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帰省3

本来、今日、明日は御所院家の集まりだが、瑠莉と本家の祖父とも顔見知りであるため今回の目的の参加を許している。


「悪い悪い。おっ、たまきは寝むそうだな」

「あぁ。あんたのこと待とうとして玄関の前にいたんだけど、疲れて眠ちゃったみたいね」


―『たまき』は少年が拾ってきた猫で、北海道の平野にある真っ白の雪のような毛並みをしている。今は璃莉が大事に飼っている。そのせいか猫が大好きになってしまい、よく近所の野良猫とじゃれあっている姿を目撃されているらしい。しかしその姿は美しく猫姫と言われてる。


「そういえば…龍佳…、病院はどうだった?」


 おそるおそる瑠莉が聞いてきた。なんだかその瞳はまっすぐな瞳からなんだか冷え切った色をしていた。


「大丈夫だよ。先生も異常はないって。それにこれは瑠莉のせいじゃないだろう」


 すると瑠莉はなにか言おうとしたが、俺は瑠莉の頭を優しく撫でてやった。

そして、自分の左肩を見つめた。


―そう、あの時少年は自分を失った。だがそれは瑠莉を救いだせた証である。

だからこれは誇りある傷跡だと強く感じた。



 夕食を終えると『散歩』と言って外に出てきたが、本当はちびっ子達にアイスを買ってくるように頼まれた。と言ったものの、コンビニは家から下長者町通に向かって十分のところにあるし夜の古都を散歩したかった。


やはり、ここは東京と全然違う。

そもそも高層マンションや高い建物が存在しない。理由は“京都のイメージを保つ”というもので、コンビニやファーストフードの看板も東京とはデザインがだいぶ違う。あとは寺や神社があるためか緑が豊富であるのも一つである。観光ガイドブックの地図を見ればわかるが、緑色をしている場所が多い。


 コンビニでアイスを買い自動ドアからでると、またあのときの視線を感じた。なんだかあの温かくも冷たい感覚。

思わず後ろを見たがだれもいない。


「なんなんだよ。一体っ!」


突然の恐怖に御所の近くの児童公園に向けて走った。児童公園は家とは逆方向だが、もし不審者であった場合人が少ない方が見つけやすいと判断したからだ。なにより不審者を見つけるにはもってこいの場所であり、龍佳はこの公園に詳しかった。左手に付けている時計は九の数字を過ぎている。


「よし、さすがにもう誰かわかるだろう」


 龍佳は児童公園にある大きな外灯の下に立った。周りは真っ暗で完全に闇の世界である。

実は最近改装工事が行われたらしく外灯が撤去されていた。唯一の頼りはこの光。洞窟の中にろうそく一本でいるようだ。


実際ここは選択ミスと感じてきた。

(だが仕方ない…)


「誰なんだ! ずっとつけているのは!!」


暗闇に向かって叫んだが返事はない。返事をしたとすれば、風でざわめいた木々の音だけだ。

 すると突然肩から全身に冷たく妙なものを感じた。


「えっ。体が動かない!」


懸命に体を動かすが全く動かない。唯一動くのは顔ぐらいである。


「なんだよこれ。金縛りか」

「そんなに驚かないでください」


彼の後ろから少女の声がした。その声は天使のような優しい声で、彼女の声をヘッドホンで聞けば別世界へいける気がした。

だが彼には今そんなの関係ない。顔を後ろ向きにしようとしながら怒鳴った。


「誰なんだおまえ!なぜこんなことする。早く離せ」

「注文の多い殿方ですね。まだあなたと顔を合わせることはできません。とりあえず質問をさせてください、あなたは御所院の方ですが」

「ちょっと人の話聞けよ。ちなみにその質問はイエスだ。」

「…イエス?」

「そうだよ。御所院だよ。なんか用かよ」

「やはりあなたでしたか。本家の跡取り次期当主…」

「おいおい。なんの話をしてるんだよ」

「ではまた盆の夜に…。相まみえることを…」


美しい声の少女は彼の耳元でそうささやくとそっと姿を消した。

すると全身に覆われた固く締められている感覚は消え、龍佳は地面の草に倒れていた。


「なんだったんだいったい」


立ちあがり、時計を見ると時計の針二つは十と六の数字を指していた。


「まずいっ!」

慌ててコンビニのビニール袋を持って走ろうとしたが


「アイス溶けている!」


合計二千円弱の家のみんなのアイスがジュースのようになっていた。しかも六十二円のリガリガ君は溶けたアイス枕のようにたぷんたぷんになっていた。


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