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血と復讐のヤルマール  作者: しのみん
2人の狩人
36/84

目指すべき場所

1日後


「準備は整ったな?」


血で汚れた黒のコートを処分し代わりに漆黒の狩装束を見に纏い、身長よりも大きい鎖で固く閉ざされた棺桶を背負い俺はマナに尋ねた。


「うん。唯一心残りなのはユノやダンゾウ、レオトと連絡がつかないことかな。やっぱり気になるや」


前のパーティメンバーか‥‥24時間前には想像もつかなかった状況だろうな。


俺も緊急でペルーに鬼殺しに行ったから俺にも当てはまると言えばそうだが。


「生きているなら必ず再開させてやるから安心しろ」


「生きていれば‥‥か‥‥」


少し諦め気味な表情を浮かべたがすぐに笑って誤魔化した。


天気は晴れ。昨日の雨は夜中に止んだようだ。ハインの北門に立ち、山の向こうを見据える。


さぁ、新たな復讐への旅が始まる。


「で、これから何処行くの?」


「あの前方のハイナギ山を越えて、その先にあるコロナ城まで行く」


あの山に生息するモンスターはこいつにはいい相手だ。命の駆け引きが成立するくらいのちょうど良さ。


そしてその先のコロナ城には‥‥‥


「おい、そこの棺桶」


「シャドーアヴォイド」


背後から聞こえた声。と同時に俺は回避黒魔術を発動した。直後に放たれた弾丸がさっきまで俺と向かい合っていたマナのすぐ横を通過する。


シャドーアヴォイド。

サンダル大学、校長がナイルを殺めたシャドーキルに派生する魔術。

闇の中に身を潜め、敵のターゲットから逃れ、攻撃を回避する。もちろん万能ではない。


なんでも回避できるわけではなく、魔法攻撃なんかは回避が難しくなる。鬼の雷撃もこれでは完全には避けられない。


暗闇の中で発動させることにより、効力を高めることも可能だ。


校長のシャドーキルの場合は身を潜めた状態で敵の背後に忍び込み、敵の体躯の影から攻撃する技だ。


シャドーアヴォイドよりもワンランク上のスキルとなる。


「ちっ」


唐突の襲撃だが、俺はずっと追跡されているとわかっていた。そして俺にだけ殺意をむき出していることも。


こちらはいつでも万全の状態なんだよ。


発砲した弾が空を切ったとわかった途端、敵は間合いを取った。


俺がどこから姿を現してもいいように距離を取ったか。


しかし、俺のシャドーアヴォイドには身を潜めたまま移動ができない。


俺はすっと黒魔術を解いて初めて敵と対面する。


第三者から見れば何もない空間から姿を現したように見えているのだろう。


「その単発銃で背後から俺の棺桶を貫通できるとは思えないが、所有物なんで」


左手には1メートルほどの長さの単発銃、右手には片手剣でも軍用として使われる湾曲した幅広の刀身が特徴のククリナイフ。


装備は比較的軽装で黒地の布に身を包ませてフードを被っている。口元も黒のマスクで隠れているため表情がはっきり確認できない。


素早さを重視した装備か。


「お前、アサシンか?」


誰かに殺人でも依頼されているのか?

まぁ概ね見当はつくが。


「答える義理はない」


まだこいつの実力がどれほどのものかわからないが、果たして棺桶の武器なしで勝てるか‥‥。


だいたいの敵は武器を取るまでもなく魔術か体術で勝てるが。


「マナ、こいつを殺せ」


「えっ?!」


「聞こえなかったか?こいつを殺せ」


「いや、聞こえなかったわけじゃなくてですね」


「躊躇うのか?もう戦闘は始まってるんだぞ?」


「でもそいつネオに用があるんでしょ?」


用ってなんだよ。しらねぇよ。


くだらない会話をしていたら単発銃の引き金を引く音が聞こえた。


問答無用か‥‥‥


「いいから殺れ」


しょうがない。


シャドーアヴォイド


「あ!消えた!おい!」


観戦するとしよう。

あのアサシンが勝つのに1000クラン。


マナとアサシンの目と目がぶつかる。


アサシンは単発銃の銃口をマナに向けた。


「え?ちょっと待って。話し合おう」


バカかこいつ。


銃声とともに弾丸がマナの脳天めがけて放たれた。

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