Chapter3
仕方なく美咲の言う事に従った俺は、課題を腕に抱えて廊下を歩いていた。
と、視線の先に加野の姿が映った。あちらも同様、大量のプリントを持って向こう側から歩いてくる。
無視してすれ違おうとしたその瞬間、俺の視界が一瞬白くなった。
冷静に辺りを見回すと、足元に風で舞い上がったプリントが散らばっていた。それを加野が必死でかき集めている。
プリントの上を踏み付けて行こうかと思ったが、目の前でしゃがみ込んでいる加野が無性にうっとうしくて、黙って床のプリントを集め始めた。
「西崎くん?!」
目を見開いて俺を見つめる加野。
「…………」
「拾ってくれるんだ〜ほんとにありがとう!」
「……べつに、歩くのに邪魔だったから」
「あっ、そうだよね!私ほんとに鈍臭くて。参っちゃうよね(笑)」
「………そこ、残ってる」
嫌みも嫌みととらないのか、この女は……。
脳天気というか、過度なポジティブというか………。
「ありがとう〜すっごい助かった!」
「…………べつに」
「西崎くんってちょっと恐いイメージあったんだよね〜。他の子とは違うっていうか」
そんなこと、面と向かって本人に普通言うか?
「でも、やっぱり優しいんだね」
「……はぁ?」
「それだけ。それじゃあ、また!」
…………変な女。俺が『優しい』?
でもあいつ、俺を避けたりしなかった。
………他の先公とは、何か違う。
これが、俺と彼女が初めて言葉を交わした瞬間だった。




