Chapter8
町の一大イベントである花火大会のムードで学校が包まれ始めた頃。
相変わらず加野を目で追いながら、毎日を送っていた。
さすがに、変態かも……俺…………。
あんまり見てると、周りにバレてしまう。
だったらいっそのこと、花火大会にでも誘うか?
だけどそんなことしたら、あいつ拒否するかな。
女を誘うのなんて、かなり慣れてるはずなのに……
そう思いながら、職員室のドアに手をかける。
教師なんて、俺の顔を見れば必ず何か言う。
また面倒なことになったら、加野にまで迷惑かかるかな。
「………加野、いる?」
入るなり近くの日本史の畑中に聞くと、
「西崎!教師を呼び捨てにするな!」
ほら来た。優等生には甘いくせに、俺みたいなのにはこんな扱い。
「だから、いんのかって聞いてんだよ」
「きさま………」
「畑中先生?………西崎くん?」
畑中の声に驚いたのか、後ろから加野が顔を現した。
「加野先生……」
「………加野、ちょっと」
反射的に困惑する加野の腕を掴み、外に出た。
背後からまだ畑中が何か叫んでいたが、振り返らずにまっすぐ人気の少ない階段の踊り場まで加野を引っ張っていく。
「ちょ……西崎くん、どうしたの?」
周りに人がいないのを確認すると、ぱっと手を離した。
勢いあまって連れて来たものの、これからどうしたらいいのか。
「…………」
「…………?」
「…………」
長い沈黙を破り、高橋に倣った直球でいくことにした。
「………だからっ……その、花火大会、行く?」
やっべ。何で緊張してんだ、俺!何で赤面してんだ、俺!
一瞬きょとんとした加野は、物事を理解したようで
「あ〜うん!」
よかった………と安心しきった次の瞬間。
「でも、誰と行こうかな〜って考えてて」
………
………………?
………………………え?
……もしかして、俺が勇気を出して誘ってることに、気付いてない?
緊張が高まっていたせいか、妙に力が抜けて不思議と笑いが込み上げて来た。
俺がなぜ笑ってるのかも、全く理解できてない加野。
そんな加野がたまらなく愛しくて、笑いが止まらなかった。
「じゃなくて、俺と」
「へっ?」
「一緒に行こう」
案外さらっと言えた。
加野は少し考え、俺の好きな笑顔でこう言った。
「うん」




