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第7話:甘い支配と、譲れない領域

アルセイン王国の急成長は、

周辺国にとって、

無視できない存在となっていた。

かつては地図の隅にも載らない、

貧しい弱小国。

それが今や、

潤沢な食料と、

最先端の魔導技術を持つ、

軍事強国へと変貌している。


私のもとには、

周辺国の商人や貴族たちが、

日夜押し寄せるようになった。

彼らは皆、

アルセイン王国の魔導製品を欲し、

その製法を探ろうとした。

そして、何よりも、

レオニス王子の魔力を、

探ろうとしているのが見て取れた。


私は彼らの思惑を見抜いていた。

警戒を怠らず、

王国の秘密を守り抜く。

レオニス王子の魔力は、

この国の生命線。

そして、私と彼の、

最も重要な絆なのだから。


しかし、レオニス王子は、

そんな私の警戒心をよそに、

私への執着を深めていった。

魔力伝達の必要性が増すほどに、

彼の要求はエスカレートした。

それは、もはや「効率のため」

という言葉だけでは片付けられない、

甘く、そして支配的な行為だった。


ある日のこと。

新たな防御魔法陣の試験中だった。

城壁全体を覆うほどの、

大規模な結界魔法。

これには、最大量の魔力が必要となる。

レオニス王子は、

私の腕を強く引き寄せた。


「リディア、ここだ」

彼の声は、以前よりずっと低く、

そして魅惑的だった。

「心臓に近いほど、

僕の魔力は君へ深く、

完璧に伝わるんだ」

彼は私の胸元に、

躊躇なく手を置いた。


「っ……レオニス様…っ!」

私は思わず、息を呑んだ。

胸元から伝わる、彼の熱。

そして、彼の心臓の、

力強い鼓動。

私の心臓も、激しく脈打つ。

全身に、魔力の奔流が流れ込み、

熱と、微かな痺れが走った。


私の身体は、

羞恥で震えていた。

しかし、彼の蒼い瞳は、

私の反応を逃さない。

満足げに、そして甘く微笑む。

その表情は、

もう幼い王子のそれではない。

全てを掌握しようとする、

若き支配者の顔だった。


「大丈夫だよ、リディア」

彼の声が、私の耳元で囁かれる。

「君は僕の傍にいればいい。

僕が、君の全てを受け止めるから」

彼の魔力が、

私の体を完全に満たしていく。

それは、私の意志ごと、

彼に掌握されていくような、

甘美な感覚だった。


抵抗は、無意味だった。

彼の魔力がなければ、

私の魔法は、

ここまで大規模にはならない。

この国を救うためには、

彼の「外部バッテリー」が、

どうしても必要なのだ。

そして、私は、

その必要性を、

もう言い訳にできなくなっていた。


私自身の感情が、

彼の支配を、

受け入れ始めている。

密着するたびに、

高鳴る胸の鼓動。

彼の吐息が触れる首筋に、

粟立つ肌。

それは、魔法のためだけではない。

抗いがたい、

本能的な悦びだった。


レオニス王子は、

私の感情の変化に気づいている。

だからこそ、彼は、

より巧妙に、より深く、

私を誘い込もうとする。

ある日、彼は、

最も敏感な場所への接触を求めた。


「リディア…ここだ」

彼は私の頬に手を添え、

そのまま顔を近づけた。

彼の唇が、私の耳元に触れる。

熱い息遣いが、肌を撫でる。

「ここに口付けると、

僕の魔力が君の奥深くまで、

完璧に伝わるんだ」


「っっっっっっ!?」

私の全身が、粟立った。

声にならない悲鳴が漏れる。

頭が真っ白になり、

全身の力が抜けそうになる。

こんなにも、直接的な接触。

こんなにも、甘く、危険な誘導。


「大丈夫、リディア」

彼の声は、甘くとろけるようだった。

「君は僕の唯一だ。

僕の魔力は、君のために存在する」

彼が、私の首筋に、

そっと唇を落とした。

その瞬間、彼の魔力と、

彼の深い執着が、

私の中に流れ込み、

全身を支配した。


私は、彼の魔力で、

騎士団全体を強化した。

アルセイン王国の軍事力は、

もはや周辺国を圧倒するほどになった。

かつては笑いものだった国が、

今や、誰もが恐れる存在へと変貌した。


レオニス王子は、

私が魔法を発動するたび、

私の腰を強く抱きしめる。

その眼差しは、

私を完全に所有しようとする、

強い欲望に満ちていた。

「リディア…」

彼の声が、低く響く。

「君がいれば、僕の力は無限だ」


私は、彼の支配を受け入れた。

彼が私を所有しようとすればするほど、

私の心は、彼に深く囚われていく。

それは、決して譲れない、

私だけの領域。

彼だけが踏み込める、

甘美な聖域だった。


夜、一人になった時。

私は窓の外を眺めた。

かつて、私を追放した元の王国は、

今、アルセイン王国の隆盛を、

警戒しているに違いない。

彼らは、知らないだろう。

この奇跡が、

幼い王子の魔力と、

私への甘い支配によって、

築き上げられたことを。


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