び出している事だ。

 二匹の姿を視界に入れて、コチが目を輝かせる。

「うわぁ、ナマハムだぁ! 可愛い~」

「コチの方がずっと可愛いよ」

「……生ハム?」

 すっかりカジカを無視する事を覚えてイサキは問うた。

「この魔物の名前だよ。ナマズハムスターだから、略してナマハム! あの触角がナマズの髭と同じ長さらしいよ」

「さすがコチは詳しいなぁ」

「食いもんみてぇだな」

 名前だけ聞くと旨そう、と妙な感想を漏らすイサキだ。

「水属性ね」

 シャコが呟く。

「金目の物は持ってなさそ」

 魔物の多くは身体的特徴で先天属性を判断できる。今目の前にいるナマハム達は体毛が薄い水色だった。

「うわーん、怖いよー!! 帰りたいよーー!」

 早速ヤガラが泣き出したので呆れるイサキ。

「お前、実家にゃ帰れないって言ってたろうが……」

 その横では、コチが魔法の詠唱にかかっている。

「水属性だから氷魔法だね!! ブルータル・モーレイ!」

 何本もの氷の矢がお腹に刺さったのだが、僅かに血が滲んだ程度で、ナマハムはケロッとしている。

 たまらずイサキが叫んだ。

「コチちゃ~ん! 水属性には炎魔法でしょっ!!」

「あっ、ごめ~ん間違えちゃった☆」

(あぁぁ麗しき天然ボケ……!)

 後方で、ドジッ子な所も可愛いぃぃ!! などと叫んで悶えている阿呆がいるが、放っておく。

(て言うか剣士なのに後方かよ! 先頭に立って戦えよ!!)

 が、イサキも他人――一応仲間だけど――にばかり構ってはいられなかった。

(オレもやるぞ! ……つーかオレがやらなきゃパーティーは全滅だ!!)

 その通りである。

 国王から賜った銅の剣を両手で持ち、ナマハムに向かって構えたまではよかった。

 だが。

「おっ、重てぇーーーーっ!!!」

 銅の剣が重過ぎて、ろくに振り回せないのである。

 両腕に力を込めているつもりのイサキだが、よほど重いのかふらふらとよろめき、ついには転んでしまった。

 その隙を狙って、ナマハムが鋭い歯と爪でイサキに襲いかかる!

(ヤバい!)

 イサキが蒼くなった、その刹那。

「レッド・スナッパー!!」

 ボウッ

 間一髪のところでコチが放った炎が命中し、ナマハムは焦げ臭くなって転倒した。

「……助かったぜコチ~」

「えへへ、一発で倒せたね!」

 安堵の息を吐くイサキだが、はたと気づいた。

 ナマハムは二匹いたはずだ。

(もう一匹はどこだ?!)

 嫌な予感にイサキが振り返ると、残ったナマハムはヤガラの肩に噛みついていた。よほどヤガラの泣き声が癇に触ったのだろう。

「うわぁ~~ん、痛いよ痛いよぅっ!!」

 必死にナマハムを振りほどこうとするが、噛まれていない方の腕ばかり振り回すヤガラは、見事にパニックに陥っていた。

 シャコが倒れたナマハムの体を調べながら言う。

「ヤガラ、アンタが噛まれてるのは左肩よ?」

「へ?」

 言われたとおり左腕を振り上げるヤガラ。

 ゴスッ

 その拳がナマハムの上体に命中し、なんとナマハムは簡単に気絶してしまった。

「すごいよヤガラくん!」

 コチが褒めても、ヤガラは噛まれた肩の痛みに気を取られて、自分がナマハムを倒した事に気づいていないようだ。

「うわぁ~~ん! 血が出てる~~」

 そんなヤガラの肩は、イサキが回復魔法で治してやった。

「仕方ねーなぁ、クルーシアン!」

 かくして、イサキ達の初めての戦闘は終わった。

「しかし、ヤガラって意外と力あるんだな。見直したぜ」

「ナマハムを一撃でのしちゃったもんね~」

「とにかく、全員無事で何よりですねぇ」

 いつの間にか、イサキの後ろにいたアイナメが会話に参加していた。

「あ、アイナメ! お前今までどこ行ってたんだよ!?」

「ええ、遊び人は遊ぶのが本分ですから、隠れんぼをしてました。ちなみに一人で」

「そ・れ・は、隠れんぼじゃなく敵前逃亡って言うんだこの馬鹿ーーーー!!!」

 アイナメを怒鳴り散らして元気になったイサキは、銅の剣の事を思い出して、皆に切々と訴えた。

「……と言うわけなんだ。まさか、あんなに重いとは思わなかったぜ」

 するとカジカがあっけらかんと言った。

「はは~ん。そりゃ、装備不可ってヤツだな」

「装備……不可?」

「そう。人には向き不向きがあるからなぁ。装備可能な武器ってのは、大した練習なしである程度扱えてしまう武器の事を言う。逆に難しくてうまく扱えなかったり、今の勇者みたいに力が足りなくて持てない武器は、装備不可能って事なんだ」

「そんな……勇者なのに……銅の剣が装備不可だなんて!」

 どうやらイサキには相当なショックだったらしく、両手両膝をつくまでに打ちひしがれている。

 そんなに銅の剣が使いたかったのか優勝賞品みたいなもんだもんな――哀れみの目で見つめるカジカ。

(でも国を挙げてのトーナメントの優勝賞品が銅の剣ってセコいと思う)

「カジカ……」

 不意に、イサキが呟く。

「ん?」

「要はさ、使う奴の体力とセンスの問題なんだろ? 猛特訓したら、装備できるようにならないかな!?」

 そう言って勢いよく起き上がったイサキの眼には、やけに強い光が宿っていた。

「そりゃ、やってみなきゃわかんねーけど……」

「頼む! これから毎晩オレに銅の剣の使い方を教えてくれ!!」

「えぇ~~!!」

 あからさまに嫌そうな返事をするカジカを見て、イサキが膨れる。

「何だよ協力してくれよ~! 人が折角やる気になってるのに~」

「お前、夜ってのは冒険者の休息の時間だぞ? 唯一のプライベートだぞ?! 野宿にしろ宿屋にしろ、男には色々やる事があるんだよ!」

 と、カジカにバッサリ断られて拗ねたイサキは、からかい口調で言ってやった。

「……どーせ、コチの風呂を覗くとかそんなんだろォ?」

「馬鹿か、ガキじゃあるまいし! 風呂覗くぐらいなら、もっと正々堂々とだな――」

「あぁぁ言わんでいい言わんでいい! 大体、ツッコむ所はそこじゃねーよ、この変態!!」

 そんなふうにぎゃあぎゃあ喋りながら歩いていた一行は、無事にアイゴの町に着いた。

 ワラサ国の北に位置する小さな町だ。

 イサキは、まず宿屋に入ってチェックインを済ませた。

 勇者選抜トーナメントの閉会式が夕方だったため、既に陽は沈んでいる。

「え~っと、金ないんで男三人ずつ二部屋お願いします」

「かしこまりました。200イラになります」

 従業員から鍵を受け取り、コチの方を向くイサキ。

「はいコチ、部屋の鍵。なくすなよ?」

「ありがと☆」

「……イサキ?」

「何だよシャコ? あ、これオレらの部屋の鍵な」

「ちょっとォ、何で相部屋の鍵をアタシに渡すのよ! アタシは女よ!!」

「しかしアレだよなぁ~男六人とは、何つーか華やかさに欠ける、ムサいパーティーだよなぁ! いやーカジカ、お前に同調するわけじゃないけど、本当にコチがいて良かったな!!」

 ゴンッ

 平然と失礼な事を言うイサキの頭に、シャコの拳骨が落ちた。

「痛たたた~……何だよアイツ?」

 涙目で痛がるイサキを無視し、怒って宿屋を出て行くシャコ。

「気づかないお前が悪い」

 カジカが、呆れた声でツッコんだ。



 とりあえず、イサキ達も買い物に出る事にした。

 買い物といっても、目的は武器や防具である。

「は~い、皆所持金を出して下さ~い。一緒に装備を買いにいきますよー」

 そう言ってイサキが両手を出すと、仲間達は素直に財布の中身を差し出してきた。

「ボクとカジカちゃんの全財産、900イラだよー」

「僕は、300イラしかなくて……」

「私は750イラです」

「アタシは2150イラ!」

「……ん? シャコ、戻ってきたのか」

 自然に財布を出したシャコにカジカが言った。

「いつまでも怒ってても仕方ないしね。それより勇者、アタシのお願い聞いてくれたら、さっきの事許してあげてもいいわよ?」

「へっ、さっきの事って何?」

 イサキは、“お願いって何?”ではなく“さっきの事って何?”と訊いたのだが、幸いにもシャコは気づかない。

「その皆のお金、アタシに持たせてちょうだい? 盗賊のアタシが人にお金盗まれるようなヘマはしないわよ!」

「そっか、確かに盗賊が管理した方が安全そうだな。じゃあ、シャコに財布を預けるよ」

 イサキは、皆のお金に自分の賞金の2000イラを足して、6100イラをシャコに渡した。

「うふふ、5000イラ以上の大金なんて持ったの初めて!」

「言っとくけど、皆のお金なんだから勝手に使うなよ?」

「わかってるわよ」

 イサキ達は、まず武器屋へ向かった。

 店内には所狭しと刀剣類が並べられていて、かなりゴチャゴチャしていた。

「数はたくさんあるけど、種類は少ないな」

 うろうろと壁を見て回るカジカ。

「あ、この鋼の剣良さそうだな。勇者ーっ、一人あたりの予算は?」

「1000イラ! でも防具も買いたいなら、計画的に使えよ」

 店内の端と端での会話である。

 イサキは、仲間が自分を名前で呼んでくれない事に、今更ながら気がついた。

「了解! おっちゃん、これいくら?」

 そんなイサキの憂鬱など知らないカジカは、喜々として店主へ話しかける。

「1000イラだよ」

「げ、何とか負けてもらえない?」

「う~む、850ならどうだい」

「もう一声、700!」

「800!」

「750!!」

 そうしてカジカが買い物している頃、店の中央の棚の前ではシャコが短剣類を物色していた。

「勇者、勇者! これなら装備できるんじゃない?」

 わざわざイサキを呼んでシャコが見せてきたのは、小さなブロンズナイフだった。

「…………」

 いかにも落ち込んだ声で答えるイサキ。

「…………要らない」

「そ……そう? これも同じ銅製なのに……」

 あくまで銅の剣にこだわるイサキだった。

「……ま、いっか。アタシがこれにしよっと! おじさーん、ブロンズナイフ買います~」


(ん?)

 自分の買い物を終えて暇になったカジカは、店の入り口で浮かない顔をしているコチを見て駆け寄った。

「どうしたんだコチ?」

「ここ、魔法使い用のロッドが売ってないんだね……」

 しゅんと俯いてしまうコチに、カジカは慌てた。

 涙で潤んだ瞳、不服そうに突き出された唇が目に入る。

(かっ、可愛い―――!!)

 ゴスッ!

「慌て方が違う!」

 すかさずイサキがツッコんだ。

「なぁコチ? 魔法使いのロッドは、もっと大きな町に行かないと売ってないんだよ。だから、ここでは防具を新調するだけにして我慢しよう。なっ」

 できるだけ優しい口調で諭すと、コチがちゃんと頷いてくれたので、安心するイサキ。

「まぁ心配するな! オレだってここには装備できる武器がなかったんだからなっ」

「アンタはわざと買わなかったんでしょ……」

 シャコが溜め息をついた。


「ヤガラくんは何か買わないのですか?」

 こちらも暇を持て余し、買う気もないのに商品で試し斬りをしていたアイナメが、隣にいたヤガラに問い掛ける。

「武闘家は、手が塞がる刀や盾は持ちません……」

「なるほど。非常に経済的ですね」

「はぁ……」

「皆ー、次は防具屋に行くぞ!」

 イサキが店の入り口から二人を呼んだため、会話は途切れた。

「あ、行きましょう。アイナメさん」

「ああ、すぐ行きます……店主、これを貰おう」

「1000イラです」

「アイナメ! ヤガラの分の金まで使うなーー!!」

 イサキは、買い物が終わる頃にはツッコみのし過ぎで声が枯れるんじゃ――と思った。

「は~っ、とりあえず防具屋行くぞ! シャコ、金は幾ら残ってる?」

「4400イラでーす」

 結構買ったはずなのに、何故か金が減っていない気がして、イサキは疲れた頭を働かせる。

「…………盗んだ350イラ、返してきなさい」

「えーーーっ!」

 イサキの命令に、シャコが抗議の声をあげる。それは金を盗んだと認めたようなものだ。

「えーじゃない! さっさと返して来い!!」


         *


 防具屋には、鎧兜だけでなく服やローブも売っていた。

「あの、すみません」

 ずらっと並んだ服を眺めていたヤガラが、近くにいた店員に問う。

「武闘家が着るような、動きやすい服はありますか?」

 訊かれた女性店員は、ヤガラの格好をまじまじと見つめてから、申し訳なさそうに言った。

「お客様、申し訳ありません。お客様がお召しの赤胴着より良い物はウチにはありません」

 意外な返事に、ヤガラはきょとんとする。

「ええっ。これ、そんなに良い物なんですか!?」

「はい……ですからそのお召し物より防御力の低い品しか、当店では扱っておりません」

 女性店員に深々と頭を下げて謝られ、みるみるヤガラの目に涙が溜まっていく。

「う……」

「はーいはい! ヤガラちゃん泣かない泣かない!!」

「ほんとに手間の掛かる奴だなコイツは!」

 慌ててイサキがヤガラの口を塞ぎ、カジカが背後から体を羽交い締めにして店の外まで引き摺った。

「防具も買わずに済んだんですか。やはりヤガラくんは経済的ですねぇ」

 イサキ達が疲れている横で、一人感心するアイナメだった。



 ヤガラが泣きやんだのを確認してから、防具屋に入り直す一行。

「でもさぁ、ヤガラ。服はなくても帽子とか兜を被ったらいいんじゃないか?」

 イサキは親切心で言ったのだが、傍でアイナメが渋い顔をする。

「勇者くん……ここの店にある皮の帽子や石兜を、ヤガラくんのビビッドな赤い拳法着とコーディネートするのはどうかと思いますよ」

「あーあー! すいませんねぇどうせオレは服のセンスないですよーだ!!」

 イサキは噛みつくように言ってから、アイナメの方を見て口を尖らせる。

 アイナメの長い銀髪に、薄茶色のロングコートと黒のボトムはよく合っていた。

「確かに、アイナメは遊び人のくせにセンス良いよな~!」

「当然です。遊び人たるもの、まず外見を磨かない事には女性にモテないですからね」

「そっちの遊び人かよ!!」

 そんな二人のやり取りの脇では、コチがローブを選んでいた。

「たまには涼しい格好をしたらどうだ?」

 すかさず擦り寄るカジカ。

「毎日そんなローブじゃ暑いだろう。ほら、このハーフパンツなんて似合――痛っ!」

 言い終わる前に、イサキの投げた棒がカジカの背中にヒットした。

「カジカっ、防具は露出度じゃなくて防御力優先な!!」

「ちぇっ」

「勇者くん、今投げたのなぁに?」

 コチが大きな眼をさらに丸くして尋ねる。

「ああ、触媒に使う木の棒だよ。オレも回復魔法や防御魔法使うからな」

「そっか」

 納得するコチの横で、カジカが不思議そうな顔になる。

「コチ、触媒って何?」

 それでも、イサキでなくコチに訊くあたりはカジカらしいが。

「魔法を使うには魔力を一点に集中させなきゃいけないんだけど、その集中させた魔力を物質に宿らせる事で、初めて魔法として発現するんだよー」

 まさか自分の指を使ったらヤケドしちゃうからね☆ とコチは笑った。

「その、魔力を宿らせる物質の事を触媒と言うんだ。大抵の魔法使いはロッドを使う。つまり、オレの棒はロッドの代わりのようなモノだ」

「へー」

「でも勇者くん、いくらなんでも木の棒はどうかと思うよ? 今度ロッドが売ってたら一緒に買おうよ」

 それはコチの善意から出た言葉だったのだが、イサキは気まずそうに視線を逸らした。

「……え? ああ……その……売ってたらな」

 何故か歯切れの悪い言い方をするイサキ。

 その様子を見ていたアイナメが、口を挟んだ。

「コチくん、残念ながら勇者くんはロッドだと使いづらいと思いますよ?」

「え、そうなの?」

「ええ……察するに、勇者くんにぴったりなのは錫杖でしょう」

「しゃくじょう?」

 いつの間にか、店内に散らばっていたシャコやヤガラも寄ってきて、話を聞く気になっている。

「錫杖って、僧侶が使う武器ですよね」

「その通り。勇者くんが得意とするのは回復魔法ですよね。僧侶の錫杖には回復魔法の効力を高める物が多く、触媒として使いやすいのですよ。ロッドは、攻撃魔法の触媒として使用しやすい反面、回復魔法の触媒には適していないんです」

「へー! アイナメさんって物知りなんですねぇ」

 アイナメの説明を聞いて素直に感嘆するコチの横で、イサキは呟いた。

「それだけの知識があるんなら、戦闘で生かして欲しいよ……」

 遠い目をしたイサキがくるりと後ろを向くと、肩を震わせているカジカが目に入った。

「……カジカ?」

「……勇者の得意武器が杖……くくく」

 あ、コイツ笑ってやがる。イサキはカチンときた。

「勇者の得意武器が、教会の神父さんとかが使うような錫杖って……ひーっ、腹痛ぇ!!」

「笑うなーーー! オレだって気にしてるんだよっ!!」

 怒気を孕んだ声で叫ぶイサキだが笑い転げるカジカには通じず、ついにはシャコまでつられて笑い出す始末だ。

「た、確かに、言われてみればおかしいかも……あははははは!!」

「シャコさん、笑うと悪いよ……」

「だって、僧侶の杖ってあの輪っかの……あははは!」

「だーかーらー、笑うなお前らーーーー!!」

 ヤガラが止めるのも聞かず、笑うシャコとカジカ。

 それぞれの防具は買い終えたものの、店を出る頃には、イサキはすっかりヘソを曲げてしまっていた。

「いーんだいーんだ、当分オレは木の棒で! それに、勇者になってから最初に装備する武器は、銅の剣って決めてるんだからなッ!!」

 カジカもさすがに悪いと思ったのか、素直に謝っている。

「ごめん勇者、本当に悪かった」

 しばらくは聞いていないふりをしていたが、不意に低く呟いたイサキ。

「…………銅の剣」

「へ? ――ああ!」

 一瞬きょとんとしたカジカだが、すぐに明るい表情になって宣言した。

「わかった。毎晩の剣の稽古も付き合う!! だから許して下さいっ」

 ようやく振り返ったイサキは嬉しそうな笑顔だった。

「よし、許す!」


         *


 イサキがカジカから剣の稽古の約束を取りつけて喜んでいた、ほぼ同時刻。

 ハタハタの崖の下にあると噂される魔王城。その広い謁見の間に、静かに進み出る人影があった。

 照明や窓があるにも拘らず、城内は昼間でも薄暗い。

「ただいま帰りました……」

 控え目な、それでいてよく通る声を発したのは、かの黒馬車の少女である。

 両隣には、黒ずくめの付き人も彼女を監視するように立っている。

「これは姫サマ、随分お早いお帰りで」

 玉座で答えた声は、魔王のものではなかった。

 細い腕と豊かな胸を強調するような際どい衣装に身を包んだ、美しい女である。

 体を隠す役割を果たしていないわりに色鮮やかな薄絹は、夜の酒場で男達の目を楽しませる踊り娘の物に似ている。

 マリンブルーの大きな瞳には愛嬌があるが、今の表情は険しかった。

「まさか、早く魔王様に会いたいからって帰ってきたんじゃないでしょうね!」

 その口調は嫉妬心丸出しである。

 少女は素早く考えた。違いますとはっきり言ってしまえば、会いたくないなら帰ってくるなと言われるかもしれない。

 否定も肯定もできない。

「……魔王様に、長期間外出しているのは危険だから早く帰るようにと、命じられましたゆえの事でございますが」

「まあ、貴方、魔王様に文を頂いたの!?」

 会話が噛み合わない。少女は頭が痛くなってきた。

「ホヤ様。私は、ただの人質で捕虜です……あなた様が誤解なさってる事は決して――」

 ビシィッ!!

 言い終わる前に、乾いた音が床を打った。

 ホヤと呼ばれた女が手に持っていた鞭である。

「当然でしょう!? 魔王様がアンタみたいな小娘、相手にするわけないじゃない!! 調子に乗らないでよね、姫サマ?」

 ホヤは少女の事を、嫌味を込めて姫と呼ぶ。魔王城の人質は姫と相場が決まっているから――らしい。

「……はい。おっしゃる通りでございます」

 少女は、こんな面倒臭い女にひっかかった魔王に密かに同情している。

 もっとも、魔王は自分をさらった相手でもあるのだが。


         *


 買い物が終わった後、宿屋で休むにはまだ時間が早かったので、一行は町の近くの洞窟に出かけた。

 洞窟の中は元々暗く、夜間の探索であろうと関係ないからである。

「こっちで間違いないのか?」

「はい、合ってます。ほら、きっとあそこですよ」

 自信を持って答えるアイナメに、イサキは複雑な表情をする。

『酒場で聞いた話によると、この町の人達はナマハムに畑を荒らされて相当困っているようです。それで、町の東にあるナマハムの巣を掃討してくれる戦士を、懸賞金つきで捜しているそうですよ』

 そんな情報を仕入れてきたのがアイナメなのだ。

 お前いつの間に酒場なんか行きやがった――と文句の一つも言いたいのをグッとこらえて、イサキ達は、ナマハムの巣である洞窟へ入っていった。

 中は、様々な体色のナマハムでいっぱいだった。

「うわぁーーん、敵がいっぱいいるよぉ! 怖いよーー!!」

 いつものごとくヤガラは泣き出したが、泣きながらも拳や蹴りを敵に入れてくれるので、皆わざと慰めない。

「うわっ!!」

 先頭に立って攻撃していたカジカが、ナマハムの頭突きを食らって吹っ飛んだ。

「大丈夫かカジカ!? クルーシアン……コチ、向こうの地属性のナマハムを頼む!」

「うん! レインボー・トロウト!!」

 イサキがカジカに駆け寄りながら指示を出す。

 茶色いナマハムと対峙するコチ。

 シャコが、買ったばかりのブロンズナイフを緑色のナマハムの喉元に突きつけて叫んだ。

「アイナメ! アタシが動きを止めてるから、アンタのボーガンを食らわせて!!」

「了解!」

 ギリギリとボーガンの弓を引くアイナメ。

「お前、1000イラも使ってボーガンなんか買いやがったのか!!」

 イサキが自棄気味にツッコむ。

「大丈夫大丈夫、ほら、構えるのも様になってるでしょう?」

「お前のは見せかけだけなんだよ!!」

 そうアイナメにツッコみながらも、イサキはコチのサポートに回っていて彼の方を見ていなかった。

 だから、矢が放たれたと同時に聞こえた声の意味がわからなかった。

「うっ―――!!」

 その呻き声は、ナマハムでなく明らかに人間のものだ。

「ヤガラ!? どうし……た……」

 傷の治ったカジカが振り返って、顔を引きつらせる。

「なんでボーガンの矢がヤガラに刺さってるんだよ!!」

「いや~すみません。どうやら前後を逆にして構えていたようです」

「まったくもー!」

 大して悪びれた様子もなく謝るアイナメの代わりに、カジカは慌ててシャコが抑えていたナマハムにとどめを刺した。

 イサキも急いで、泣き声すら上げずに気絶したヤガラを抱き起こす。

「大丈夫かヤガラぁ~……清流の癒しを、クルーシアン・カープ!!」

 矢が深々と刺さったヤガラの足は出血がひどく、イサキはまだ慣れない中級の回復魔法を使わざるを得なかった。

「……オレ、回復とツッコみばっかりでちっとも戦っていない気がする」

 イサキの独り言に答えてくれる者は、誰もいなかった。

 そんな戦闘を何度も繰り返し、最深部に辿り着いた六人。

 そこには、洞窟に巣くっているナマハム達の親分格と思しき巨大なナマハムがいた。

 体毛が黒い。闇属性である。

 アイナメがこっそり逃げようとするのを、シャコが呼び止める。

「アイナメどこいくの?」

「実は、私は光属性なもので……闇属性とは相性が悪い。ですから安全な場所に避難しようかと」

「アイナメさん光属性なんですかぁ」

「光属性って、打撃で闇属性に大ダメージを与えられたり、聖なる魔法が使えたりするんですよね!」

 ヤガラが感嘆し、コチが期待を込めた目で見たが。

「それは、剣士や魔法使いの話です。私は遊び人ゆえ、属性に頼った技は全く使えません。よって、ただ単に自分が大ダメージを食らってしまうだけなのです」

 アイナメがあっさりと断言するのへ、ついにイサキが、キレた。

「ああもうっ!! じゃあそのボーガン寄越せっ!!!」

 そう叫んで、ボーガンをひったくるともの凄い早さで連射を始めたのだ。

「食らえぇぇぇっ! この巨大生ハムぅぅぅーー!!」

 ドスドスドスドスドス―――!!

 巨大ナマハムは、何本のも矢をお腹に食らって気絶した。

 ズシーーーーン

 巨大ナマハムの倒れる音が地響きのように洞窟を震わせる。

「ど……どうだ……倒してやったぞ……」

 息を切らして言うイサキを、唖然と見つめる五人。

「すごい……矢が全部急所に刺さってる……」

「……回復ばっかりでストレス溜まってたんだね……きっと」

「だろうな……」

「ひっく……ぐすっ……勇者さんが怖いよぉぉぉ」

 そんなイサキの暴走によって、初めての洞窟探検はあっけなく幕を閉じたのだった。



「いや、まさか旅のお方が、一日でナマズハムスターの巣を退治して下さるとは。本当に有り難うございます」

 アイゴ町、町長の屋敷。

 町長は、丁寧にお礼を言って包みを差し出してきた。

「これは、ほんのお礼です。どうかお収め下さい」

「ありがとうございます」

 アイナメが受け取った包みは、細長い筒状だった。

 そして、屋敷から宿屋へ戻る最中、全員がその包みに興味津々だった。

「……もしかしてロッドか何かかな? 高級っぽい匂いするわねっ」

「だと良いな、コチが喜ぶ」

 金目の物かと目をきらきらさせるシャコとカジカ。ちなみに包みはアイナメからシャコが奪い取り、今は彼女の手の中だ。

 自分の物でなくてもいいから金目の物に触りたい! と熱弁するシャコに、イサキは好きにさせていた。

 だが、包みの中から出てきたものは。

「……錫杖」

 そう、先端に三つの金の輪がついた白く繊細なデザインの杖。

 明らかに魔法使いのイメージには合わない。

「…………」

 全員が、硬直した。

 予想通り高級そうな物だが、シャコは喜ぶのも忘れて固まっている。

 それだけ、イサキの顔を見るのが怖かったのだ。

「……貸せ」

 イサキがアイナメの腕に手を伸ばしかけたので、アイナメは身を引くと同時に持っていたボーガンを後ろに隠す。

 アイナメには珍しく、賢明な判断だった。

「いいから貸せってんだちくしょおおおお!!!」

「今の勇者くんに貸せるわけないでしょうがぁぁ!!!」

 遊び人を必死で追いかけ回す勇者。

「勇者くん、貸せって……錫杖ならシャコさんが持ってるよ?」

「コチ、今その天然ボケは命にかかわるぞ」

 錫杖を危うく渡しそうなコチの肩を力一杯掴んで、カジカは溜め息をついた。


         *


 トビコ市場は、アイゴの町から北西に進んだ湿地帯にある。

 海産品に限らず、世界中からありとあらゆる食品が集まってくる大きな市場だ。

 巨大ナマハムを倒した翌日。イサキは一人で食糧の調達に来ていた。

 他の仲間に行かせるぐらいなら自分が行く! と、率先して買い出し役を引き受けたのだ。

(道草大好きな遊び人や、他人の財布しか見てない盗賊には任せてられないからな)

 ヤガラは道に迷ったら、すぐ泣きそうだし。

 その様子が簡単に想像できる事に苦笑しつつ、人ごみの中へ入っていくイサキ。

 東の一角にある肉屋で、イサキは見覚えのある黒ずくめのマントを見掛けた。

 すっぽりとフードで頭まで隠したその姿は、例の黒馬車の付き人だ。

(あんな翼や爪の生えた手で、店の人を怖がらせずに買い物できるのか……?)

 魔物相手に、そんな危機感に乏しい心配をしたイサキは、思い切って声をかけた。

「なぁ、あんた黒馬車の馬車引きだろ」

「えっ?!」

 だが、返ってきたびっくりしたらしい声は、魔物のそれではなかった。

 イサキも振り向いた付き人の顔を見て驚く。

「君は……」

 はっきりと記憶に残っている、生気に乏しい灰色の瞳。陶器のごとく白い肌。

「おはようございます、勇者様」

 イサキにペンダントをくれた少女である。

「おはよう、君も買い出し?」

「あの……これは、違うんです」

「ん?」

 少女は、今しがた店主から受け取ったばかりの大きなロース肉の塊を見やって、恥ずかしそうに言った。

「こんなにたくさんのお肉、私一人で食べるんじゃなくて……」

「ああ、あの馬車引き達の分?」

 イサキの中では、すっかり黒ずくめの付き人イコール馬車引きになっている。

 その付き人の物であろう上着を纏った少女を眺めて、綺麗な栗毛がほとんど見えなくて勿体ないな、と思った。

「馬車引き……アカガイとミルガイの事ですか? そう、そうなんです! あの二人、とってもよく食べるんです!!」

「あ~わかるわかる。滅茶苦茶食いそうだもんなアイツら」

 少女が必死に頷くのを見て、イサキはついつい笑ってしまった。



 二人で、比較的人通りの少ない乾物売り場を歩く。

 イサキ自身、日持ちする食べ物を買いたかったのもあるが、一番の理由はわざわざマントを被っている少女を人の目から遠ざけてやりたいからだ。

 少女はロース肉が入った袋を両腕で抱えながら、呟くように言った。

「……あなたは、怖くないのですか? 私が魔物と一緒にいても……」

「う~ん」

 少女の問い方にはどこか悲愴感が漂っていたので、イサキは真剣に考えて言葉を選ぶ。

 彼女を視界に入れて歩く行為に、元々真剣ではあるが。

「単純に君が悪い人に見えなかったから。それに、主観の問題でもあると思うよ。魔物と一緒にいるから君も悪人って見るんじゃなくて、君と一緒にいる馬車引き達が善良な魔物かもしれないだろ」

 少女は、驚いたようにイサキを見た。その双眸が徐々に潤んでいく。

 慌てて、涙で溢れそうな瞳を隠そうと俯いた。

「今まで、誰も私の事なんか気にもとめなかった……皆、アカガイとミルガイを怖がって近づこうともしなかったもの……」

 それでも、憂いを帯びた眼差しでイサキを見つめる少女。

「私を私として見てくれたのは、勇者様だけ……」

 イサキもまた少女を見つめて、明るく笑ってみせた。

「皆、きっと馬車の中までは見えなかったんだよ。君みたいな可愛い子が乗ってるってわかったら、ほっとかないって」

「……そんな事はないけど……」

 しかし、そう言った途端、少女は自分の足許を見つめて俯いてしまった。

(あれ)

 戸惑うイサキ。

(オレ何か悪い事言ったか?)

 しかも、少女はぽろぽろと涙を零しながら懇願するのだ。

「お願い……今日ここで私と会った事、誰にも言わないで」

「えっ?」

 少女は、か細い声を振り絞るように言った。

「私は……魔王城に軟禁されているから。誰にも言わないで……私を助けに来てください!」


         *


「……ただいま」

 明らかに元気のない声で、イサキは宿屋の扉を開けた。

「あ、お帰りなさ―――?」

 その顔色が悪いのに気づき、慌ててコチが駆け寄る。

「大丈夫勇者くん!? 六人分もの食糧一人で持ったから、疲れたんでしょ?」

「……大丈夫」

 ちっとも大丈夫じゃない声で返事して、イサキは大荷物をテーブルに置いた。

「お帰り勇者、買い物ご苦労さん」

「料理は台所を借りて私が作りますから、勇者くんはゆっくり休んでて下さい」

「……んー」

 カジカやアイナメも奥から出てきたが、イサキは上の空でふらふらと二人の横を通り過ぎた。

「どうしたんだ? アイツ」

 そしてアイナメが手製のベーコンエッグを皿に盛りつける頃になっても、イサキは部屋の中を歩き回ったまま腰を降ろそうとしなかった。

 隣の部屋から顔を出したシャコが、訝しげに問う。

「ヤガラ、勇者ってばどうしちゃったの?」

「……買い物から帰ってきて、ずっとああなんです。僕怖くって……」

「ふ~ん。ところでアイナメ、朝ご飯まだ?」

 半泣きなヤガラをあっさりと放って、シャコは台所にいるアイナメに声をかけた。

「もうすぐ出来ますよ、待っていて下さい……あ」

「どうしたの?」

「いえ。危うくいつもの癖で、おかずに睡眠薬を混ぜそうになりました……」

「んもー、アイナメってばドジなんだから♪」

「シャコさん、それはドジの一言じゃ済まないと思いますぅ……」



 イサキには、そんな三人の会話も耳に入っていなかった。

 少女が魔王城に軟禁されている。

 とんでもない事実を知ってしまったのに、何故あの場で何もできなかったのか。

 そんな後悔に苛まれていたのだ。

『助けにきて下さい……』

 そう言ったきり泣き出してしまった少女を、イサキはためらいがちに抱き締めた。

 二人の間に挟まれたロース肉が、ひどく邪魔だった。

 ひとしきり泣いた後、少女は呟いた。

『私、ずっと待っています……』

 そんなロマンティックな言葉の響きに騙されたように頷いたのは、間違いではなかったか?

『必ず、助けにいくよ』

 心意気としては間違ってはいまい、しかし断言した数時間前の自分を全力で張り倒したい――イサキは思う。

 彼女を助けたいと思うなら、何故その場で彼女の腕を引いて連れて来なかったのか!

 それを彼女が望んでいなかった、というのは彼女の言動から理解できた。

 けれど理由が判らない。

(魔王城へちゃんと辿り着いて、魔王を倒して欲しいから?)

 それは元々のイサキ達の旅の目的であり、少女がわざわざ自分の身柄を使ってまで取り引きする理由には思えなかった。

(じゃあ、何でだ……?)

 難しい顔をして考え込むイサキ。

(まさか)

 眉間に寄せた皺がぐっと深くなる。

(まさか、今逃げ出したら馬車引きの今日の朝メシがなくなるから! ……とか……)

 いやいやいくら何でもそれは無いだろ、とイサキは頭を振った。

 だが、どれだけ考えたところで少女はもう行ってしまった。きっと魔王城へ帰ってしまった。

 名前を知ったのは、別れ際の事だ。

『オレ、イサキって言うんだ。君は?』

『申し遅れました。私、ヒイラギと申します』

 では、ご機嫌よう。

 ぺこりと会釈すると、ヒイラギはそのまま目の前から立ち去った。

 甘い薫りとロース肉の臭みを残して―――。



「……結局、魔王城に……わかんねーな……」

 そんなふうに、ブツブツと独り言を呟きながらうろうろ歩き回る勇者の姿は、事情を知らない者からすればただただ奇妙でしかない。

 さすがにカジカが心配になって声をかけるが。

「……勇者?」

「……でも……人質、人質なら……で……なんかに出歩いて……て事は……引きは、監視役か―――?」

「ゆーうしゃーー?」

「……聞こえてませんね」

 やはり返答はなく、ヤガラも不思議そうに呟く。

(なんで食糧の買い出しに行っただけで、ああなるんだ?)

 首を傾げるカジカだった。


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