テダーム人 ンドマの場合
勢いで書いたので少しおかしなとこがあっても笑って許してほしです
「この世界も違うか……」
何もない宇宙空間にて、私は2157回目の異世界転移が失敗したことを感覚で悟った。
数え切れないほどの世界を巡り、何千、何万――もはやどれほどの時を過ごしたのか分からない。
仮に元の世界へ帰れたとしても、そこに知っているものは残っていないだろう。
文明は滅び、星は荒れ果て、かつての故郷は名もなき荒野の惑星になっているかもしれない。
そんな思考が胸をよぎり、心に薄い影を落とす。
だが、気分を切り替え、この世界を探ることにした。
物理法則は自分に適合している。
しかし、魔術の法則はまるで違い、その差異に少し苦戦しながらも世界を探ると、いくつもの不思議な星を見つけることができた。
平面で構成された星。
常識外れの質量を持つ岩石惑星。
ガス惑星でありながら生命が繁栄している星。
そして、他の星を捕食しながら成長する――生きている星。
魔術の法則によって、この世界が自分の知る宇宙とは根本から異なることを思い知らされる。
私は、その中でも少しでも楽しめそうな星を選び、そこへ転移した。
その星では、誰かの力によって、存在するすべての生命に「ステータス」と呼ばれる概念が付与されていた。
力、耐久、魔力、スキル――魂の力を基準として数値化された能力。
それは神のものではない。
何者かの手によって作られた力だった。
私は強く興味を惹かれ、この星を旅することにした。
旅の中で、この星が元来から異質な存在であり、さらに後から「ステータス」という概念が付け加えられていることを知る。
そして、それを作った「誰か」は世界を旅する放浪者ではなく、この星の住人であることも分かった。
「ステータス」を調べるうちに、その存在が今も生きていること、
そして稼働年数から考えて、少なくとも私の倍以上の時を生きている存在であることを知る。
私はその存在の居場所を突き止めるため、さらに「ステータス」を解析し、
記された座標へと転移した。
そこは、壁や天井に光の線が走る空間だった。
そのすべての線は、中心にいる存在から伸びている。
五本の足を持ち、上半身は人のようでありながら、全身は鱗に覆われ、顔は上から下にかけて透明。
その存在は、ゆっくりと口を開いた。
「放浪者さん……あなたは、どうしてここを訪れたのですか」
その声は、どこか寂れていた。
私は理由と興味を伝えた。
すると、存在は疲れたように尋ねてくる。
「あなたは、この星をどう思いますか」
「とても不思議な星だ」
私は乾いた笑みを浮かべて答えた。
「中の生き物を喰らい、それに応じて成長する傍迷惑な星。
その成長を阻害し、生き物を繁栄させる“ステータス”というシステム。
そして、同種が存在しないにもかかわらず、それを維持し続ける君の存在が」
存在は、かすかに笑った。
「私は最初、家族のためにこのシステムを作りました。
その後は……もう成り行きです」
「とてもいい星だと思うぞ」
「ありがとうございます」
沈黙が降りる。
光の線が脈打つたび、空間そのものが呼吸しているように感じられた。
「ですが……」
存在は続けた。
「私はもう、この星の“変化”を正しく見ているのか分からないのです」
私は一歩、中心へ近づく。
光は熱を持たず、指先をすり抜けた。
「ステータスは完璧だ。数値化され、均衡を保ち、星の成長を抑え、生き物を守っている。
だが――完璧すぎるものは、停滞を生む」
五本の足のうち一本が、わずかに震えた。
「やはり、あなたにもそう見えますか」
「この星は元来、喰らい、変わり、歪みながら進む存在だった。
君はそれを“正そう”とした。家族が、星に呑まれないように」
光が一瞬、強く輝く。
それは記録だった。
都市が崩れ、生き物が星に溶け、名もなき存在が必死に数式を書き換える過去。
「守った結果、私は星から時間を奪ってしまった」
「だが、まだ奪い切ってはいない」
「ステータスは制限であり、選択肢でもある。
作ったのなら、変えることもできる」
「放浪者さん……壊せと言うのですか」
「いいや」
「委ねろ。星に、生き物に、そして君自身に」
長い沈黙の後、光の線が一本、途切れた。
数値の海に、初めて揺らぎが生まれる。
「……怖いですね」
だが、その声はどこか軽かった。
「私が消えれば、この星は再び喰らい始めるでしょう」
「それでも旅は続く」
存在は小さく笑った。
「では、最後の仕事を手伝ってもらえますか」
光の中心が開き、無数のステータス画面が浮かぶ。
そこには、今まで存在しなかった項目が表示されていた。
――管理者権限移譲。
「放浪者さん。
この星の未来を、あなたの旅の途中に置いていってください」
私は光の中へ踏み出す。
その瞬間、星がほんのわずかに成長した気がした。
それから1万年。
次の世界への繋がりができるまで、私はこの星を見続けた。
星は成長し、あらゆる種が生まれ、そして滅んでいった。
その姿を後にし、私はーー
2158回目の異世界転移魔術を起動した。




