2/11
第二章 辺境の城へ
三週間後。
クレスティアナは護衛に囲まれ、帝国の北西──マスダーレン領へと向かっていた。
馬車の窓の外は雪を頂く山々と、広大な森。
文明の光が届かない辺境。
「伯爵様はどんな方なんですか?」
護衛の一人にクレスティアナは静かに尋ねた。
「……見た目は若いけれど、中身は鬼です。領民の命を第一に考えるが、敵対する者には容赦なし。帝国の財政改革も彼の手によるものです。皇帝陛下の右腕とも言われています」
「……ちなみになんだけど……身長はどのくらいかしら?」
「身長は……申し訳ありませんが百六十前半ほど。ですが、その小ささに見合わぬ威圧感があります」
やっぱり。
童顔で小柄。
クレスティアナの心臓が高鳴った。
彼女は歳上の男性が好きだった。
落ち着き、知性、包容力。
年齢が上なれば上なほど、魅力的に感じる。
でも、枯れ専ではない。
老けているのは好かない。
だが若く見える年上──特に中身が大人で外見が少年のような男性──は彼女の理想像そのものだった。
「……会うのが楽しみです」
護衛が怪訝な顔をしたが、クレスティアナは微笑んだ。