Chapter1
それまでの俺は、何に対しても無気力で、思い立ったら学校に行き、ノートもとらずに自分の世界に篭っていた。卒業さえも眼中になく、飽きたらやめればいいと思っていた。
周りとも壁をつくり、その内側へは誰も入れようとはしなかった。そんな俺を相手にする奴も一人、また一人と減り、しまいには学校では浮いた存在になっていた。
教師さえも俺を《問題児》扱いをする。最初は好意的に接してきても、自分の思い通りにならない生徒は見捨てる。そういうものだ。
そんなある日、教壇に上った彼女に、初めて会った。
彼女の姿が目に入った瞬間、目を奪われた。
茶色がかった長い髪が、黒いスーツの肩にかかり、首には上品なネックレス。
色白の顔に、形のよい鼻と唇。そして何より、彼女の瞳に、心奪われた。
彼女は『加野亜希』と紹介した。
今年から来た、新卒新任の英語教師。何でもJ大卒らしく、ロスにも留学していたらしい。
高学歴の金持ちエリートは、最も嫌いなジャンルだ。賢い奴ほど何も知らないくせに近寄ってきて、偽善的な言葉をかけて去っていく。
解りやすい加野の授業は好評だった。さらに気立てもいい彼女は、たちまち校内の人気の的になった。
信じてなかった。
誰でも人間なら、裏には黒い影があるものだ。
どんな善人でも、内側には醜い感情を潜ませている。
人を信じる奴が馬鹿をみる。信じて壁の中に入れたら、自分が傷つくのを知っている。だったら誰とも深く関わらず、一人でいる方が、あとで傷つかなくて済む。
そう、思っていたから。




