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血と復讐のヤルマール  作者: しのみん
残された者たち
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決死隊


「おいおい、マジかよ……」


そして久しぶりの戦場へと駆り出された俺たちはその現場を目の当たりにして悟った。命運は尽きた。と。


何人もの人間が地を這い蹲り、動かない体を必死に動かそうともがいている。既に世を去った者、まだ息がある者、抵抗する者がそこには残っていた。中には死体なのか判別がつかないほど酷い状態のものもあった。


そこにはハンターなどよりも過酷な世界が広がっていたのだ。この前線に立つということは即ち死を意味すると言っても過言ではないだろう。


しかも敵の弱点や正体を突き止めようとしても見たことも聞いたこともない容姿をしたモンスターしかいないため対策のしようがない。


一体、こいつらにどうやって勝てというのか。


「シャキッとせんかい!戦うで!!」


「!?」


そんな絶望に打ちひしがれていたところにユノの強い一喝が入った。意識が現実に引き戻されて目の前を見ると武器をフル装備したユノのいつもの姿があった。


そうだ。無理は承知の上でやってるんだ。ここで俺らが諦めてどうする。


やるしかないんだ。


「行くぞ!みんな!」


「おう!!」


ここからはいつも通りの流れだ。少し前のハンターライフを思い出せ。これはクエストだ。


クエスト

闇の進軍

報酬 なし

難易度very hard

内容 地下シェルターアルカディアに突如襲来してきた敵を討伐する。民兵を組織し、参戦するまでの時間を稼げ!


メンバーの中では機動力と突破力に秀でた俺は活路を開くべく突進した。身の程を知っているから黒兜とは少し離れたフランケンシュタインのような図体を持った男を狙う。見ている限り銃弾が貫通したような外傷は無い。かなりの防御力そして攻撃力を有していることは間違いないだろう。


鋭く尖らせた刃を胸に潜めて、2メートル手前まで全速力で接近し、フランケンシュタインが攻撃する素振りを見せた瞬時に俺は飛び上がった。


「オマエ、コロス」


「遅ぇ!」


低姿勢で接近したこともあって奴の馬鹿でかい拳は飛び上がった方ではなく残像である地面に突撃した。みるみるうちに周囲に隕石でも落ちたかのような亀裂が入る。


「ウスノロが。死ね!」


潜ませていた刃を奴の脳天にぶち込むことに成功した。深々と頭部に突き刺さったナイフは大量の血を周囲に撒き散らせた。


勝因はスタートダッシュによる勢いで攻撃速度をスピードが上回ったことと、それによる瞬間火力だっただろう。拳銃で開けられなかった風穴をこじあけることに成功したのだ。


「あれ……まさか……倒したのか?」


戦闘モードから一瞬我にかえり、残された亡骸をぼんやりと眺める。誰の援護もなく、サシで勝負しこの敵を撃破したのだ。


後方からやけに視線を感じるとふと思ったらユノやダンゾウが目を丸くして俺のことを見つめていた。


「なんだよ。お前らも早く戦えよ……」


そんなゆっくりしてる猶予はないはずだよな?

まぁ他人のことはいい。早く次の敵を一体でも多く狩り取らなければならないのだから。


「なぁ、ユノ。レオトってこんな強かったっけ?」


「いや、あんな速い動きしてなかった……」


そう。後ろの2人から見れば俺の動きはどうやら前回の戦闘よりも格段に俊敏になっているように見えたらしい。2人は察していた。今回のレオトはいつもと一味違うと。


そんなユノとダンゾウの思慮を横目に俺は敵勢力へと特攻を続けた。確かにさっきの大男との戦闘は文字通り命懸けで、一撃必殺の拳をマトモに受ければそこで絶命していただろう。


しかし、その恐怖に臆することなく俺は奴との駆け引きに見事勝利したのだ。あとはその勢いに任せて攻撃を続行するだけ!


「うぉらぁ!!死ねぇ!!」


最前線に出て、周囲のゾンビや屍人の首を弾き飛ばす。攻撃を受ければ感染することから、やはり一撃必殺ではあるが受けなければ何の問題もない。そして今の俺に恐れるものなど何もない。


たとえここで死に絶えたとしても本望だ!


ユノは後方援護に回り狙撃を開始、ダンゾウも前線に出て大型のネクロマンサーと交戦している。


周囲の職員たちもそれに触発されて士気を上げ、奮闘している。


この戦い、ひょっとすると。そんな期待が込み上げてきた頃合いだった。


「小賢しい」


手を前に翳したのは黒兜。その先に出現したダークマターが目の前のありとあらゆる存在を消し炭にした。


「なっ………!」


巻き込まれたのは5人程の職員たちだったがそのどれもが最初からそのにいなかったかのように跡形もなく消し去られたのだ。


魔術もテクニカルスキルも使えない俺たちからすればその攻撃は異次元でチートもいいところだった。


あんな奴にどうやって勝てってんだよ!何か弱点か対抗策を見つけない限りこの状況は覆らねぇ。っていうか下手するとあいつ1人で全滅させられるっていうのもあり得るぞ……。


俺は最前線から一旦下がり呼吸を整える。今の一撃で少なからず職員の心を粉砕され戦意喪失しているかもしれない。何か策はないかと思案していたその時、


「待たせたな!」


大量の足音と熱気を帯びた数千人もの武装した民兵たちがこの瞬間到着したのだった。


「よくぞここまで持ちこたえてくれた!」


先頭で指揮をとるのは副統括キースハインドだ。中央奥にはシンジさんの姿もある。後方の指揮を任されているのだろう。


「勇敢なペルーの民よ!これが最後の戦いだ!!ここで奴らを殲滅、撃退しなければ我々に未来はない!気合を入れろ!!」


「おおおおおおおおおおぉおぉお!!!!!」


ここに来てシェルターアルカディアの最大戦力が総集結したのだ。そして、これによりこの空間にかつてない闘気と士気が生まれる。住民たちに恐怖という感情は見られなかった。全員が死ぬ覚悟を既に決めているのだ。


まさに決死隊といったところか。


「おもしろい。死の狂宴を始めよう。骨よ。骸よ。我に同化せよ」


しかし、このときはまだ誰も気づいてはいなかったが、この死王デスマーチを倒さない限りこの進軍も敵の増殖も止まらないのだった。




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