Chapter4
春の夜は、好きだ。風や温度、匂いの全てが心地よい。
昔から春の夜はよく家をフラッと出る。何をするでもなく、あてもなくふらふらしている。
こんなこと、誰にも話したことがない。
こんな乙女な奴だと思われたら、確実にナメられる。
「智也!こんな時間にどこ行くの?」
「………」
「智也!」
わざわざ動作の目的を聞かれるのは好きじゃない。
母親の声も無視して、夜の街に繰り出した。
行き交うホストや金持ちそうなキャバ嬢の間を通り、いつものように目的もなくふらふら歩く。
こんなとこにいるのを見られるから、恐そうなイメージになるのか。
「や、やめてください!」
「なぁ〜そんな堅いこと言わずにさぁ〜」
「ちょっと気持ちぃぃことしよってだけじゃん?」
「ほんとに困るんでっ!放して!」
思わず足を止めてしまった。
今までこんな状況に遭遇しても、一度目を向けるだけで無視して通りすぎていた。
こんなのに捕まる方も悪いと思っていた。なのに………
「誰の女に気安く触ってんだ?」
「あぁ?」
「聞いてんだ、答えろ」
相手の男の片割れが、ふいに顔を強張らせた。
「お、おい、やべーって……」
「何が」
「こいつ、城咲高の西崎じゃん!やべーって!」
「くそっ!行くぞ」
女を残して走っていった。何でそんなに関係ない奴にまで恐れられてんだ?
通り過ぎようとしたとき、絡まれていた女が顔を上げた。




