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奪還開始

「そうか貴様、やっと思い出したぜ」


 倒した4人を簡易ベッドに縛りつけながらクロードは最初に倒した相手の顔をジロリと睨んだ。


「キース……だったか。お前もしかして昨日、交替要員でビーストにダイブしてなかったか? エドガーってヤツが『キース』ってヤツがこの船に来ていると言っていたが」


「……ああ、まぁな」

 悔しさを誤魔化すかのように、微かに自虐的な笑みを浮かべている。


「念のいった話だぜ。船に突入する前に、下調べをしていたってことか」


 突然に知らない船内へ突入しても勝手が分からないではパフォーマンスが上がらない。そのため事前に『応援』として送り込まれていたとしたら。


「お前ら、軍からの応援で来たと言ってたな? つまり、月世界自由同盟ってなぁ軍部とズブズブ……いや、下手したら『そのもの』ってことなのか?」


「……そっちの男は、もう死んだのか?」

 クロードの問いには答えず、キースは波動銃の直撃を受けて白目を剥いている男に視線をやった。


「知らんよ。オレは医者じゃない。……何しろ1対4だ。こっちも必死なんでね。『正当防衛』ってこった」


 正確に言うならばクロードは軍の人間ではないから、交戦権を持ってない。もしもテラがクロードの戦闘を把握していたら『過剰防衛』をとった可能性もあるだろうが。


「そうか。仕方ないな。覚悟はしてきたことだし」


「オレの質問に答えろ。お前たちそのものが月世界自由同盟なのか?」

 だが、2度目の質問にもキースはゆっくりと首を横に振った。


「それはラウル班長に聞いてくれ。私が説明することじゃあない」


「……そうか」


 この部屋は『人権を失った人間』を入れる部屋だから、鍵は外から掛けられる。中からは鋼鉄のドアを破壊しない限り出られない仕組み。

 クロードはエドガーたちを中に置き去りにしたまま、ドアの外に出る。そして、振り返りざまに一瞥をくれた。


「どうせ月まであと1日だ。飯に余分は無ぇから、そこで絶食に耐えてるんだな」

「構わんよ。どうせ……」


 キースがまだ何か言いたそうだったが、クロードはこれを無視してガチャン! という重い金属音音とともに施錠してその場所を後にした。

 再びハンドブースターを吹かせ、今度はブリッジへと向かう。


「潜宙艦からの『追加要員』がいないことを期待するしかないな。……ブリッジも気になるが、まずはエンジンルームだ」


 『キース』が来ているとすれば、当然『いる』はずなのだ。リアクターコントロールルームで出会った『エドガー』という男が。


「船を抑えようとしたら、どうしてもリアクターは鍵になるからな……ちゃんと下調べがしてあったということだろうな」


 途中からハンドブースターを止め、コントロールルームへ慎重に近寄る。


「いたな……あいつが本物の『エドガー』か」

 壁に寄りかかって不貞腐れているパブロの前で波動銃を構えている男がいる。


「よぉ、また会ったな。いや、こういう場合は『はじめまして』かな?」


「何?! 誰だ?」

 クロードの声にエドガーが振り返った瞬間、クロードが敵から奪った波動銃の引き金を引く。ドン! という低音がコントロールルームに響いた。


「ぐふぉあ……」

 至近距離での直撃を受け、エドガーが悶絶した。


「心配すんな。ちゃんと威力をセーブして撃ったから死にはしねーよ。……もっとも、オレは医者じゃないから保証はしないがね」

 身動きができなくなったエドガーを、素早くロープで縛り上げる。


「やれやれ、やっと来おったか。待ちくたびれたぞ」

 パブロがジロリとクロードを睨みつける。


「済まねーな。何しろ挨拶しなきゃならんヤツが多くてさ」

 

「まぁいい。こいつ、ワシが『点検に行く』というのに『じっとしてろ』とか訳の分からんことを言うんだ。このド素人めが。機械は生き物なんだ、メンテの目を離したら何が起こるか分かったもんじゃあない……」


 そう言い残し、パブロは機関室の奥へと姿を消した。


 そのとき。


《……エドガー。聞こえているか、エドガー。こちらラウルだ》

 突然、コントロールロームのスピーカーから聞き覚えのない声が聞こえてきた。


「おっと……まさかの有線通信とはね。ということは、もうブリッジは抑えられたということか」

 ブリッジからは船内各主要部署と有線で通信ができるシステムがある。


「はい、こちらエドガー……と言いたいところだが、残念なことにエドガー君は腹が痛くて喋れないらしい。オレが代返してやるよ」

 クロードが通話のスイッチを押す。


《その声……そうか、貴様はクロードだな》


「ああそうだ。お前が『ラウル』とやらか? 一度、直接に会ってみたいと思っていたんだよ。何しろ娘がえらく世話になったからな」


《そうだな。俺も貴様に会いたくてブリッジまで来たんだが、留守だと聞いてがっかりしたよ。何しろ貴様にはディスパイネ号作戦の邪魔をされた礼をしなくちゃならんのでね》

 低く喉を震わせる嘲笑い声。


「いいねぇ。気が合うじゃねぇか。待ち合わせ場所はラウンジでいいかい? ブリッジの真下だから、お前も近くていいだろう」


《……いいだろう、そこで待っている》

 そう言い残して、通話は切れた。


「さて、行くか」

 4人しかいない船員だが、パブロの援軍は期待できない。ローラとメアリーの2人はブリッジで人質だろう。こっちは一人、敵は残り2人……。


「何、問題ない。正義の味方ってヤツは常に不利なモンさ」


 誰に聞かせることもなく、自虐的な笑みを浮かべてそっと呟く。

 万が一の待ち伏せを警戒して周囲に注意を払いながら、黙々とラウンジを目指す。閉じられた区画の横からメンテハッチを開けて進むので、どうしても時間がかかるが。


「落ち着け……落ち着けよ。安易な挑発に乗るんじゃあないぞ。分かってるよな? オレ。エヴァの仇がとれればそれでいいって訳じゃあねーんだ」

 高鳴る鼓動を必死に抑え、ラウンジへと向かう。


 ブリッジへと上がる最後のメンテハッチに手を掛け、ギギ……という軋み音とともにゆっくり開ける。

 慎重に辺りを見渡すが、何者かが隠れている気配はない。


「メアリーたちがいるブリッジを抑えるのに1人は割いているだろうから……ラウルとかいうヤツはちゃんとラウンジにいるってことか」

 

 通路に上がり、ラウンジのドアを開けるボタンに手をかざす。プシュー……という音とともにドアが壁の内側へと引き込まれていく。クロードは、通路の壁を背にして室内からは見えないポジションにいる。


「……」

 明かりの着いた部屋の中からは、何の反応もない。だが、部屋に入ってくる瞬間こそが敵にとって最も狙いやすい瞬間なのは間違いない。


 ……これならどうだ?

 クロードは左手に握っていたハンドブースターを部屋の中目掛け、思いっきり投げ込んだ。


 ドン!

 通路とラウンジを隔てる壁が衝撃音とともにビリリ……と震えた。それと同時に投げ込んだハンドブースターが弾かれるようにして通路へ飛び出してくる。


 その瞬間。

 体勢を低くしたクロードが一気にラウンジへと飛び込んでいく。そして素早く固定されたテーブルに身を隠した。

 弾かれたブースターは激しい激突音とともに反対側の壁にぶつかり、クルクルと宙を舞っていった。


「よぉ、待たせたな」

 テーブルの向こう、反対側の壁を背にする形で目付きの鋭い髭面の男がいる。がっちりとした体格は、軍人として長年の訓練を積んできたことを物語る。


「遅かったな。待ちくたびれたよ」

 しわがれた声はさっきリアクターコントロールルームで聞いたのと同じだった。つまり、この男が。


「ラウルか? お前が」

 手元の波動銃を握り直す。


「そうだ。やっと逢えたな。そしてこの出会いが最後だ。どう転んでも貴様に明日は来ない」


「はっ! 大した自信じゃあないか」


 双方ともに、そう簡単には今のポジションから動くことはあるまい。波動銃にも反動があるから、その力を殺すために何か固定されたものに足や背中を預けて踏ん張る必要があるからだ。

 如何にしてその瞬間に素早くその足場を確保するかが、波動銃を使うコツと言える。


「お前はエヴァの仇だ。すぐにでもブチ殺してやりたいが、ひとつ聞こう」

 どうしても聞きたいことが。


「月世界自由同盟とは何なんだ? 貴様ら軍部は何故、月世界自由同盟と協調しているんだ?」

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