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血と復讐のヤルマール  作者: しのみん
新たなる希望
22/84

ゴブリンを倒そう!

ーーレオトーー


その晩


クエスト

襲来の小鬼たち

難易度 easy

報酬 50クラン

依頼主 主婦のババア

内容 最近ゴブリンたちがペルーの近くでうろうろし始めて洗濯物を取って行ったり私の下着を盗んだり、畑を荒らしたりして困ってるんじゃけ。

3体ほど殺してくれたら報酬をあげよう。


このババアの下着に需要があるとは到底思えないがゴブリン界では価値が高いのかもしれない。


ヤベェ、なんかゴブリンがババアの下着で遊んでる姿を想像したら気分悪くなってきたわ。


俺たちのパーティはまだ新人ということもあってこのペルーに定住してハンターの活動を行わなければならない。

上級のハンターにもなると移動して狩りを行うのを繰り返し、拠点を次々と変えながら活動する者も多い。


だが後者はかなりの危険が伴う。

野宿となると常に安全を確保しながら行動する必要があるし、夜襲にも気をつけなければあっという間に地獄行きだ。


パーティで移動するならまだしもソロでハンティングするなんて考えられない。


街に着くまで一睡もせずに過ごすつもりなのだろうか?

それとも敵が来たら索敵スキルみたいなもので寝ていても一瞬で覚醒して即戦闘可能なのだろうか?


まぁいいや。まだ俺たちには関係ないだろ。


「明日も早いしはよ寝よ〜」


あくびをしながらちらりと時計を見て明日の出発時刻を確認する。


なーんかマナのやつが明日は話したいことがあるからちょっと早めに集会所まで来いとかいう連絡きてたな。


タブレット端末を開いてマナからの連絡事項を確認する。いつもクエスト等の連絡はマナが送ってきてくれる。もちろん受注するクエストはみんなで決めるのだ。自分たちの実力に見合ったクエストを見定めて受けなければ命を落とす可能性も高くなる。だから3人が納得する条件でないと無闇にクエストにも行けないのだ。


俺たちの拠点、ペルーというこの町はオーガス共和国の中でも大分田舎の部類に入る。まぁハンターなんてみんな田舎で活動してるけどさ。


武器屋、集会所、ペルーの湯、農場、雑貨屋にちょっと大きめのレンタルショップやレストランがぽつぽつあるぐらいで都市部のように品揃えが豊富とは言えない。


まぁ所詮、田舎だよ。家もそんな豪華じゃねぇし。


だからと言って今の生活に不満があるわけではない。

仲間もいるし、それなりに楽しいし、ハンターだって危険だけどやりがいのある仕事だと思ってる。この暮らしに満足している。


考えてもしょーがねぇ。さっさと寝よう。





翌日


「ヤベェ遅刻だ!」


うわー、マナに怒られる。。面倒くせぇ〜


ダッシュで装備を確認し、身支度を済ませる。集会所まではそこまで遠くない。


まぁ集合時間には間に合いませんけどね。。




「レオトのやつ遅い!」


「そろそろ40分かな〜」


集合時間よりも早く集まったダンゾウとマナが集会所の宴会用の長椅子にもたれかかって愚痴をこぼす。


「もう行っちゃう?ゴブリン殺しにさ!ユノがいるから余裕だよきっと」


予定していた新メンバーの紹介もダンゾウはあっさり承諾し、歓迎の挨拶も終わってしまった。レオトに早く来るようにと連絡したのはそのためだったのだ。


「マナちゃん、殺しとか言わない。でも確かに連絡つかなかったしね〜」


「ユノは別に待つのかめへんけどな。レオトってまだ顔見てないし」


テーブルを挟んで2人の逆サイドの長椅子に座るユノも少し気を使うような感じで言った。さすがに顔も知らないパーティメンバーを置いてきぼりにしてクエストに出かけたら第一印象が悪くなると考えたのかもしれない。


レオトを放って行くかどうかを検討し始めたその時、集会所の扉が勢いよくガチャリと開いた。


はぁはぁ息を切らしながら心なしか申し訳なさそうに現れた青年、レオトである。


「すまねぇ、遅れた‥‥」


「見りゃわかる!この遅刻魔!」


顔を見なくてもマナに睨まれてるのがわかる。あいつは怒らすと怖いからな〜


「レオト、これは遊びじゃなくて仕事なんだからね!命懸けでこれから戦いに行くのに遅刻するんじゃないわよ!しかも今日は紹介したい人が居るってーーーーー」


うわぁ〜すげぇお怒り‥‥


隣の巨乳の女の子がマナを落ち着かせようとぽんぽん肩を叩いている。ありがとう巨乳。


って誰だよ。


「ところでその女の子は‥‥?」


俺が呟くと彼女もこちらに気づき、近づいてきて自己紹介を始めた。


「あ、紹介が遅れたなぁ。あたしの名前はユノ。君らと同じハンターやで!これからこのパーティで一緒に戦いたいからよろしく!武器は銃を使ってんねんけどええかなぁ?」


ツヤがある長めの黒髪にぱっちりした目、茶色のコートのトグルは開いていて中に白のトレーナーから強調された胸が出ている。

背中に銃がはみ出したミリタリーバッグを背負っていてチェックのスカートの下に黒タイツを着用した女の子って感じの服装。


艶やかな容姿の割に明らかに攻撃系の武器を持つギャップとその美貌を前に俺は、


「も、もちろん!こ、こちらこそよりょしく!俺はレオト。一応、盗賊装備でやってます‥‥!」


噛んだ‥‥‥。初対面で動揺し過ぎた。死にたい。


「そんな緊張せんでええのに〜おもろい

なぁレオトは〜」


当の本人は俺とは正反対でケラケラ笑いながらフォローしてくれてる。

何この人すんごいフレンドリー。人脈とかすげー広そう。


一通り自己紹介が終わると4人はサマリン密林に向かって進み始めた。


途中で誰かさんがネバネバになるということもなく、無事4人は密林に到着した。




サマリン密林入口付近



「みんな、俺に提案がある」


モンスターの出なさそうなスペースを確保して作戦会議を行う。

普通は事前に話し合っておくものなのだがこのグダグダパーティに至ってはそんなものは関係ない。


「まず、ゴブリンを見つけたら声をあげず落ち着いて全員集合させるように。合図を送るか無線で連絡を取ってから戦う。絶対1人で仕掛けないように!で、機動力のある俺がまずゴブリンに接近し奇襲をかける」


「機動力のある?!遅刻しといて?」


マナが説明の途中で茶々を入れる。ウザい。


「マナちゃん、ちょっと黙ろーか‥‥それから続いてダンゾウが敵に突撃してどちらかの相手をしているゴブリンを手の空いている方が攻撃する。ユノは遠距離から射撃してほしい。マナは後方で回復に当たってくれ。ヒーラーが攻撃を受けてやられたら元も子もないからな」


多分これで大丈夫‥‥なはず‥‥。


「なあ、レオト‥‥‥」


作戦の説明を終えて歩き出そうとした時、ユノに呼び止められてしまった。

ベテランの彼女に上から目線で説明しちゃったから怒らせたかな?


「ゴブリンが複数襲ってきたらどうするん?」


あぁ〜1体だけじゃないもんな。密林だから何体も普通に来るよな‥‥当然ながら。


「もし奇襲されたら大声で叫ぶかなんかでメンバーを呼ぶこと。ヤバかったら即逃げること!」


「りょーかい」


ユノがピシッと敬礼のジェスチャーをする。銃を持ってるからまるで軍人のようだ。かわいい。


「では行こう!」


3人はあまりお互いの距離がを離れないように密林を進んでいく。ユノに限っては木の上を渡りながら索敵しているみたいだ。


「1匹おったで〜」


ユノが下の3人に木の上から合図を送って30メートル先のゴブリンを確認する。


ってゆうか1って‥‥‥もはや虫のような感覚なのだろうか‥‥?


無言で後ろのダンゾウにゴブリンに接近するようにサインを送る。


全身深緑色の肌に布地の服を着用している。腰からハンドバッグを下げている1メートルくらいのゴブリンだ。


まずは深呼吸して自分を落ち着かせ、まだ敵には気づかれていないことを確認する。この角度からならゴブリンの背中を取ることができる。うまくいけばバックスタブを決められる。


短剣を腰から引き抜いてゴブリンの死角からうなじを狙って駆け出した。


レオトの足音に瞬時に反応したゴブリンは棍棒らしきものを構えてガァガァと奇声を発している。


気づかれた!やむを得ない。正面から攻めるしかねぇ!


短剣の初期スキル、ターゲットに短剣で2連続で斬りつけるダブルスタブを繰り出すも棍棒で防御される。


「ダンゾウ!頼む!」


「レオトくん、どいて!」


ダンゾウの大剣に骨を砕かれる前に姿勢を下げて右に緊急回避し、攻撃を入れ替わる。所謂スイッチというヤツだ。


ダンゾウが驚異的な力で一気に大剣を振り下ろしゴブリンの棍棒を粉砕する。ゴブリンはその衝撃に耐え切れず奥の大木まで吹っ飛んでいった。


え?何この馬鹿力。コイツの攻撃力いや破壊力は一体‥‥


俺が吹っ飛んでいったゴブリンにトドメをしようと大木に近づいたその瞬間だった。


「レオト!上や!」


ユノの声が聞こえたときには木の上からゴブリンが4体、ツルを使って器用に降下しながら刃物を俺に突きつけた。


あっ、ヤベッ。終わった。。


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