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地球人 竹山透の場合

これから少しずつ書いていこうと思います。

「まだ、やりたいことが……」


魔王が死んだことを確認し、俺は大きく息をついた。

俺、竹山透は、18歳の秋に異世界へと召喚されてから10年を経て、世界を脅かす魔王を倒すことに成功した。


この10年間で、俺は信じられないほど強くなった。

苦しいことも多かったが、ようやく元の世界に帰ることができる。そう思うと、体力も魔力も尽きかけていた体に、不思議と力が湧いてくる。


「戻るか」


俺は魔王城を後にした。


その後、仲間たちと合流し、俺を召喚した王国へと帰還した。

王宮での盛大なパーティーが終わった後、国王と教皇から告げられた言葉は、あまりにも残酷だった。


「すまぬ。貴殿を元の世界に戻すことができなくなった」


その言葉に、俺は絶望した。「聞いていた話と違う」と訴えると、教皇は申し訳なさそうに口を開いた。


「我らが神は、暗き神と戦うため、しばらく助力できないとおっしゃいました。その後、神の加護が感じられなくなったのです。元の世界への帰還は、神の力があってこそ成り立つ事象。我々には、もはやあなたを帰す術がありません」


悲しみに暮れる俺に、王は「帰る手段を一緒に探そう」と言ってくれた。

その言葉に一瞬胸が温かくなったものの、異世界召喚の技術は神の力なしには成し得ないことを、俺はすでに知っていた。理性がそれを不可能だと否定する。


それでも時間は流れ、1ヶ月、2ヶ月、半年、1年と過ぎ去ったある日、王から一つの情報がもたらされた。


――はるか東にある「夜明けの迷宮」。

そこには、遠い昔から生き続けている存在がいて、帰還の手がかりを知っているかもしれないという。


その話を鵜呑みにすることはできなかったが、「一緒に行く」と言ってくれる者があまりにも多かったため、俺は覚悟を決め、支度を整えて王国を出た。


長い旅路の果てに辿り着いた夜明けの迷宮は、不思議と全体が明るかった。

ヒカリゴケも松明もなく、神の加護も魔力すら感じない。それでも迷宮は、まるで朝焼けのような光に満ちていた。


そんな不気味な迷宮を前に、仲間たちは「トオルのためなら」と笑ってついてきてくれた。

その言葉に胸が締めつけられる。こんな自分勝手な理由のために、これまでで一番危険そうな迷宮へ挑もうとしているのだ。


そして、俺たちは迷宮へと足を踏み入れた。


迷宮には罠も魔物も存在せず、ただの迷路が広がっていた。

それでも油断せず進んでいると、誰もいないはずの空間から声が響いた。


「你ΛΣあمЖΨΩδπ한語ß※Φ☆¿¡αβγΔζ☯︎€₹₪µφ」


言語理解の加護ですら解読できない未知の言語。

その存在に、誰もが戦慄する中、声の主は呑気に言い直した。


「最近誰も来ないから、翻訳の法をかけ忘れてたわ。それで、お前たちは何しに来たんだ?」


恐怖を押し殺しながら、俺は答えた。


「俺は……元の世界に帰る方法を探しに来ました」


すると、何もなかった空間から、身長120センチほどの小柄な人物が現れた。

その姿は小さいが、雰囲気は明らかに大人だった。


「ハーハッハハ! まさか、俺と同じで別世界に召喚されて帰れなくなったクチか。いいぜ、教えてやる。だから、これからは俺を師匠と呼べ」


これが、俺と師匠との出会いだった。


仲間たちには国へ帰ってもらい、俺は師匠のもとで学び始めた。


「すべての世界は繋がったり、切れたりを繰り返して存在している。その繋がりは不安定で、大体5年から10年の周期で切り替わる」


そんな話を聞きながら、俺は帰還の術を模索した。


およそ100年、師匠のもとで修行を続けた。

異世界転移法の習得は順調だったが、師匠は言った。


「俺みたいに帰るために旅をしてる奴は多い。しかも、物理法則が違う世界がほとんどだ。適応できなきゃ即死だぞ」


師匠は5000年で三つの世界を渡ったという。「それでもいい方だ」と笑ったその言葉に、俺は絶望しかけたが、故郷を思えば立ち止まるわけにはいかなかった。


さらに長い年月が流れ、ある日、師匠は言った。


「運がいい。俺はこれから異世界へ渡る。教えることはもうない。あとは、異世界転移の法に耐えられる力をつけろ」


そう言い残し、師匠は消えた。


俺は寂しさを感じながら、餞別として渡された腕輪を見つめた。

蛇が自らの尾を喰らう意匠――意味は分からないが、これからの自分を暗示しているように思えた。


それから、さらに長い時が流れた。

おそらく3000年ほど経っただろう。


ついに、自分に適合する物理法則の世界と繋がった。

それが故郷である保証はない。それでも俺は、終わりの見えない旅の気配を感じながら、その術を発動した。

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