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帰省1


一章盆夜の姫



        1


 外を見ると緑の田んぼや畑が次々に流れてくる。たまに麦わら帽子を被った老人、白い軽トラ、昔懐かしい家が見える。だがそれは一秒にも満たない出来事であってすぐに頭の中から消えていく。

―のぞみN700系


東海道・山陽新幹線の東京から博多まで運転している特急列車である。最近造られたものであってとても奇麗である。天井は飛行機と同じように三角形のように造られており、広く感じる。


この窓際でビデオの早送りのような光景を見つめている少年の名前は『御所院(ごしょいん) 龍佳(りゅうか)』。名前は珍しいがあるところを除くとそれ以外は普通の高校生である。名前を名乗ると、「珍しいね」「先祖は貴族か」とさまざまな御感想をいただく。


だが高校生にもなるとだいだいリアクションも予想できるが、よく困るのは電話で名乗るときに必ず一回では聞き取ってくれないことだ。どうしても聞き取ってくれない場合は電話を切るか、山田や佐藤などの有名な名字を使わしていただくことがある。


 肝心のどこに向かっているというと東京駅から新幹線で五つ目の停車駅『京都駅』だ。今日は八月十四日のお盆ということもあり満席だ。サラリーマンや子連れの親、年配の方々などがいるが、高校生一人だけはおそらく彼だけだろう。

車内のアナウンスによると今名古屋駅を出発したようだ。

―次は京都駅だ。 

  

 千年の都、京都―

七八四年に桓武天皇が平安京に遷都したことが始まりである。天皇が住んでいたことで『皇都』とも呼ばれた。

 現代の京の都は数多くの寺や神社の日本文化を残しつつ、新しい物や建物など最も人類の発達を感じることができる場所でもあり、和洋折衷そのものである。京都駅は西日本でも有数の最大級を誇る駅である。

 京都駅の中央コンコースは、四千枚のガラスを使用した正面と大屋根で覆う広々とした吹き抜け構造になっている。その大屋根の下に彼は上を眺めながらエスカレーターを降りてきた。


(何回見てもやっぱりすげぇな~)

そんなことを胸の中で考え駅を出てバスに乗ろうとするが…

ロータリーにはたくさんの人が我もバスに乗ろうと大きな列をなしていた。奥のバス停では軽く二十メートルを越している。

「シャレにならん…」


少年は再び羅城門をイメージとして造られた駅に再びもどる。

彼の実家は京都御所の近くにある。そこにはバスでも電車でも行けるわけだが、バスの方が楽である。後者は乗るために階段を上り下りしなくてはならないし、キャリーがあると大変である。だがバスを待つのはキャリーを持って階段を上り下りするより大変そうであるため、しかたなく切符売り場に向かった。

 京都御所の最寄り駅は地下鉄烏丸線の今出川駅であり、九分で着く。景色はというと地下鉄烏丸線と名の通り地下鉄なため景色ないし暗い。


(つまらないな)

しかたなく携帯を開くが

―圏外


龍佳は小さく溜息をつきスマートフォンをポケットにしまい、電車の広告をぼうっと眺めた。

すると背中から不思議な視線を感じた。それは温かくも感じるが冷たく鋭くもある。とても集中してこちらを見てるのがわかるくらいに。思わず振り向いたが、サラリーマンや観光目当ての外国人や部活帰りと思える野球部の集団といたって不審な人はいない。


 しかも思わず振り向いたせいか、逆に周りから見られる始末になってしまった。彼は恥ずかしくなり、再び広告を眺めた。

(今のはなんなんだ。でもあんなもやもやした感覚は初めてだな)


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