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血と復讐のヤルマール  作者: しのみん
残された者たち
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頂上決戦


騎士団長ルシフェル。コロナ騎士団第24代目団長。歴代類を見ない実力と才能を持ち、その名誉ある栄光が団員たちをまとめ上げる。


白銀の鎧に身を包み、漆黒のマントをたなびかせる。整った顔立ちと灰色の前髪から覗かせる眼光はしっかりと敵を捉えていた。これが正義の象徴か。


その実力は未だに未知数だが、オーガス共和国における最高戦力だと言っていいだろう。しかし、相手は名前も知らなければその実力も未知数の頭蓋、死王デスマーチ。


未知の相手とどう渡り合うのか、この混沌に包まれた状況を打開しうるのか。


形成は傾きつつある。この一戦に全てがかかっていると言っても過言ではない。


「小癪な」


ジークバルドの死を紙一重で回避させ、デスマーチは喚く。奴の腕からドサリと落ちた彼の身体は相当なダメージを受けているのかしばらく動くことができない。


しかし、ジークバルドが死地に立っているのには変わりはない。その気になればデスマーチは副団長を瞬殺できる距離にあるはずだ。

ただルシフェルは全力でそれを阻止しにかかるだろう。


「私は」


黒剣を振りかざしルシフェルの首を取ろうと斬撃を放つ。瞬時にルシフェルの装備である聖剣がその斬撃と激突する。空気にその衝撃による振動が伝わり、シェルター内が震え上がる。


「先に邪魔者を排除するとしよう」


死王デスマーチは怯む様子を全く見せず、ただ恐ろしいほどの殺気を放ち敵を仕留めにかかる。


「貴様、名は?」


「ルシフェル。てめぇは何者だ」


「死王デスマーチ」


やはりその名を知るものはいない。闇の軍勢という存在は歴史的に有名で数千年前から語り継がれてきている恐ろしい話だが、死王デスマーチという名は誰も知らなかった。


もしその闇の軍勢がこれだというのならこの戦いは長きに渡る悪の宿敵を絶やす最後の戦いになるかもしれない。この死王デスマーチさえ倒すことができたら。


「オートアリア」


ルシフェルが何らかの魔術を唱える。即座にデスマーチに鋭い光線が接近する。


おそらく白魔術の類だろう。生身の人間がまともに喰らえば即死するほどの高火力を秘めた技をほんの数秒で発動させるとは。


しかし、その魔術がデスマーチに命中することはなく、突如として現れた黒煙がデスマーチ、ルシフェル、そしてジークバルドたちの周囲を包み込んだ。


今度は何を企んでいるんだ。


完全に3人の位置を見失ってしまった。異空間へと続く結界でも出現させたのか、ただの目眩しかはわからないがデスマーチが煙を発したということは間違いない。


「そんな目眩しが効くと思ったか!」


ルシフェルが手をかざし、周囲の煙を一瞬にして吹き飛ばしその効力をかき消した。そしてすぐに異変に気づく。


「!?」


ジークバルドの姿が、ない。


「先に邪魔者を排除すると言ったはずだ」


そうか、初めから邪魔者というのはルシフェルのことではなく、奴の狙いは……


「ケルベロス!」


デスマーチが力強く叫ぶとその背後に横たわる満身創痍のジークバルドの側に首が2つになった冥界の番犬、ケルベロスが何処からともなく出現していた。


「ジーク!」


あの傷ではフェアリーの回復は間に合わない。致命傷を与えられている。ルシフェルが慌てて助けに行こうにもデスマーチが前に立ちはだかっている。一瞬でも隙を見せようものなら待ち受けるのは死のみだろう。


周りの団員も必死の戦闘を繰り広げており、助けに行く余裕はない。


寧ろケルベロスの餌食になる可能性が高いほどだ。



ダメだ。彼を助ける手立てはない。


デスマーチの背後からムシャムシャと生肉を啄ばみ、捕食する音が聞こえる。ジークバルドが見るも無残な姿になったことは想像に容易い。


これがコロナ騎士団副団長の最期なのか。名誉ある地位を築き上げた末路がこれとはあまりにも悲惨すぎる。


「貴様……!」


ルシフェルは堪え切れない怒りを目に宿し、デスマーチを睨みつける。


「私一人では倒し切れなくとも、ケルベロスがいればどうかな。若造」


デスマーチの口ぶりからすると間違いなくルシフェルは最強なのだろうが、それはあくまでも個としてであって現状ではどっちに転ぶかわからない。


「侮られたものだ」


死王デスマーチに弱点はあるのか。いや、そもそもあの異質な存在に死という概念があるのかどうかは定かではないがルシフェルが負けるというヴィジョンが見えない。


光VS闇。この戦いに終わりは来るのか。


民兵や騎士団員は健闘している。形成は逆転しつつある。しかし、あの頭蓋を倒さないことにはこの戦いに終止符を打つことができない気がする。


逆に奴を撃破するか、撃退できさえすれば全てが終わるだろう。


ルシフェルは魔術で聖剣に眩き光を灯し、高速でデスマーチに特攻する。


が、その動きに劣らぬ速さでその攻撃を阻んだのはさっきまでデスマーチの背後にいたケルベロスだった。確実に首を刎ねられたときより強くなっている。ジークバルドを捕食したことによって強化されたとでもいうのか。


「デス・ワード」


デスマーチが謎の言葉を発する。その真意は魔術か、呪いか。


「邪魔をするな!」


ケルベロスの図体を聖剣で吹き飛ばし、腹部を損傷させることに成功させる。やはりいくら強化されようともルシフェルと渡り合える次元には及ばないようだ。


「貴様、今何かしやがったな」


ケルベロスに攻撃する間際に聞いたあの言葉を彼は聞き逃さなかった。だが、その効力がわからない限り対策のしようがない。


「さぁ殺し合いを始めよう」


デスマーチはルシフェルを嘲笑うように殺戮を高らかに宣言するのだった。

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