表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/39

プロローグ

 

「今日も、配達の量が多いな」

 白みがかった髭を蓄える、深い藍色の瞳をした初老の男性は呟きながら、窓の外を見た。風は吹き荒れ、地を打つ雨は滝のよう。彼はそんな天候にため息をつくと、外に向かった。

 そして、ドアを開けたままの恰好で、動きを止める。

 家の前に、男の子が倒れているではないか。我に返ると、濡れるのも構わないように子供へ駆け寄り、小さな体を抱える。昏々と眠る男の子の黒髪は雨に打たれ、前髪は額に張り付いていた。唇は紫色で、歯がカチカチと噛みあっている、微かな音がする。一体、どれほど長い間、この雨に晒されていたのだろう。体は氷のように冷たくなっていた。

「大変だ……早く、温めてあげなければ」

 子供を見て目を伏せ、一瞬ためらった後、家に入れた。タオルで水分を拭き取り、優しくベッドに寝かせ、部屋を後にしようとする。

「……さん」

 何かを求めるように、子供が手を伸ばした。男性は振り返り、ベッドのそばに膝をつくとその手を握る。

「……大丈夫だよ。大丈夫」

 震えるその子に布団をかけ直し、男性は部屋を後にするのだった。


 ――そしてそれから、七年の時が流れる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ