幾千の時を越えて
「…雨だな…」
その言葉は微かな声で、少年はずっと手を握っているだけだった…まるで男性を逃がさないように強く、握る。
男性は布団に寝かされており、痩せ細っていた容姿から見ていれば、もう長くはない。その隣で男性の手を握っている表情を変えない少年。だが、その無表情の裏の悲しい感情が手から男性に伝わっていく。
男性にとってそれが辛い。自分の事がわかっているから、「死にたくない」とおもってしまう。
そのうち、男性は思う事を口に出していた。
「一生一緒にいたい…」
男性の言葉のせいで少年は、何も言わないまま頷いているだけだった。そのうち、男性の手の力が弱くなっていった。少年はそれに気づき、もっと強く握る。
「…痛いぞ……」
少年はその言葉を聞くと少しだけ手を緩めた。笑顔を見せる男性。
「すまない…やはり、無理であった……」
少年は唇を噛み締めながら、涙を堪えている。緩く握っていた男性の手が急に、強く握られて、少年もその答えに返すように握り返す。
「ごめんな……」
その瞬間少年の目からは一筋の涙が流れた。いきなり毀れたので、少年も何度も着物の袖で拭いた。だが、止まらなかった。
「泣くな……―お前はいつでも……―俺の傍……―…――」
男性が握っていた手が、解けていき地面に落ちる。部屋の中には落ちた音が反響して少年の耳に入ってくる。少年の心にそれが、どんなに残酷で辛いことかもわからないで…。
少年は思った「また、この人と一緒にいたい」と………。
その願いは幾度と繰り返される。少年も、そして男性も。
二人は繋がりあっているからまた会える。それは変えられない。心臓に刻んだ思いが少年と男性を引きつける。
そして、また1つになる。
永遠と続く愛―――。