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Dearest  作者: 奏多
13/17

Chapter12

ついたのは、保健室。



俺が鍵を取ってきて開ける間、加野はおとなしく待っていた。



「………警戒、しないの?」



普通の女なら、夜の保健室に連れ込まれそうになったら少しは警戒するだろう。



べつにやましいことをするわけでもないが、不思議に思って聞いてみた。




「へ、何で?」


「だって……夜の保健室とか、フツー焦るだろ」


「何で?西崎くんだもん」



………俺は男としても見られてないのか。


まぁ、そういう純なとこがいいんだけど。



「………入って」



加野を椅子に座らせると、棚を探ってガーゼや消毒液を出した。


黙ってピンセットで消毒液をつけた綿をはさみ、ガーゼで押さえながら傷口につけた。


新しいガーゼを紙テープで固定すると、加野は感心したように息をはいた。



「すっごい手際いい!何で?」


「……何となく」


「あたし絶対ムリだぁ〜……すごいなぁ!」



小さい頃から傷の手当は見よう見真似で覚えてきた。だけど使うあてもなく今までしたことなかったが、加野には反射的にやってしまった。



「………屋上、行こう」



あんまり加野が褒めるから、無性に照れてしまって、わざと乱暴に加野の手をひっぱった。




屋上に着くと、花火は終盤なのか、連発で上げられた花火が夜の空に美しく咲き乱れていた。



「うっわぁ〜…キレー…………」



夜風も心地よく、俺は冷たいコンクリートの床に座って、りんごあめを口に入れた。



俺たちはしばらく無言で見とれていた。



加野は空に咲く花火に。



俺は花火を見る加野に。




「ねぇ西崎くん」



ふいに話し掛けられ、ずっと加野を見つめていた俺は慌てて目線をはずした。



「なに?」


「西崎くんが追試になってくれて、ラッキーだったかもね」


「え?」


「だってここ、花火もよく見えるし、風も気持ちいいし………」



無邪気に笑う加野の顔を、花火の光が艶やかに照らす。




俺は黙って加野の横に立ち、フェンスにもたれかかった。



「………俺、好きなんだ」


「花火が?たしかに綺麗だよね〜」


「ちがくて、加野が」



沈黙に耐え切れないように、花火が何発も打ち上げられる。



加野は目を見開いて俺を見つめている。


俺はそらすこともなく、加野の瞳に映る自分をずっと見ていた。



「俺、加野が好きだ」



もう一度言う。



何回でも言ってやる。



「西ざ……」



口を開きかけた加野の唇を、自らのそれで覆う。



優しい、それでいて力強いキスをした。






唇を離すと、加野は微笑んで、欲しかった言葉を言った。



「………あたしも、だよ」


「……えっ…マジで?」



こっくり頷き、照れたように笑って、ゆっくり静かに目を閉じた。



もう一度キスを落とすと、花火が二人を明るく照らし出した。



「…………甘い」



俺らの初キスは、夜風に香る花火の匂いと、俺の舐めていたりんごあめの味だった。

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