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鈴姫との出会い3

京都駅から十二分、JR奈良線で東福寺までいき京浜本線に乗り換え二駅目のその駅はホームの柵や柱が朱色に塗られており普通の造りではないことがわかる。


正月や大晦日ではこの小さな駅には人が多く訪れ大きな賑わいを見せ、交通規制や警察が多数出動する。その駅こそが稲荷駅である。


そしてその駅名のことから入り口に大きな鳥居と狐が出迎えてくれる神社こそ伏見稲荷大社である。


―伏見稲荷大社は稲荷大神様を御祭神とし、全国で三万とある稲荷神社の総本宮である。御利益は主に商売繁昌・産業興隆・家内安全・交通安全・芸能上達の守護神として信仰を集めており、古くは朝廷が、雨乞いや止雨と共に五穀豊穣を願われたり、国の安穏を願われるなど公の願い事が多く記録されている。


「久しぶりじゃな、いなりと会うのは!!」

「誰だよ、そのいなりって」

「お主は本当に馬鹿じゃな。ここの神様に決まっておろう」


龍佳は鈴から本日二回目の馬鹿発言をいただく。そして毒舌姫は入り口に大きな朱色の鳥居の前で一礼する。これは一揖といい鳥居をくぐる際は軽く礼をしなければならない。


「えっ鈴みたいな神様がまたいるのかよ」

「お主は根の底から無礼な奴じゃな。言っとくがいなりは寡黙てとても美しいからな。手出したら大阪湾に沈めるから覚悟じゃぞ。 おーい、いなりはいるか! 鈴じゃ」


毒舌姫は本殿の前でそう叫び挙げ句の果てには本坪鈴をガラガラと鳴らす始末である。こんな罰当たりな人はいないはずだが本人が人ではなく神様というのが問題である。


すると本殿の扉から上品な着物をきた狐の耳が生え尻尾が付いてる女の子が出てきた。


「‥‥‥鈴‥‥‥うるさい」

「おーいなりか。久しいな、会いたかったわ」

「‥‥そっちも‥‥もよかった‥大伸一代は嫌い‥‥」

「まあそう言うな。あれは私が独断でやったことだ」


「‥‥だけど‥ん‥‥鈴あれ誰‥‥」

「あー私の遠い先の孫だ。十三代目御所院当主の名は龍佳だ」

「‥‥あの御所院の」


するといなりは13代目当主に対し、着物を正し土下座をする形で頭を下げてきた。


「‥‥十三代目当主殿、挨拶申し遅れて‥‥申し訳ありません。私名をいなりと‥‥申し‥‥ここ伏見稲荷の守護をしております。御所院一族には‥‥毎度の鳥居の奉納‥‥誠に‥‥感謝しています」

「いやいや俺なんもやってないし頭上げてよ、いなりちゃん」

「ほかにも‥‥本殿の改装や‥‥稲荷山美化活動でも‥‥多額の寄付金、いなり一族代表して‥‥感謝の意を申し上げます‥‥」


「もうよいだろ、私たちも絶品の油揚げを頂いておる。お互い様じゃ」

「あれってここのやつだったの!」

「お主そんなのも知らないであんなに食べていたのか。本当に無知だな、勉学やり直せ」

「鈴言い過ぎだ。あの油揚げここのだったのか! 本当に美味しいよ」

「‥‥それは‥‥ありがとう‥‥コン」


いなりは顔を赤くして着物の袖で顔を隠し、しっぽも活発に動いておりどうやら嬉しいみたいだ。


「そういえば‥…鈴たちはなにしに‥‥きたの」

「こやつの夏休みの宿題じゃ。旅行先の場所を題材にして俳句にするらしい」

「なら‥‥稲荷山の山道だったら‥‥いいの‥‥思いつく‥‥」

「あ~あそこか。あそこなら自然豊かだし無知のお主でもまともな俳句は作れるじゃろ」


 そしてやってきたのは稲荷山の山道である。簡単にいえば鳥居がたくさんあるあの道であり、空高くそびえる大きな木久がトンネルを作っており薄暗い日中を造りあげている。そのため盆地の暑苦しい京都でもここは涼しく見所のある場所出る。


「龍佳、耳を澄ませ。風で木が歌っておる」

「あ~初めて登ったけどいいところだな。鳥の声も聞こえて気持ちがいい。いなりはいいところに住んでるな」

「それは‥‥嬉しい‥‥ありがとう‥‥コン」


いなりは少し顔を赤くしまた尻尾をぱたぱた動かしている。それに対して鈴姫はこちらを睨みつけている。


「お主あんだけいなりを誑かすなと言うたのにあとでたまきを顔面になすりつけてやる」

「なんで俺がそんなことされなきゃいけないんだよ」

「うるさい男じゃな。早う俳句をつくらんか」

「鈴‥‥怒ってる‥‥」

「怒っとらん! ふつうじゃ」

「いなりなんで鈴は怒っているんだ」

「わからない‥‥鈴‥焼き餅‥‥」


 なぜが鈴は理不尽にも少年のことを引っぱたいた。そして稲荷山の山道をすたすたと先頭をきって歩いていった。

 

 やっと怒り姫に罵倒されながらもできた俳句がこちらである。


 ふしみの地 なびく風の 森の音


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