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第八章 宰相夫人として
ヒデリコは宰相となり、クレスティアナは正妃として帝都に居を構える。
だが、二人はマスダーレン城にも戻り、領民と共に過ごす時間を大切にした。
「ヒデリコ様は本当に小さな身体で、大きな仕事をするのね」
ある夜、クレスティアナが笑いながら言う。
ヒデリコはその深い琥珀色の瞳を細めて微笑んだ。
「クレナがいれば、どんな重圧も軽くなる」
「年齢差十九歳……世間はまだ驚くわよ?」
「構わない。私はクレナの年齢も、過去も、魂も、すべて愛している」
二人は月明かりの下、唇を重ねる。
──それは運命の再会でも、転生の果てでもなく、心と心が選んだ愛だった。