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血と復讐のヤルマール  作者: しのみん
悲劇の始まり
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闇の中へII

ーカンナー


サンダル大学、図書室。武器倉庫と同じく世界有数の本の種類、質、数を持ち普段生徒がたくさん出入りしている。武器と異なる点は数だろう。約5000万冊の本がここにはある。この時間帯もあってこの場には今、私しかいない。


図書室は本当にこの大きな大学内で静かで落ち着けるスペースだと思っている。勉強するのも読書するのもお昼寝するのも打って付けの場所。


小説、評論、魔術書、呪術書などが大きな本棚にずらりと並んでいる。この図書室も素早く目当ての本を探せるようにタブレット端末が備え付けてある。これがなければ1冊見つけるのに1日かけても見つからないと思う。


「太陽の光を放つ魔術‥‥‥あ、これこれ!ソレイユ!」


8572〈ソレイユ〉下級魔術

魔力消費 小

効果時間 10秒

温度 38度

目標に太陽の光を当てる。


普通の生徒はまずソレイユなどという魔術は覚えようとはしないだろう。なぜならヴァンパイアに遭遇する機会がないから。多分、一生。明るさが欲しいならわざわざ日光を出さなくても別の魔術で代用できる。


「他には何かないかなぁ〜」


ヴァンパイアに効きそうな魔術がないか項目を次々とスライドしていく。


「お、これは!」


17605〈ソーラーインパクト〉上級魔術

大きさ 直径15センチ〜10メートル

温度 魔力により調節可能

太陽の光を凝縮させた塊を目標にぶつける。速さも調節可能。


ソレイユなら下級魔術だし、1分あればマスターできるだろうけどソーラーインパクトは1時間くらいかけないとダメかも‥‥‥


でもこれであのヴァンパイアに太刀打ちできるなら簡単だよね。


「誰もいないし、少しくらいなら練習してもいいよね?」


キョロキョロ辺りを見回して無人であるかを確認して、少しスペースのあるところまで移動し2つの魔術をひたすら唱え続ける。


やっぱり私には武術よりも魔術が似合ってるのかなぁ〜

何よりやってて楽しいし、上達も他の人より若干早い気がする。

でもやっぱりソーラー・インパクトは難しいや。


唐突にウィーンと扉の開く音が聞こえた。


「誰だろう?」


急に1人でこの空間にいることが怖くなってきた。

何処よりもリラックスできるこの場所でここまで恐怖心を抱くなんて。


恐る恐る魔術の練習を中断してちらりと本棚から顔を覗かせる。10メートルくらい離れたところに友人のシェリーがタブレット端末を操作している姿が見えた。


「シェリー!」


緊張が緩んでつい嬉しくなって名前を呼ぶ。シェリーもこちらに気づいて手を振った。


「カンナ!どうしてここに?!」


この時間に人がいるのが珍しいからなのか、少し驚いた様子でシェリーが尋ねた。


「ちょっと調べ物。モンスターについてのね。シェリーは?」


「私は‥‥‥‥!?」


シェリーはあまりにも突然の出来事に最後まで言い切ることができなかった。部屋の電気が消えたからだ。


私も小さな悲鳴をあげ、辺りを見回したが当然ながら暗闇で何も見えない。


冷静に‥‥何かこの状況で使える魔術は‥‥

杖を取り出し目を瞑り精神を安定させながら考える。


「ダークアイ!」


暗闇の中でも多少は視覚を使えるようにする魔術。一応、必須魔術である。これほど役に立ったのは初めてかもしれない。普段、洞窟なんかに入ることがないから。


同じくシェリーもダークアイを唱える。


「なんで電気‥‥消えちゃったんだろう?」


シェリーが不安そうな表情を浮かべて聞いてきた。


「んー、わかんない‥‥」


「あ!電力室って隣じゃない?あたし見てくるよ!」


閃いたようにそう言ってそそくさと扉まで走っていった。


「あっ、まだあまり動かない方が!」


私は急いでシェリーに呼びかけたが、彼女の元気ないつもの返事を私が2度と聞くことは叶わなかった。


既にシェリーは強制的に答えることができない身体にされていたのだから。


頑丈に作られた扉から貫通した槍のような鋭い刃。それは間違いなく彼女の心臓を穿っていた。

その刃の先端から赤い血液がポタポタと滴り落ちる。


「あ‥‥‥‥‥‥ああ‥‥‥‥」


腰が抜ける。言葉が出ない。悲鳴すらあげられない。

嗚咽だけが漏れる。嘔吐しそうだ。

次に瞼を閉じた瞬間に意識が飛んでしまったらどうなるのだろう。殺される。間違いなく。死にたくない!体が言うことを聞かない。


「ゴホッ‥‥‥!う゛う゛う゛‥‥‥逃げ‥‥‥て‥‥」


口から大量の血を吐きながら必死に言葉を紡ごうとする彼女の姿が見える。


「うるさい。黙れ」


扉を隔てた廊下側から声が聞こえる。その刹那、相手は彼女の首ごと扉を大剣で切り裂いた。

扉はグチャグチャになって首とともに宙を舞った。


目の前の信じ難い光景を、人が物に変わったその光景をただ見つめることしかできなかった。



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