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血と復讐のヤルマール  作者: しのみん
2人の狩人
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静かな並木道

俺とマナはハインの北門を出たのちにハイナギ山の麓を目指し足を進めていた。


現時点での目的地はハイナギ山を越えた先にあるコロナ城である。コロナ城まで辿り着くルートは2つありハイナギ山を頂上まで登り、下山するルートと迂回ルートである。


「せっかくだしハイナギ山、登っとくか」


「私ハイナギ山は初めて登るからちょっと楽しみだな〜」


多分もう少ししたらそのワクワクが無くなってるかもしれないというのに‥‥


俺のプランではマナの修行に付き合いつつ旅を続け、校長に関する情報を収集する感じでいこうと考えているが、計画なんてしたところで何が起こるかなど誰にもわからないから期待はしていない。


「なんか山登りとか久しぶり過ぎてもうヤバイわ〜ハイキングみたい!」


「テンション高いな。一応マナの修行のために行くんだけど」


麓まで続く並木道を進む。この辺りはモンスターも出現しないセーフティーゾーンだ。


「修行って何するの?」


「生き残るために必要なすべてだ。体術、魔術、射撃、剣技、弓技、採集、採掘、調合‥‥‥」


ハンターならば基礎知識くらいはついているだろうがいざ実践してみるとなかなか難しい。


「そんなにあるの!?」


「ハンターの三原則を教えてやろう。1つ、ヤバイ時は逃げろ。2つ、負け戦はするな。3つ、死ぬな。だ」


取り敢えず逃げて隠れたらだいたい何とかなる。それでもヤバイ時は転移型結晶に頼ることになる。


「わ、わかった」


「マナ、お前は白魔術が得意なんだって?」


「うん。黒魔術よりも白魔術が好き。姉さんの影響もあるかな」


「ならばマナには白魔術を極めてもらおう。ヒーラーとしても使えるしレベルによっては召喚もできる」


召喚とは使い魔を呼び出し、使役する魔術。レベルによって何が召喚できるかは変わるが、最高で神話クラスの偉人やモンスターも呼び出せる。


魔力消費はえげつないほど持っていかれるが役に立つ魔術の1つだ。


それよりも先に基本的な魔術を覚えてもらわねば話にならないからそこから始めよう。


「正直、俺は白魔術があまり得意ではない。クエンやフラッシュジャンプ、キュアルなんかは詠唱可能だが、瞬間移動できるリターナ、時空神の力を借りて時を止めるクロノスなんかは使えない。だからそこをお前に任せたい」


そのために彼女を暗黒面に堕とすわけにはいかない。

俺と同じ道を歩ませてはいけない。


「は?そんな魔術あるの?厨二病なの?なんなの?」


「厨二病?ふざけるな。マジでやってもらうからな」


「はい?時空神?クロノス?いやいや痛いわ〜ネオさん〜冗談キツイっスよ〜もっとクールな人だと‥‥」


「おい、勘違いするな」


「深淵の闇より目覚めし暗黒神、ロードオブエンペラーよ!今こそ目覚めの刻だ!5億年の眠りから覚醒し、漆黒の闇より降臨せよ!ダークネスカオスクラッシャー!!」


よし、黙らせよう。


「マウスバインド」


マナに魔術を発動し、お口をチャックする。しばらく口が開かなくなる。ちなみにこの魔術で火炎竜のブレスを防ぎ自爆させられるし、魔術の詠唱も止められる。

なかなか便利。チンピラを黙らせることもできる。

かかりさえすればだが。


「んん!ん〜〜!!」


そのうち麓の小さな村に着くだろう。それまで静かに歩かせてもらう。


気温は温かく、並木道には木々が青々と生い茂っていた。太陽が燦々と輝いて隙間から木漏れ日が眩しく2人を照らしていた。俺たち以外にもちらほら人が見られてピクニックを楽しんでいる。


ハイナギ山の麓から先は立ち入り禁止区域で一般の人は近づくことすら許されない。ハンターでも山の中腹あたりからはシルバー級またはゴールド級以上の資格がなければ進むことができない。


今回はブロンズ級のマナとプラチナ級の俺がいるから入ることができる。保護者同伴みたいな扱いだが修行のためなら仕方ない。


「俺一人でお前の面倒を見るのは大変だからあと何人か教育係が欲しいところだな」


今ならマナに何を言っても口ごたえされる心配はない。

ソロだった俺が言うのもなんだが、ハンターは多い方がやはり有利だ。もっと言うと連携が取れればリスクが一気に下がる。


理想は4〜5人。

それ以上は立ち回りにくくなる上、リーダーの指示が通りづらくなり戦闘中にすれ違いが生じる恐れがある。


その分、一人当たりの分け前は下がるが連携によってはソロを上回る効率で戦えたりもする。



「まぁ、マナの教育係は旅の途中で適任者がいれば拾っておこう。白魔術の使い手が見つかるといいな」


さっきから閉じた口を無理矢理開けようと躍起になっているマナに俺は言った。


可哀想だからそろそろ解いてあげよう。


パチンッ!と指を鳴らしてマナにかけた魔術を解除する。


「ネオ!何してくれてんのよ!」


「まぁ、少し落ち着けよ。どうこうしてる内に麓の村が見えてきた」



いつの間にか、さっきまで辺りで楽しそうにくつろいでいた家族やカップルも見当たらなくなってきた。

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