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血と復讐のヤルマール  作者: しのみん
悲劇の始まり
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絶望

「クエン!」


カンナがさっき唱えた魔術を再度詠唱する。


やはり接近戦においてクエンは有能な魔術だ。身体の表面に魔力の膜を纏わせ、攻撃を無効化する。

そう簡単には壊れない上に消費魔力も少ない。


俺は心置き無く攻撃に専念することができる!


ヴァンパイアは腕の一部を性質変化させ、爪をまるで一本一本が剣であるかのような長さに変化させた。


え?そんな技あんの?というツッコミを入れる間もなく猛スピードでこちらに接近する。


「リフレックス!」


今度は自分で魔術を発動させ、自らの反射神経、動体視力を一時的に高める。


「速い!」


リフレックスが自分の身体に反映されるときにはすでに相手は俺の目の前までーーーーー


キンッ!と両者の攻撃がぶつかり合い、剣戟の響きがこだまする。

相手はもう片方の腕で俺の首を取ろうとする。


それを剣で防ぐほどのスピードは俺にはないが、かわすことならなんとかなる!



ヴァンパイアの左手から伸びた爪が俺の頭上をかすめる。


だが俺は奴の攻撃を剣で受けたときに一発でわかった。


人間ごときがヴァンパイアなどに敵うはずがないということを。ましてやたかが大学生の職業にすら就いていない未熟者に。


俺の剣術でどうこうできる相手ではない。こいつは。


そんなことを考えている隙すらないこともわかっていた。怒濤の連続攻撃が迫ってくる。


「アクシリアリーマジック・アサルト!」


カンナの攻撃力をアップさせる補助魔術が発動された。


テクニカルソードスキル・ケンプファー


剣術で今の俺が最も攻撃力を発揮できる剣技であるスキルを発動させ柄にパワーを集中させる。


「はあぁああああ!!」


攻撃力を魔術と剣技で高めれば!


だがこの戦いで俺が圧倒的に劣っているのは攻撃力ではない、スピードだ。


「遅い!」


奴の攻撃を防ぎきれていないのは誰の目から見ても明らかだった。ただ受け流しているだけ。そこには確実に隙ができる。


そして相手はその隙を見逃すことなく的確に突いてきた。


俺の剣撃を爪で振り払う。パリィだ。


「圧縮風圧衝撃波!」


何!?


奴のその言葉と同時に身体にまるで巨大な鉛弾が貫通したかのような衝撃が走り、その身体は5メートル先まで吹き飛ばされた。



「カハッ!!」


なんとか意識を失うことだけは免れたが、まだ立ち上がることはできなかった。状況は絶望的だ。


「ネオくん!」


カンナの呼び声が背後から聞こえる。返事をすることはできない。


「なぜ防御型魔術とやらが効かなかったかわかるかね?」


俺たちにトドメをすることなくゆっくりこちらに近づきながら問いかける。衝撃波の力で肺が圧迫されて話すことも魔術詠唱もままならなかった。


「一撃目で私が導き出した答えは、その魔術は物理攻撃を対象とする物であり、魔法や衝撃波の類は防ぐことは不可能である。というものだ。あくまで憶測だがね。違うか?」


その通りだ。クエンは物理攻撃のみには防御型魔術最高峰の力を発揮するが魔法攻撃または特殊攻撃に関してはなんの効力もない。カンナが肉弾戦を想定してこのアビリティをつけてくれたのだろうが、奴には通用しなかった。


「何か言い残すことはあるか?俺は後ろの女に用がある。貴様は‥‥‥必要ない」


そういえば1番最初になんか言ってなかったか‥‥見つけた。とか何とか。カンナのことか?


カンナの美貌に一目惚れしてしまったのか、ナンパ相手でも見つけたのか知らねーがこんなヴァンパイアにカンナを手出しされたくはない。


この状況で俺が彼女を守ることなど100パーセント不可能だった。


井の中の蛙大海を知らずとはまさにこのことか‥‥

名門大学とかいうクソみたいなプライドだけを持ち、それに慢心し、自惚れ、この世界の広さを知ろうとしなかった。俺はなんてバカなやつなんだ。それを死ぬ間際になってこんなヴァンパイアに追い込まれるまで気づかない自分の愚かさに心底後悔する。


ここで‥‥‥死ぬのか。俺も、カンナも。

わけのわからぬまま、他人の都合に逆らえぬまま。


俺はたった1人の女の子すら救えないのか!!


「さらばだーーーーーー」


俺を差し置いて逃げることを許さないカンナはただ目の前の化け物に恐怖の眼差しを向けたまま立ち尽くしていた。

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