紅生姜の梅化粧
掲載日:2026/06/11
雑用でミスをしてしまい、誰も何も言ってこなかったけど、
雑用すらまともに出来ないと罵られているような気がした。
しかし、お腹は減る。
何もかもまともに出来ないのに、腹が減るのが腹が立つし、おこがましいような。
もう、今日は何もいらないか。
そう思っていたのに、ふと値引きされた牛丼と目があった。
牛丼の片隅で、
梅に染められたその赤は、
茶色を掻き分けるように見えた。
茶色ばかりの総菜売り場で、紅生姜だけが口紅を引いていた。
私はいつの間にかその牛丼を買っていた。
夕暮れより少しだけ派手だった。
それが紅生姜の紅だった。
何故かとんでもない贅沢をしている気がして、心臓が脈打った。
家に向かう。
足取りがさっきより軽い。
家に向かう道すがら、街路樹の桜が咲いているのに、そちらには目が向かない。
本物の花より、花らしい。
三百円の牛丼を祝宴に変え、
半額弁当に最後の晴れ着を残す。
紅生姜の赤だけは、値引きされていなかった。
茶色い世界への反抗。
あるいは、花になれなかった野菜の見栄。
なにも解決してないのに、少し楽になった。
少ししょっぱくて、目が覚めた。
紅生姜が咲いた。




