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Black Shiner  作者: 山吹十波
序章
5/14

#01-04 黒色の戦記(序)

遊朱を見送ったあと、咲良は巽と共に医務室へと移動した。

職業柄怪我人が多く出るのでちょっとした病院ほどの設備があるそこには今日の作戦で傷を負った局員たちが臥せっていた。


その中のベッドの一つのカーテンを開けて中へ入る。


「班長、ご気分はどうですか?」

「まったく、若葉さんったら。徹夜明けで戦場に立つなんて無茶はやめてくださいね、ほんとに」

「……そう思うならもう少し寝かせてくれてもいいんじゃない?それより、あの子はどうしたの?」

「もう自宅に返しましたよ。何かあったんですか?」

「とんでもない子ね。初見でLv.2を瞬殺するなんて。しかもあの足捌き。とても常人とは思えないわ」

「まあ、Lv.2相手に拳一つで挑む人もどうかと思いますけど」

「咲良、うるさい」

「そもそも、Lv.2は危険度B+の影獣(シャドウ)ですから単騎で挑むのはやめてください。オペレーターとしては生きた心地がしないんですから」

「大丈夫よ。徹夜明けじゃなかったら私が勝ってた」


拳を握る若葉を見て巽がため息をつく。


「あの子、C-6型(最新機)を使えばもう少し適合率上がると思うわ」

「そんなにですか?」

「平均して75%は出てましたし、最後の一撃の一瞬だけですが96%まで数値は上がってました。確かにC-6型黒柩を用いれば限界突破(オーバーリミット)まで到る可能性は0じゃないかと」

「だって。咲良は今どれぐらい?」

「最大適合率88%、平均70%で能力評価64点、ランクB+です」

「はー……3ヶ月でそこまで上がるとは、若い子の才能って怖いわー」

「若葉さんも2年でランクA、しかも特化戦闘班の班長なんて異例の出世ですよ」

「私の場合は運が良かった――というか悪かったのよ」

「いんや、お前らC班が総合的におかしいだけだ」

「あら、泉堂(役立たず)、レディーの部屋にはノックして入りなさい」

「カーテンのどこをノックしろって言うんだよ。それより、無事か?」

「軽傷よ」

「Lv.2に吹っ飛ばされて軽傷って、どこまでゴリラなんだよお前は」

「それもこれもどっかの班長が役立たずだったせい……で、遊川班長と都賀班長は?」

「あっちは都賀のとこの阿呆が死にかけたぐらいで特に」


死にかけるのは特に、で済ましていい事なのかと咲良は思ったが鞍田も巽もスルーしているのでスルーすることにした。


「それより、あの可愛い子はどうした」

「もう帰ったって」

「そっかー、できれば引き抜きたかったんだがなぁ」

「あんたのところもう頭数揃ってるでしょうに。うちなんて実働班は咲良と私だけよ?」

「仕方ないだろ……前C班メンバーは前回のLv.5の発生で全滅したんだから。本当なら白水もうちに欲しかったぐらいなんだから。何せうちは男ばっかりだからなぁ」

「澪がいるじゃない」

「アイツはオペレーターだろうが。戦場に華を求めてるんだよオレは。そうだ、うちの野郎と白水を交換しよう」

「しないわよ。というか、あなたのところにもいたでしょう、あなたの事が大好きな可愛い子が」

「外見は可愛いけど、アイツ男だからな……」

「我慢しなさいな、ついてるかついてないかだけじゃない」

「そこが問題なんだよ!というか、アイツはしゃき過ぎてD班に移動になったしな」


そう呟いた瞬間背後のカーテンが勢いよく開き、一人の美少女が現れる。


「ボクを呼びましたね!求めましたね!」

「呼んでねーよ!というか、てめーどっから湧いた!?」

「あら、ダメよー真琴ちゃん。あなた、肋骨骨折と肺に孔開いて、ちょっと他の内臓もアレな感じになってて、今絶対安静なんだから」

「都賀!早くこいつベッドに縛り付けてこい!」

「そんな、ベッドに縛り付けてこの可愛いボクに何をする気ですか!?」

「日も落ちてないのに盛ってんじゃねーよ!」

「というかイチャつくなら他のとこでやってくれない?」


やれやれ、といった表情の鞍田に泉堂が何やら吼えているが耳を防いで聞こえないふりをしている。


「まったく、若葉ちゃんは衛生兵なんだから前にでなくていいのよ」

「そうよねー。聞いてよ都賀班長、この男徹夜明けの私無理矢理引きずり出したんだよ。信じられないよね」

「酷いわ!乙女の敵ね!」

「うるせぇ、そもそもお前は男だろうが!あとこの女装をどっかにやれ!D班が来ると場が一気にカオスになるから嫌なんだ!」


確かにカオスではあるが、きっと都賀班長(オネエ)と早乙女真琴(女装)のせいだけではない、と思っただけで口には出さないでおいた咲良だったが、となりの巽も同じようなことを言いたげな顔をしている。


「えっと、私はそろそろ帰りますね」

「あ、咲良。お疲れさまー」

「白水さん、オツカレサマー……ごふっ」

「うおい、都賀、こいつ吐血したぞ!?その癖になんでこんな力強いんだ!?」


未だ抱きついている真琴を振り払おうともがく泉堂だが、全く剥がれる様子はない。


「ぐふっ、これが愛の力、ですよ……」

「都賀班長、泉堂ごとでいいからベッドに縛り付けて来てください。あと、滝原先生早く呼んでください……」

「おいこら、うるせーんだよ。普通に寝てるやつらも居るんだから黙れ」

「お、滝原。早くこの患者なんとかしろ!」

「まずお前が黙れ」


医務室の主、滝原に怒鳴られる班長たちを尻目に巽と共に部屋を脱出した咲良は、着替えるためにロッカールームに向かう。


「巽さんも今日は終わりですか?」

「はい、今日は観たいドラマがあるので。まあ、今日は想定外が一杯で事後処理が尋常じゃないんですが、どうせ残ってやっても終わらないので定時で帰ります」

「いいんですか、それ」

「支部長の許可はとってますから」

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